第五話 呂布奉先、ローマを治める <序>

 父の言うその日まで伯は季蝉を伴い、毎日丘にのぼり村を見た。


 稽古をし、時間があればまた季蝉を連れ村の人々と話して回った。


 伯が来ると村人は仕事の手を休め笑顔で世間話をする。


 みな伯と季蝉が好きであった。そして伯と季蝉もまたこの村全てを愛していた。皆家族だ。


 早く大人になってこの村を父のように守っていきたい。


 それが伯の夢であり生きる理由だった。


 

 父は何か大事なことを自分に伝えようとしている、良いことなのか悪いことなのかは分からなかったがそれだけは間違いないと伯は思っている。


 なぜか気が急いた。


 今村を見ておかないと、もう見ることができないような気がする。


 父がかすかに見せた悲しみの感情は言葉にせずとも伯の心にしみ、臓を濡らした。


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