第29話 学校からの脱出

 Qは立ち上がり、床に転がっていたスカートをはきなおした。

 スカートもピチピチでお尻の形もまるわかりだ。

「ちょっときついな。まあ、変な体になっちゃったけどゾンビになるよりはましかな」

 どこかふっきれたような爽やかな顔でQは言った。


「あらためて、よろしくQ。でも、どうやらのんびりしていられないようだ」

 僕はQの愛嬌のある顔を見ながら言った。

 Qの眼差しも真剣なものにかわっていた。

 どうやらQも種族がかわったことにより、感覚がとぎすまされたようだ。


 僕の視界の右上に浮かぶマップには無数の赤い点が光っていた。

 それはアンデッド反応だ。

 ふりかえると廊下の奥の方から数えきれないほどのゾンビが蠢いていた。

 やつらはバリケードを越えてやってきたようだ。

「やだあ、気持ち悪い」

 そのおぞましい光景を見て、Qは言った。

 僕に抱きつき、その特大巨乳を腕におしつける。

 僕はQと共に教室にもどった。

 迎え撃たねばならない。


 教室のドアを押し倒し、数えきれないほどのゾンビが教室内に入ってきた。

 皆、両手を振り上げ、歯並びの悪い歯をむき出しにして僕たちを襲おうとしている。

 彼らにあるのは単純な食欲だろう。

 きっと僕たちのことはおいしそうな肉の塊に見えているのだろう。

 Qなんか肉つきがよくて柔らかそうだから、きっと旨そうに見えるのだろう。

「は、入ってきたわよ」

 慌ててQは僕の腕にさらに抱きつく。

 西瓜のような特大おっぱいが僕の腕に押し当てられ、ぐにゅっと潰れた。

 いやあ、別格の柔らかさだ。

 その肉の感触はサキュバスになってさらに向上しているようだ。


「落ち着いて」

 僕はそう言うと、両手と木刀を三日月の能力強化した。

 木刀はぎらりと光り、斬鉄剣と変化する。

 

 僕たちを掴もうとするゾンビ数体の腕めがけて木刀を一閃させた。

 麦穂を刈り取るよりも簡単に腕が千切れ

飛んだ。

 腕を失くしても彼らは前進を止めない。

 痛みを感じないのでこのように動けるだろう。

 彼らが動く死体だという証拠だろう。

 怯むということはない。

 彼らは歯をむき出しにして、噛みつこうとする。

 だが、腕を失くしているのでバランスをかなり崩している。

 彼らはふらふらとしていた。

 僕は一体一体のゾンビの頭めがけてつき技を繰り出した。

 風船を割るような感覚でゾンビの頭を粉砕していく。

 彼らは容易に倒れ、動かなくなっていた。


 僕の攻撃から逃れた一体がQに掴みかかろうとしていた。

 しまった、やはり数が多すぎる。


「きゃあ、来ないで!!」

 そう叫び、Qは大きく手を振り上げ、ゾンビの頭に平手打ちを食らわせた。

 ボトルのキャップが飛ぶようにその頭は吹き飛んだ。


 Qは自分の手のひらを見た。


「え、何、この力。私強くなっている」

 Qは驚いている。


 どうやらサキュバスに種族が変化することによって基礎体力がかなり強化されているようだ。

 文字通り、人間離れしていっていると言っていいだろう。

 人のことはいえないけどね。


 僕たちは協力して、目の前に迫り来るゾンビたちをある程度倒すことに成功した。

 ゾンビたちの死体がちょっとした山になっている。

 その死体の山に左手をかざす。

 月読姫は大きく息を吸い、ゾンビたちの頭にあるクリスタルを吸い込んだ。

 月読姫はバリバリと美味しそうにクリスタルを咀嚼した。


「また次のが来るな」

 僕の視界にあるマップにはまた新しい赤い点滅の群れが出現していた。

 もうすぐぞこまで迫っている。

「まったくきりがないな」

 僕は言った。


「あのさ、もしかしたらここから脱出できるかもしれないの」

 Qは言った。

 そう言うと地面に両手と両ひざをつき、四つん這いになった。

「うんっうんっうんっ」

 Qは力みだした。

 なんかエッチな体勢だな。


 あえぎ声にも似た声をQはだし続ける。

 するとどうだろうか、背中がめりめりと裂け、黒いコウモリの羽が生えた。

 西洋の絵画にある悪魔の背中にあるものだ。

 昔、父さんと一緒に美術館に行ったときに見たことがある。


 Qはその濡れたコウモリの羽を羽ばたかせた。


 なるほど、これで飛んで逃げようというのか。

 そう言えば、Qの特技スキルに飛翔ってのがあったな。


「よし、じゃあ行こう」

 僕は言った。持ってきたリュックとボストンバックを担ぎ、Qの体に抱きついた。

 でかすぎるおっぱいがいいクッションだ。


「い、行くわよ」

 Qはそう言うと窓際に足をかけ、外に飛び出した。

 少し落下したが、コウモリの羽を何度か羽ばたかせるとうまく軌道にのることができた。


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