第18話 不安に思うこと

 どの街に行っても分かることがある。ヴァルタルが、とてもモテる男であるということが。


 メーウブ帝国に来てからも相変わらず、彼は女性たちの注目を集めていた。


「ねぇねぇ、あの男の人カッコよくない?」

「ホントだ! リムサフス王国の人かな? それともグレムーン王国の人?」

「分からない。珍しい褐色肌。でも、ハンサムなのは分かるわ」

「ちょっと、声かけてみる?」

「でも、偉い人みたい。貴族かも」

「じゃあ、止めといたほうがよさそうね」

「なんだぁ、残念……」


 そんな、街の女性たちの楽しそうな会話が聞こえてくる。やはり、私以外の人から見てもヴァルタルをカッコいい男性だと思われているのかよく分かる。だけど彼は、そんな女性たちの反応を気に留めない。興味が無いようだった。


「ルエラ。先ほど俺が言っていたのは、あの店のことだよ」

「え? あ、はい」

「さて。今回は、どのメーウブ料理を堪能しようかな」


 周囲の反応を伺っていた私は、彼に呼びかけられて慌てて答える。気のない返事をしてしまった。それも気にせずに、上機嫌な様子で店の中に入っていくヴァルタル。私も、彼の後に続いて店の中に入った。


 ヴァルタルは女性に興味がないのだろうか。それとも、既に特別な相手がいるから他の女性は気にしていないのか。


 初めて出会った時に、シーヴが恋人か妻なのかと思った。だけど、しばらく一緒に過ごしているうちに分かってきた。2人は、上司と部下というような関係だと思う。恋愛関係では無いだろう。


 ならば、ヴァルタルの相手は何処にいるのだろうか。彼から、愛する人についての話は聞いたことがなかった。世界中を旅している彼を、どこかの土地で待っているのかも知れない。ヴァルタルは、旅が終わればその女性のもとへ帰っていくのかな。


 だとしたら、秘宝を探す旅が終わってしまえば今の私たちの関係も終わりだということなのかな……。

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