目覚めたら60年の歳月が経っていた

  私にようやく認識してもらえて嬉しそうにしていたリアンナだったが、その後すぐに頬を膨らませ不満気な表情を浮かべた。


「むぅ……思い出していただけたのは嬉しいですけど、もっと早く思い出して欲しかったです!」


「いや……無茶を言うな……私の記憶ではお前……そんなに大きくなかっただろう……?」


私は主に豊満に実った胸に視線を送ってそう返す。私がリアンナを置いてクリストフ達と旅立った時は、リアンナは10歳で背丈も年齢相応で胸も……まぁ、10歳にしてはかなり実っていたが、目の前のリアンナよりは小さかったはずだ。


「そりゃあそうですよ。師匠が魔王グランデウスを討伐されてから60年は経ってるんですから」


「はっ?60ッ!!?」


何気ない感じでそう発したリアンナに、思わず私は驚愕の表情を浮かべてそう漏らした。


  が、言われれば納得できる話で、エルフやダークエルフは長命種な種族だけに成長が人より遅い。人間が15,6で成人の身体となるのに対して、エルフやダークエルフは30過ぎぐらいからで、そこから老ける事がない。まぁ、なかには何百年,何千年過ぎても子供の背丈のままのエルフやダークエルフもいたりするが……。

  あれから60年の歳月も経っているのなら、目の前のリアンナが大人の姿になっていても別におかしい話ではなく、むしろ当然の話だろう。なんせ、リアンナはエルフとダークエルフの間に産まれた子である訳だし……


「あれ……?私師匠に60年経ったって言ってませんでしたか?」


「目を覚ましたら当然抱きつかれた記憶しかないが?」


「あぁ、そうでしたね!いつも寝てる師匠には話しかけていたので、もう教えた気になってました!」


舌をペロっと出して頭をかいて笑うリアンナに、微妙に抜けてるところは変わってないなと思い、苦笑を浮かべ溜息をつく。

  しかし、あれから60年が経ったというのか……随分と長く眠って……いや、待てよ……最初の疑問に戻るがなんで私は目覚めたんだ?確か私は魔王グランデウスとの戦いで死んだはずでは……


「……ん?」


  そこで、ようやく自分の身体を確認しようとして、自分の身体の異変に気づく。今、目の前にある自分の手が、10歳ぐらいの子供と同じような手になっている事に……掛け布団を捲れば、脚の長さも以前よりも縮んでいる……


私は恐る恐る部屋に唯一ある姿見で自分の姿を確認する……


「……って!?なんじゃ!?これはあぁぁぁ!!?」


姿見に映っていた自分の姿を見て思わずそんな叫び声をあげてしまう私。

  その姿見に映っていた自分の姿は、自分が10歳だった頃とまるっきり同じ姿をした少女が、同じように驚愕の表情や叫びを発している姿が映っていたのだった……

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