RE:Play Baby ― その赤ちゃん、史上最強の魔王の生まれ変わり。 〜ちゅいまちぇん、世界の片隅で平穏に暮らちたいので冒険に連れ回ちゅのやめてもらっていいでちゅか?〜
第十二話:ギルド試験狂騒曲⑤/“新興の街”カヴェレ
第十二話:ギルド試験狂騒曲⑤/“新興の街”カヴェレ
「よーやく着きましたわー! スティアさん、フィナンシェさん、
ヴァルタスト地下迷宮から出発してから数時間後、スティアとフィナンシェは
日はすっかり沈み──辺りは暗やみに包まれ、街に建つ家々の窓からは暖かな
「いや、カヴェレ自体は何度も来たことあるし」
「わたしも〜」
「なっ──!?
「まぁ……そうなります」
意気揚々とカヴェレをスティアとフィナンシェに紹介したラウラだったが、ふたりはフィナンシェの父親と共に
「ぐすん……
「いや──アンタただの馬鹿だ」
「失礼な……!! トウリさん、こう見えても
「な、ただの馬鹿だろ? 『魔法使い』育成する学科で『剣士』なんてやる奴、アンタしかいねーよ!」
「…………おー、確かに! むかし、魔法科のジズ先生にも『お
「あー、おれ──なんでこんな脳みそお花畑のお嬢様の“
「ふふふっ──オーッホッホッホッ!! 決まってますわ、トウリさん!! それは──
「うん……違う。あとその悪役令嬢みたいな
「──────はい、すみませんですわ…………あうちっ!!?」
──などと、ラウラとトウリが街のど真ん中で、ぎゃあぎゃあと騒ぎ立てていると──、
「さっきからゴチャゴチャうるせーぞ!!
──怒鳴り声が
「すみませんっ!! すぐに
「つぅ〜〜〜〜ッ!! ──何するんですのっ!?」
「バカっ! おれらが悪いんだから食って掛かるな……!!」
「いま投げつけた
「…………えっ、どーでも良くない?」
「良くありませんわ!
「──えっ、そっち!? 投げつけるのは良いんだ!!?」
──投げるのは構わないから、最高級品を投げつけろ。そう言って、建物の何処かに潜んでいる誰かに──ラウラは
「……スマン、嬢ちゃん。“
そのラウラの
「良いですのよーー、分かっていただければ……!」
ラウラは上機嫌に、腰に両手を当てながらふんぞり返っている。
(……違う、絶っ対に違う……!! これ、明らかに避けられてるーーーー!!?)
声の主の『真意』にも気付かずに。
「さ〜、あの方も
「────あぁ、ちゃんとあんたの『
「スティアさんとフィナンシェさんも、一緒に宿屋に向かい…………アレ、居ませんわ??」
「
「──ふたりなら『じゃあ、私たち宿屋に行きますね。さようなら〜』って言って向こうに行っちゃったッスよ」
「「アンタはいるんかーい!!?」」
そして──街なかで大声で
(…………面倒くさいから、早くどっか行ってーー!!)
〜〜〜
──その頃、ラウラとトウリ、オヴェラをしれっと見捨てて、スティアとフィナンシェは幼いカティスを連れてカヴェレにある宿屋に向かっていた。
「なんだか今日は誰も外にいないね……?」
「そうだな……なんか
ふたりがフィナンシェの父に連れられて
しかし、今は街の通りに人の気配はない。ひっそりと静まり返った街を賑やかしているのは──ゆらゆらと
唯一の安心材料は、街の建物から漏れる灯り。その灯りが、街に人はしっかりといる事をスティアたちに伝えていた。
(うーん、久々の
街の様子を心配しているスティアとフィナンシェとは違い、カティスは──街の『在り方』そのものに目を
木材と石材、レンガを組み合わせて出来た精々ニ〜三階までの高さの建物、街の往来に使うであろう馬や牛を泊めておく
どれを取ってみても、カティスにとっては生前の『魔王』の時代と
(──とは言え、我がヴァルタちゅト城の近くにこんな街なんて無かった筈でちゅ……。今は──あれからどれだけ月日が流れたんでちゅかねぇ?)
フィナンシェの細く柔らかな腕に包まれ、たわわに
(この規模の街を作るのに必要な時間は……
目覚めてから
(う〜〜む、だいたい……50年後ぐらいかな……?)
