ヴァルプルギスの夜のお酒
四月三十日。
ヴァルプルギスの夜のお祭りの日です。
ひと昔前、たくさんの魔女たちが火を焚き、夜通し踊ったり飲んだりして、春の訪れを祝っていたといわれています。
今、この日のお祭りは形を変え、場所を変え、色々な地方に伝わっているのだそうです。けれど、本物の魔女たちが集まってお祝いをした夜は、幻想に追いやられた昔のお話。
魔女は広い世界に散り散りになり、表立って集まり、ヴァルプルギスの夜を迎えることはなくなってしまいました。
今、魔女はどれくらい生き残っているのでしょう。
ヴィオラはこの時季、夜の営業時間にちょっとした特別メニューを加えます。
薔薇の花びらを漬けたワインやはちみつ酒、イチゴ酒など、この日に甘めのお酒をいくつか出すのです。
ほかのお店では魔女が作るお酒は飲めません。だからこの時季は、夜遅い時間までお客さんでいっぱいになります。
この日は男の人も女の人も、お酒をついつい飲みすぎて、赤い顔で大騒ぎです。
そして昔、魔女がやっていたように飲んだり踊ったりして春の訪れを祝います。
――ずっと昔、人々と魔女が一緒に踊って祝っていたら、魔女はどれくらい生き残っていたでしょう?
――あの頃、一緒に春を祝った魔女の友だちが今も生きていたら?
もしそうだったら、魔女の集会は今夜も開かれていたのではないでしょうか。
ヴィオラは少しだけそんなことを考えて、そして暗い考えを頭から追い出しました。お客さんの酒のおかわりの注文に、ヴィオラは新しいお酒の瓶をあけていきました。
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