20
宿
マリアはベッドの上で休む。
ポーラはマリアのいるベッドの端に腰を掛けている。
アーサーは床に
アーサー「マリア、具合はいかがですか」
マリア「少しは楽に」
ポーラ「無理しないでね」
アーサー「マリア……私は司祭の単なる言いなりに過ぎない存在でした。逆らうことなど考えもしなかった。司祭は私にとって絶対的な存在であったのです。司祭に捨てられてしまわないか、その事ばかり恐れていました。修道院にしか私の居場所はないのだと、司祭の導きが全てあり、ほかに道はないのだと、疑いもせず信じていました。司祭の悪事を黙認し続けたのも我が身のためにほかなりません。しかし、私は間違っていました。私はずっと罪を犯していたのです。どうかお許しください」
マリア「アーサー、顔を上げて。私もあなたと同じだった。孤児だった私たちには行く場所も帰る場所もない。修道院が全てになってしまう。なにもない私たちに施しを与えるあの男がいつしか神よりも絶対者になってしまった。あの男は私たちの弱みに付け込み地位と権力で支配しようとした。私も、アーサーあなたも、あの男の被害者。自分自身を責めすぎないで。だって、私たちはなにも悪くないのだから」
アーサー「私を許してくださるのですね」
マリア「ええ、あなたを許します。私も先ほど言いすぎてしまった。お許しください」
アーサー「もちろんです、マリア。私は決めたのです。司祭の悪事を暴き正義を下すと。だから、ここへ参ったのです。私には戦う覚悟があります。私ひとりだけではありません。道中、活動家のオルガと出会い力添えを約束してくださいました。彼女は性被害に苦しむ多くの者たちを救っておられるのです。そして、マリアあなたの声が被害者たちに希望を与えたのです。七年前の出来事が。みなマリアの存在を待ち
わびているのです。マリアの勇気に励まされたのです。司祭と対峙する苦痛ははかり知れません。ですが、どうか私たちと共に戦っていただけないでしょうか」
マリア「……」
ポーラ「そんな事、急に言われても。マリアの気持ちを少しは考えて」
アーサー「すいません……」
マリア「……少し考えさせて……」
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