50年──それがカティスが出した
(もし、本当にそれ位の時間だったら──いつかは
カティスに脳裏に浮かぶは──かつて『
(間違いなく
そうやって、カティスが物思いに
「あんた達もしかして……ランプ村のフォルテッシモさんの
──不意に、老婆のような声がこちらに語り掛けてきた。その声の方向にスティアとフィナンシェが視線を送ると、民家の窓から一人の老女がこちらに向かって手を振っていた。
「あっ、フオリお婆ちゃん……! こんばんは〜、前の交易の時以来ですねー♪」
そう言いながらフィナンシェは、手を振るフオリと呼ばれた老女の元へ駆け寄って行く。
どうやら、彼女たちがフィナンシェの父の交易に付き添った時に知り合った仲らしい。スティアも知った顔だったのか、特に警戒心も抱かずに彼女の元へと向かって行く。
「フオリお婆ちゃん、この前の交易の時は沢山の果物ありがとうございます♡ お父様もお母様もとーっても喜んでましたよ♡」
「そうかい、それは良かったよ。……おや、その子はどうしたんだい……?」
「あ──っ!! えっと……この子は……その〜〜」
フオリに、抱いていたカティスの事を観られたフィナンシェは、自分がカティスの持つ“星の瞳”の事をすっかり失念していた事に気付き慌ててカティスの顔に胸を圧し当てて、カティスの顔を彼女に観られ無いようにする。(※大変危険な行為ですので真似しないで下さい。この赤ちゃんは史上最強なので大丈夫なだけです)
「もごもご……もごもご……!?(約:おっぱいが邪魔で息が出来ないでちゅ……!?)」
パンパンッ、パンパンッ──カティスが必死にのしかかってるフィナンシェの胸を
「もごご……もごぉおおおお!!(約:たちゅけてー、おっぱいに
「その子、あんたの胸に潰されてるけど……大丈夫なのかい……?」
「えへへっ、大丈夫です♡ この子、甘えん坊なんで……」
「もごごごぉ…………!!(約:違うわーー!!)」
「ともかく……あんた達、こんな時間に外を
「昼間のアレ……?」
フオリの言葉にスティアとフィナンシェは首を
「まさか──聴こえとらんかったのか? あの“竜の咆哮”じゃよ……!!」
「竜の……咆哮……ですか?」
「あぁ、そうじゃ。
「スティアちゃん……それって……?」
「そー言えば、ラウラが──」
『はぁ、やれやれですわ。赤黒い光の元に
「──って、言ってたような……?」
(あー、なるほど。おれの放った『
その会話に、カティスは思い当たる節があった。
強大な魔力を極限まで集束させてビームのように撃ち出す術式であり──貫通力、殲滅力、射程、攻撃速度、燃費、どれを取っても破格の性能を誇り、その威力は一国の魔導師たちの全力を束ねた超魔法をいとも容易く捻じ伏せるほど。
中でも、最大の特徴は──攻撃と同時に“
「皆、ロヒ・ハウタ大霊峰の
(なるほどなるほど──おれの撃った『
カティスの撃った『
「ふへ……ふへへへへへ……!!」
「こいつ、フィーネの胸に潰されながら笑ってるし……。さてはスケベだなこいつーー!!」
「もう、スティアちゃんったら嫉妬しないで?」
「なっ/// ち、違うから///」
「うふふ……♪ フオリお婆ちゃん、教えていただきありがとうございます。わたしたちもすぐに宿屋に向かいますね」
赤面して慌てふためくスティアに満足げな
「──今は無理じゃ。街中の冒険者たちが
──と、逆に釘を刺されてしまうのだった。
「えーっ、そんなー!? あたしたち、此処で
「困ったね……どうしようかしら?」
元々、カヴェレの宿屋に泊まるつもりだったふたりに、『他の当て』なんて二の矢は無い。冒険開始早々、路頭に迷う羽目になり頭を抱えるスティアとフィナンシェ。
そんなふたりを見かねたのか──、
「なら、家に泊まりんしゃい。
「えっ……!? 本当ですか、おばさん!?」
「構わん構わん……フォルテッシモさん
「────/// ありがとうございます、フオリお婆ちゃん♡」
──そう言って、フオリは助け舟を出してあげるのだった。
〜〜〜
「お邪魔しまーす」
「こんばんわ~」
フオリに案内されて、彼女の家に泊めてもらう事になったスティアとフィナンシェはペコリとお辞儀をしてから敷居を
(あー、またこの“瞳”の事で
(あっ……良かった〜、寝ちゃってるなら瞳を観られる心配しなくて良いよね……)
「あら、お
「そうじゃ、偶々街を歩いてる所を見つけてのう……。竜の咆哮の事もあるし、今夜は此処に泊めることにしたわい」
最初に声を掛けてきたのはエプロン姿の女性。その姿から、恐らくはこの家の家事を切り盛りする主婦だと思われる。
