第31話 第五の事件! 東海道線の救世主!
◾隆臣
『この電車はぁ〜時速140キロで横浜駅に向かっておりまぁ〜す。あと3分程で横浜駅の5番ホームを通過予定でぇ〜す!』
エミリーはアナウンスの真似をして楽しげに言っている。声はかわいいがやってることテロリストだぜ。
続いてクイーンも、
『現在ぃ〜横浜駅5番ホームではぁ〜車両トラブルのためぇ〜運転を見合わせておりますぅ〜。発車の目処は立っておりません〜』
と。
「このまま140キロで突っ込めば俺たちだけじゃなく多くの乗客が死んでしまう」
「エミリーとクイーンを見つけ出して、止めないと!」
「一般人も巻き込むなんて!」
「どうすりゃいいんだよ!」
クリス、ジョーカー、エース、尚子は切羽詰まった様子で言った。
しかしナディアは冷静に三つ編みのお下げ髪を手でくるくる弄びながら、
「非常停止ボタンを押すわ! みんなしっかりつかまって!」
俺たちと乗客に向かって叫んだ。
全員が揺れに備える体勢を取ったのを確認してからナディアは非常停止ボタンを押した。
しかし、
「何!? どうしてだ!」
何も起こらなかった。
ナディアは何度もボタンを押すがやはり反応しない。
「そんな! ボタンが効かないなんて!」「どうなってるんだよぉ!」「このままじゃ私達死んだじゃうよおお!」
クソッ! エミリーとクイーンとやつやりやがったな!
このままじゃ本当にマズイ! 異能力者である俺たちがなんとかしないと!
一片の焦りも感じさせずナディアは、
「これがダメなら次の方法を実行する。慌てたってなんにもならない! 先頭車両に行こう! きっとそこにエミリーとクイーンがいてこの電車を制御しているはず! だから非常停止ボタンも効かなかったんだ」
そのような作戦を立ててくれた。
俺たちはパニック状態の人々を掻き分け先頭車両に向かう。制限時間が刻一刻と迫り来る。
――横浜駅到着まで残り1分45秒
ようやく無人のはずの車掌室に到達し俺はドアを開けようとドアノブに手をかけた。
当然鍵はかかっていた。だがエースのガイスト能力により強化された身体能力で俺は鍵のかかったドアを蹴破り中に入る。
エミリーとクイーンの姿はなかった。
「いない!? ……ブ、ブレーキをかけろ!」
ナディアの指示でクリスはレバーを操作した。
「ッ! ブレーキが作動しない! そんなバカな!」
減速の気配はまるでない。するとエースは第九感を発動させ、
「きっとエミリーとクイーンは車内にはいないよ。推測だけどクイーンは横浜駅から送電線に電気を流してこの電車を制御しているんだよ。こっちの非常ブレーキの信号よりもクイーンが送ってる電気信号の方が強いからブレーキがかからないんだと思う」
そのように推理した。
――横浜駅到着まで残り1分
◾ハート
「こうなったら俺たちで止めるしかないな」
クリスが言うとダイヤは空気中の水分からつららを作り出しそれをフロントガラスに発射した。
バリンッと割れてフロントガラスに穴が空いた。そこからあたしは外に出て車両の上によじ登る。
「す、すごい風……!」
車両の屋根の上ではかなり強い風が吹いていて、体勢を低くしないと吹っ飛んでいっちゃいそう。
あたしはポシェットから火薬のケースを取り出し蓋を開けてケースをひっくり返した。
火薬は風で車両の後ろの方まで飛んでいき、あたしはタイミングよく火薬の温度を上昇させて着火。パンタグラフを爆破する。そしてすぐに車掌室に戻った。
◾ジョーカー
ハートが戻って来たのを確認しら続いてわたしは車両にかかる重力を大きくし車輪とレールとの間の摩擦力を増強。しかしそれだけでは足りない。
「っ!」
さらにわたしは電車全体と電車後方の地面との間にはたらく万有引力を強化し進行方向と真逆の力を加えて減速を試みるわ。
わたしは額に大粒の汗を浮かべながら、
「だ、だめ! 全力でやってるけど……全然!」
先ほどよりはかなりスピードは落ちたもののどうやら完全停止は不可能らしい。
「後ろの車両に急げッ!」
隆臣は叫んだ。
――横浜駅到着まで残り5秒
わたしたち一同は電車後方へ駆ける。
そして、
――ドゴォォォオオオオオンッ!
前方に停車していた電車に衝突し激しい衝撃を伴って暴走電車はようやく停止した。
先頭車両の前方半分ほどは跡形もなくなっていた。止めようと努力していなければ被害はもっと大きくなっていたわね。
ガイストであるわたし、エース、ハート、ダイヤは浮遊することで慣性の影響を受けなかったが隆臣、凛、尚子、クリス、ナディアを含め乗客はみな進行方向に投げだされたわ。
倒れる5人にガイストであるわたしたち4人は駆け寄った。
「隆臣……! 何やってるの?」
心配するのではなくエース蔑むような目で隆臣を見つめている。どうしたのかしら。
あーなるほど。理解したわ。
「何ってなんだよ」
「べーっだ!」
「は?」
エースはあっかんべーをする。加えて、
「た〜か〜お〜みぃ〜! ナディアさんから離れてくださいっ!」
「え?」
「お前、焼肉は好きか? そうかそうか、大好きか。じゃあお前が焼肉になれッ!」
凛と尚子も隆臣を責め立てるわ。
「ちょ、なんなんだよお前ら。今ははやく緋鞠を……」
しかしそのとき隆臣はようやく気づいたようだ。
「ん? なんだこのふにふに。ちっちゃいふにふに? はッ!」
「もう……いい加減離してくれないか?」
そう偶然にも隆臣の手がナディアの小さな胸を包みこむような状態になっていたのだ。ちなみにわたしの方が大きいもんっ!
「ご、ごめん! わざとじゃないんだ! わかってくれるよな?」
「杖、取ってもらえるか?」
「お、おう」
隆臣は申し訳なさそうにナディアに杖を渡す。
「どうもありがとう。そしてッ!」
ナディアは杖を掲げ、
――ポカッ!
隆臣の頭をポカポカ殴りつけた。
「いで! 何すんだよ」
「お仕置き! 私のおっぱい触ったお仕置きだ!」
ナディアは涙目で言い放った。
To be continued!⇒
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