第36話 野球小僧-36

『さぁ、押せ押せの勢いが欲しいところ、愛球会は池田君が打席に入りました。どうでしょう、江川君のダメージは?』

『ないでしょうね。ちょっとしたミスということで割り切ってしまえば、またどんどん攻めてきます』

『打席の池田君、少しバットを短めに持ってきています。確実に当てていこうという作戦なのでしょう。さぁ、江川君振りかぶって第1球を投げた、あ、ストライク!スローボールでしたね』

『そうですね。池田君のグリップを見て、あまり単調に攻めないようにしたのでしょう』

『クレバーなゲーム運びというのが、うちのチームのモットーだそうです』

『そうでしょうね。多分今のも江川君の判断で投げたんだと思います』

『第2球、振りかぶって、速球、ストライク!池田君、タイミングが取れません。池田君が想像したより速かったのでしょう。江川君、ゆっくりとしたフォームから、第3球、ストライ~ク!三振!手が出ません。やはり、簡単には打てないということですね』

『そうですね。慎重にチャンスを待って攻めるのが得策でしょう』

『先生はこういう場合はどうしますか?』

『あたしが、監督だったら、ということ?』

『いえ、選手だったら、江川君のようなタイプはどう崩しますか?』

『まず、セーフティバントで塁に出て、プレッシャーをかけますね。それで、バントエンドランのような形で、内野全体にプレッシャーをかけるというのが、常套手段ですね』

『足を使うわけですね』

『あたしの場合は、そうなります』

『まともには、打てませんか?』

『打てないことはないかもしれませんが、確実にしとめるにはこれが一番いいんです』

『なるほど。ありがとうございます』


 2回の表、サンディは絶好調で、456番を凡退にしとめた。一方、江川も立ち直って、2回の裏を678番三者三振でしとめた。3回に入っても、サンディのボールに野球部は対応できず、3者凡退に終わった。


「やるね、サンディ。全く問題ないね」小林

「アリガトウゴザイマス」サンディ

「まだ、カーブ投げてないんだろ。もう勝ったも同然だな」山本

「このまま、パーフェクトなんてしたりなんかしちゃったりして」池田

「リョウ、ガンバッテください」サンディ

「はーい」


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