第13話「最終フェーズに入った童貞モンスターが童貞を守り抜くために選び抜いた策とは」

 童貞を貫くと30歳で魔法使いになる、これは人間の場合である。

人類は何の努力も必要もなく魔法を行使するために男児を30歳まで絶対童貞主義を貫かせた、この結果として晩婚化が進んだのは苦しい事実であるが、その代わり魔法使える社会が来たので人口を増やし過ぎずに生活面で飛躍を遂げたし、大体のモンスターを皆殺しに出来る魔法人類。

 「もう童貞でも怖くない、おれは感じるんだ、頭の中でリアルを」

 そうである妄想で童貞卒業以上のスゴイパワーを得たなら完璧な精神面であるといえるだろう、妄想の中では童貞卒業以上のスゴイものが見つかってる、ので性的にわざわざぶんぶんする必要はないのだ。

 「で、お前はなんだ?」

 「おれは童貞モンスター、最終フェーズに突入した」

 「ははは、どうせお前はモンスターだ童貞を貫いたところで何物にもなれまい、いまや大魔法使いとしてランクは超絶最強級なのだよ」

 「お前は卒業したようだな」

 「何を言ってるのかな? いまだに童貞さ! ほら究極魔法で派手に死にたまえ! ホーリーバスター! えっ!?」

 「知っているか?」

 童貞を貫くということは一見して簡単に思える、要するに女の秘所にはいらずんば、男だけでずっと過ごしてれば大体良いんじゃないかという具合になる。

 でも現実はそんなに甘くは無いんだ、童貞を貫くということはそもそも繁殖すること自体を捨て去るということ、繁殖が選択肢に入らないということ、社会とのかかわりを持たずに個として完結するということ、なんだ。

 「分かったか?」

 「り、理解できない、童貞は三十才まで貫けば誰しも完全に魔法使いになるんだ、たぶんそういうことなんだ、そう自然の摂理が営みが決定していて絶対なんだ、それが間違ってることなんて土台無いんだ、だからおれは」

 「おまえがそうして食っちゃべってる間にもお前ら人類の仲間が繁殖している、つまり、お前がいくら努力したところで童貞を貫いてることにはならないし、自然の摂理よりも人間は情念を優先する、つまりお前が信じてるものは矛盾を孕んでいてお前は一生働きバチだ」

 「そうだ、おれが働きバチだから全ての生命は魔法力で繁栄する、つまりおれは?」

 「そうだ、お前は周りのものを生かすことによって周りの存在を童貞卒業させてきたんだ、つまりお前は魔法使いとして自分自身の立場を一番と考えずに、周りのことばかりを考えて周りのものから魔法を奪うことによって魔法使いの機会を奪うことで一時的に魔法力を得ていただけということだ」

 「どういうことだ? もうおれには分からない」

 「分かるはずもないなぜならお前らは魔法を濫用し続け現実と妄想の区別もつかない、何故おれがここにいるか理由は簡単だ、お前は既に」

 「そんなはずない! おれはまだ女の子とエッチなことをしたことがないんだぞ! おれが魔法使いで無くなることはあり得ないんだ! 俺は俺は!」

 「お前は既に妄想の産物なんだ、”最終フェーズ”」

童貞にとっての最終フェーズは妄想の世界で童貞を究極域にこじらせることである。

 だがそれは自己否定の連続ともいえる、そのフェーズに入ると全ての人は無限に、

  究極に繰り返しの中に埋没していく、延々と続けてきた魔法の延命措置、

   それはなんであったか? 魔力とは精子である。

    つまり魔力が無くなるまで魔法使いをやり続けるということは、

     無限にあるとされる精子を射精しつづけるのと同じくの事であり、

      そうそもそも魔法を使うということ自体が繁殖行為だったのだ。

       それを越えた先に気付くだろう。

 「魔法は繁殖や繁栄を根源とすれば破綻する、何故ならこの世界は有限であり無限ではない体、ゆえに繁殖や繁栄を謳歌すること自体が童貞卒業に等しく、つまわち童貞を貫き真なる心に目覚めるには、何を見ても何も感じず、何をすることも出来ず、生殖も繁栄も世の時流も何もかもから完全に卒業して無になること、それなのだ」


 無の空間がすべてを包み込んだ。

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