「こんばんは、フィナンシェ=フォルテッシモです。今夜はフオリお婆ちゃんのご
そう言って、ローブの
「あ、あたしは……スティア、スティア=エンブレムです。今夜は、よ、よろしくお願いします……!!」
フィナンシェの落ち着きのある上品な振る舞いを観たスティアも負けじと挨拶をするが、動きはぎこちなく──カクカクと絡繰人形のように頭を下げる。
(…………育ちの差が
「うふふ、スティアちゃんにフィナンシェちゃんね。よろしくね、私はアヤって言うわ。……で、その腕に抱いてる子は……?」
「えっと、この子は──わたしと──」
この家の主婦・アヤにカティスのことを
「〜〜〜〜〜〜っ!!」
「────あ〜、この子は…………」
(フィナンシェ……
額からしっとりと汗をかきながら、
「〜〜〜〜〜〜っ!!!」
スティアの鬼のような
「え〜〜っと…………」
フィナンシェが出した答えは──、
「………………わ、わたしの、い、妹で〜す♡」
──自分の姉妹だと言い張る事だった。
(……また女扱いちてるでちゅ。まぁ……おれの
「そうなの……? 私、てっきりスティアちゃんのご姉妹かと思ちゃったわ。フォルテッシモさんもお盛んなのねぇ♡」
「えへへっ……///」
何とかその場を
そうして、フィナンシェが照れ笑いで場を誤魔化していると、家の奥から走ってくる音が聞こえてくる。
「婆ちゃーん!! 見てみて、この格好!! 格好いいでしょーー!!」
現れたのは小さな男の子だった。年齢は8歳前後だろうか──安い布切れで作ったであろう赤いマントと安物の
(……典型的な
それを観たカティスは──かつて戦ったとある勇者を思い出していた。
(今ごろは、『魔王カティちゅに敗北ちた
「おんやまぁ、立派な召し物だねぇ〜」
「うん!! これを着て今度の
「もう、豊穣祭はまだまだ先よ? 全く気が早いんだから……」
「でもママ、ぼく早く演りたいんだもん──『
その名に、カティスは耳を疑う。
『最後に……もう一度言うぞ。貴様は──此処で死んで逝け! 勇者キリアリア!!』
それは──かつて魔王カティスが討ち破った勇者の名。自らを“最強”と疑わなかった
(自ら
──と、そんな勇者を演じる少年にカティスは思わず感心してしまう。
「わー、格好いい衣装だね♪」
「────!! あー、お
「はい、こんばんは♡」
「そっちの
「──この、くそ……ガキィ〜〜〜〜!!」
「まぁまぁ、スティアちゃん……」
ぷるぷると
「うゎははは!!」
「あっ、パパだー!」
──家の奥から今度は少年の父親が高笑いと共に現れる。勇者の格好をしている少年とは真逆の──黒いマントと飾り物の
少年のお芝居の練習をしているのだろう。父親はノリノリで演技をしている。
「うははは、俺様は邪悪な魔王──カティスだぞー!!」
(……………………はぁ?)
その言葉に──カティスは
「待てー!
(……………………はぁ!?)
その言葉に──カティスは
「くすくす……懐かしいね『勇者キリアリアと魔王カティス』」
「有名な
(……………………はぁぁ!!?)
その言葉に──カティスは
「でも、お墓もあったし──本当に居たのかな? 魔王カティスさんって……?」
「さぁ? いたとしても
(……………………はぁぁああああああ!!!?)
その言葉に──カティスは
(ちぇ、
その真実に、カティスは激しい混乱に襲われる。
そう──そこは、『魔王カティス』の時代から1000年後の世界。
吟遊詩人ヴァレヒテリアによって
かつての魔王カティスが──生まれ落ちた世界。
〜〜〜
一方その頃──。
「え゛っ!? 今日、宿屋に泊まれ無いんですの!?」
「申し訳ございません。本日は宿泊希望のお客様が押し寄せてしまいまして……」
「え〜、だから言ったじゃん。念の為に朝のうちに部屋取っておこうって!」
「うぅ、
「…………はぁ、やれやれ。オヴェラさんはどーすんだ?」
「あっ、オヴェラさん、お帰りなさいませー♪ お部屋のお掃除終わってますよー」
「──ありがとッス! じゃあ、おやすみなさいッス!!」
「あー、ズルいですわーー!?
「えぇ、男と一緒でも良いのかよ?」
「背に腹は代えられませんわ!! さぁ、オヴェラさん!
「嫌ッス、だって──あんた
「あぁ~~、そんな〜〜あんまりですわ〜〜〜〜!」
「あー、今夜は野宿かー」
宿屋に──少女の
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