幸せな結婚

ハイブリッジ万生

第1話



「そういえば、式はどうしよう?」


わたしは妻になる女性に尋ねた。


「そうね、あそこがいいんじゃない?ナイアガラの滝とか?」


「ナイアガラ?滝の上ってこと?」


「そうそう、大きないかだを作ってさ、みんなでおめでとう!ってなった時にちょうど、滝から落ちるやつあるじゃん?」


「あぁーあれか……」



その演出の結婚式は何度か見たことがあるんだが、いつも冷や汗がでてしまう。


「ごめん、おれ、高所恐怖症なんだよね」


「えーそうなの?知らなかった……3年も付き合ってるのに……」


「ごめんごめん、聞かれなかったから」


目の前で手を合わせて御免のポーズをする。


「じゃあ、どうしようか?ベタだけど、月から出発して大気圏外から燃えながら落ちるっていうのにする?」


「落ちる系すきだね」


「あ、ごめん、高所恐怖症なんだっけ?」


「いや、それ位の高度なら逆に怖くないよ」


もはや、高さという概念を超えている風景は恐怖を感じないという不思議な逆転現象がある。


「そう?なら決まりね」


彼女はウインクしてくれた。


それにしても、かわいいな、理想的な仕草と理想的な容姿、全てが理想的な結婚だとおもった。


「じゃあ、仕事あるからまたね」


「うん、またね」


わたしは付けていたゴーグルを外した。


真っ暗な部屋にパソコンと飲みかけのビールが置いてあった。




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