第37話 最初の犠牲者(??)
新たに
この二人によって壊滅的なダメージを被ってしまった自分の“里”を襲い来た者達は討伐されました。
それはそれで良かったのでしたが……
私から遠く離れた処で、お二人してなにやらこそこそと話しておられたよう《「エルフ語」で会話をされていたよう》だが……今聞き捨てにならない単語が聞こえてきたようなあ?
「魔王様」?「魔王様の近衛」がどうかしたと言うのだ?? な、何だかわからないが……やけに“ザワザワ”としてきたぞ??
事の始まりとしては、シェラザードの「親衛隊」を作る為にと、ササラから手渡されたリストを
「お゛ぅ゛え゛え~~~」
「「は?!」」
なんんんじゃこのアラクネ……いきなしゲロ吐きおったぞ?!
実はガラドリエルにはたった一つ弱点がありました。 それが今、表面上に現れてしまっただけ……そう、このアラクネの女性、ガラドリエルは武勇には覚えがある優れた勇士なのではありましたが……
「お゛いお前ええ……他人の
「ああ゛ああ゛あ゛……どどどどどどうもずみ゛ま゛ぜ……お゛ぉ゛う゛え゛え゛え゛~~~」
「くぅおんの……一度ならず二度までもお! えぇえいそこへ直れえ!手打ちにしてくれよう~!」
「お、おいちょっと待て―――お待ち為されい内匠頭殿ぉ《待つのだシェラザード》~~!」
「ええい離せ―――お離し下され梶川殿ぉぉ《離せと言ってんだるぉが、アウラ》~~」
以上、『異説刃傷松の廊下』の件ではございました……が、シェラザードにしてみれば、折角アラクネの窮地を救ってやったと言うのに、その窮地が救われたか―――と言うように、自分の顔を見るなりゲロを
この不祥事によって気分が優れなくなってしまったのも無理らしからぬ話し、ですがその場にアウラがいてくれた事によってどうにか
「済まなかったな、ちょっと―――(……)見苦しい処を見せてしまって。」
「ガルル~ガルル~~!」
「ああいえ、こちらこそ……折角救って頂いたと言うの…に―――っ」(うっ!……ぷ)
「ああ~~ひょっとしてなのだが―――そなたはもしかすると『対人恐怖症』なのかな?」
「えっ?あっ、はい。 私はどうにも昔から他人と接するのが苦手でして、それに極度に緊張してしまうと、こう……胃が“キリキリ”と痛くなって、何か酸っぱいものが込み上げ《胃の内容物が逆流してしま》……てッ《い゛ッ》! お゛う゛ろ゛ろ゛ろ゛ろ゛~~」
ふ、不憫―――と言うか、何と言うか……可哀想に。
そう、このアラクネの唯一の弱点と言うのが、『対人恐怖症』にして『コミュ障』、しかも『人見知り』で『極度の緊張しぃ』でもあったみたいです。 とは言えササラが作成したリストの上位にも乗っていたように、その実力は折り紙付きのようで……
「あ゛~~~まあ判ったわよ、あんたの事情ってヤツは。 けどな、そんなあんたの事情なんて、私にゃ一切カンケーないからな?!」
「(ひっ、ひいぃぃ……)あ、あの、これから私をどうしようと??」
「どうもしやしねえよ! あ゛んだあ~?私が蜘蛛を取って喰うとでも思ったのかあ?!」
☆~ゴチン~☆
「痛ったあ~~……こんのぉ―――アウラ! 私を
[あ゛あ゛?ヤんのかゴるぁ……ヤるんやったらとことんまでヤったろやないか!](エルフ語)」
ええっと……ああの、この方新興国家の女王陛下様なのですよねえ? なんだか荒くれ冒険者……いや、どこぞかの任侠一家の様な“スゴみ”が感じら……あ゛っ?!ま、また胃液が込み上げッッ……!!
こうして、本日4度目の嘔吐により、体力の限界を迎えてしまったアラクネは、その場に
* * * * * * * * * * *
そして次に気が付いてみると……
あ……いい匂いがする―――そう言えば私はどうして倒れてしまったんだろう。
……ああ、そう言えば私はあのお二人の前で、胃の内のモノを総て吐いてしまって―――
………… あの二人の前でえ~~?
自分の鼻孔を
「も、も、もうしわけございませ~~~ん!」
「おう、ようやく起きたか。 ほれ―――」
「えっ??シェラザード女王陛下様……があ?手料理を―――」
「そうだよ。 それに都合4度もゲロ吐きゃ胃の中スッカラカーンなんだろ。 じゃ、腹を満たして気を落ち着かせたところで、私からの話しを聞いてもらおうじゃないか―――って、ね。」
「は、あ……それはありがとうございます……。」
「あ゛?なんか気に入らないような返事だなあ。 私が作ったメシが食えんてのか?」
「ああいえ、そう言ったつもりでは~~」
☆~―ペチン―~☆
「痛っ《あだっ》! アウラぁ~~また私を後頭部から叩くこたぁないでしょうが!」
「あのなあお前……お前はこのアラクネを脅しつけたいのか? 少なくとも私の眼にはそう見えてしまうぞ。」
「口で言えば済むことでしょうがあ~~」
「口で言っても判らんみたいだから
「ああ済みません……それは判っているのですが―――」
「(チ)煮え切らん態度するもんよのう~~つべこべ言わず食え!」
「お前は一体何をそんなに“カリカリ”しているんだ?」
「そりゃするでしょーがよ! あれだけ勇んでラプラス共の世界に殴り込みかけた―――ちゅうのに、私だけ『帰れ』言われた《ハブられた》んだよ? カリカリするな―――てのが無理だろ。」
「だからと言ってなあ……そう言った鬱積を、私だけならまだしも事情を知らないガラドリエルにも当たってしまうと言うのはどうかと思うぞ?」
「ああ~ああ~~そりゃ悪かった―――悪うございましたね!!」
高貴な身分のお二人が、自分の前で何気兼ねなく喧噪を繰り広げている。 それはまた何の飾り気もなく一個人同士がしている「仲良し同士の喧嘩」でもあった為、そこの処に緊張が
「すみません―――私なんかの為に……。 けど、食せない理由は、折角シェラザード様が私の為にと調理してくれた食事が、また嘔吐するなどして無駄になりはしないものかと思いまして……」
「(……)なんだ、あんた意外と可愛い事を言うじゃんよ。 そーるぇに良く視て見りゃ好い
「(バカ殿かい……)いやその前にやるべき事があるだろう。」
「ああ、言われてみりゃそうだったな。 まあ取り敢えず食え、そして私からの話しを聞け。」
自分が知っているエルフとは、また別の個性に雰囲気を醸し出す女王陛下の在り方に、困惑気味となるガラドリエルでしたが。 意外にも高貴な身分の方々が謙譲って《へりくだって》くれた事もあり、その後は変に緊張をするでもなく、着々と面接は進んで行きガラドリエルはシェラザードの親衛隊一号となったのでした。
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