第34話 野球小僧-34
「やるねぇ、サンディ。かんっぺきじゃない」山本
「サンキュー」サンディ
「大木もたいしたもんだ」高松
「すっごく、緊張したけどなんとか」
「だけど、さっきの緑川さんの打球はすごいね」池田
「そう、真っ正面で、かえって捕りにくかったよ」中沢
「まぁ、慎重にいかなきゃってことだ」高松
「打つほうは積極的に、ね」山本
バットを振り回しながら山本がそう言った。
「おう、山本、行ってこい。でも、江川さんのボールは速いぞ」池田
「ほーい」山本
『さて、マウンドには、野球部一の美少年、江川純君の登場です。絵になりますね』
『…なに言ってんの』
『このしなやかなフォームからうなる剛速球を投げ込んできます。手元にある資料では、自責点は2・83。一試合で3点は取られません。2年生でこれはたいしたものですね』『あと変化球を覚えると、高校でも即通用するでしょう。だけど、いまは、成長期ですから骨格に負担をかけないように、ストレートで投球術をマスターしてもらえばいいと思います』
『対するバッターは、山本君。あたくし、愛球会の試合を観に行ったことがあるんですが、この山本君、なかなかのスラッガーで、核弾頭としてもいいものがあると思います』
『面白い人材ですね』
『さぁ、プレイの掛け声がかかって、第1球目を、投げた。ストライク!真ん中ですね』
『えぇ、江川君も思い切って投げてきましたね』
『あまりの速球に、山本君も戸惑い気味の様子です。第2球、投げた、振った、ファウル!かろうじてかすりましたが、打球はバックネットへ』
『振り遅れてはいませんが、ボールを見ていませんね。かすったのが奇跡です』
『第3球、ストライーク!見送りの三振!今のは手が出なかったんでしょうか?』
『いえ、1球外してくると見ていたんじゃないですか。実際は、遊び球なしで勝負してきて、手が出せなかったというところでしょう。多分、江川君はサンディに対抗して、強気で勝負してくると思いますよ』
『そこを狙えばいいわけですね』
『ただ、キャッチャーの東君がそれをどうリードするかが、面白いところです』
『2番中沢君の登場です。サウスポー江川君、ゆっくりとしたフォームから投げた、ストライク。驚きの速球です』
『速いですね、ただ、フォームが大きいですから、セットポジションからどれだけ力のあるボールが投げられるのか気になりますね』
『第2球目、投げた空振り。あまりの速球についてこれません。間髪入れずに、第3球目、三振、見送りの三振。すごいですね』
『中沢君も1年ですから、ちょっとついていけないんじゃないですか。特に、サウスポーから懐へ入ってくるボール、ファイアーボールというんですが、これはちょっと打てないでしょう』
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