人造人間〈ホムンクルス〉少女の冒険録
風間 シンヤ
プロローグ 前
ここ、魔族達が支配している領域【魔国】。その中心地にある魔王城で、その城の主である魔王グランデウスが、聖剣に選ばれし勇者クリストフ達と激闘を繰り広げていた。
「ふっ……!?やるな……!聖剣に選ばれし勇者よ!だが!我は負けん!負ける訳にはいかぬのだぁ!!!」
「うぐっ……!?」
魔王グランデウスが放つ強烈な魔王覇気により後退る勇者クリストフ達。
が、その覇気を受けても動く者がいた。勇者クリストフの仲間で、この世のあらゆる魔法を極めたと言われる魔法使い[魔導士]のサーシャリアだ。
「これで……!どうだ……!」
サーシャリアは核撃級魔法の雷魔法を放つ。この魔法を受ければ辺り一体の者を全て焦土とかす程の威力を誇るのだが……
「ちっ……!?やはりその身体は厄介だな……!」
そんなサーシャリアの魔法を受けても、平然とほぼ無傷で仁王立ちしている魔王グランデウスを見て思わず舌打ちをするサーシャリア。
「そう嘆く事もあるまい。魔法への耐性を身につけたこの我に、魔法で少しだろうとダメージを与える者などそうはおらん。それを誇って……死ぬがいい!!!」
魔王グランデウスがそう言って右腕を触手のような形に伸ばし、サーシャリアに放ち、それはサーシャリアの胸から背中へと貫通して貫かれる。
「かはッ……!!?」
『サーシャリア!!?』
その光景を見たクリストフ達が嘆き叫ぶ。が。とうのサーシャリアはニヤリと口の端を上げて笑った。すると……
「ッ!!?な……何だ……!?急に身体の力が……!?」
魔王グランデウスは困惑した。何故か突然放っている魔王覇気も弱くなり、力が上手く出せずに、思わず片足が膝をついてしまう。
「ふっ……最後の最後の奥の手だったんだが……どうやら上手くいったようだな……」
「ッ!?貴様!?一体!?我に何をした!?」
「私は常に致死量のダメージを受けた際、相手を弱体化させる魔法を自動的に放ち続けるようにしてある。いくら魔法が効かない体質でも、直接身体の中に入れられるのは効果があるみたいだぞ」
そこで、魔王グランデウスようやく気付いた。サーシャリアを貫いた触手のような腕に一本のナイフが刺さっており、それをサーシャリアが握っている事に。恐らく、そのナイフを通じてその魔法を放っている事に。ナイフに刺されたぐらいでは痛みすら感じられなくなった身体が、その発見を遅らせてしまったのだ。
「ぐっ……!?おのれぇ〜……!!?」
「今がチャンスだ!ネネ!私がナイフに触れられるように私の手を支えてくれ!」
「ッ!?わ……!?分かった!!」
サーシャリアの声に、狼族の獣人ネネがすぐさまサーシャリアの側まで駆け寄り、サーシャリアの手がナイフから離れないように、自分の手でサーシャリアの手を支える。
「カレラ……!お前はしばらくの間、私達を守ってくれ……!!」
「ッ!?承知した!!」
サーシャリアの言葉を受け、[聖騎士]であるカレラが、前に出て魔王グランデウスの放つ攻撃を、その聖なる盾により防ぐ。先程まではグランデウスの覇気に圧倒され、その力を発揮出来なかったが、弱体化した今のグランデウスなら、カレラの力で十分にその猛攻を防ぐ事が出来た。
「今だ!シルビア!クリストフにありったけの聖なる力を譲渡しろ!クリストフ!シルビアの譲渡が終わった聖剣の力を全て込めた一撃を奴に放て!!!」
「ッ!?わ!分かりました!!」
「あっ……あぁ!分かったよ!サーシャリア!!」
[聖女]たるシルビアがありったけ聖なるパワーをクリストフに送る。もちろん、それを阻止しようとグランデウスも動くが、カレラの盾によって全て防がれてしまう。
そして、シルビアの聖なるオーラの譲渡が完了し、クリストフの聖剣が眩い聖なる輝きを放つ。
「これで終わりだ。魔王グランデウス」
「そ……!?そんな……!?馬鹿な……!?我の宿願が……!?潰えると言うのかあぁぁぁ〜ーーー!!!?」
「安心しろ。お前の本来の願い。必ず叶えよう。だから……安心して眠れ」
クリストフの放つ盛大な聖剣の一撃がグランデウスに放たれる。その一撃に弱体化したグランデウスが耐えられるはずもなく……
聖剣の眩い光が消えると、そこに魔王グランデウスの姿はなかった。勇者クリストフはついに魔王グランデウス討ち取ったのである。
しかし…………
『サーシャリア!!?』
魔王グランデウスが消滅したが、その消滅に貢献した魔法使いサーシャリアは大量の血を流し倒れた。
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