第19話 野球小僧-19
*
晴天の日曜日、亮たちは宮磯公園の球技場にやって来た。宮磯中学の部員たちはもう練習を始めていた。亮たちも急いで着替えて、アップを始めた。亮は楽しみだった。打てなくてもいい、エラーをしてもいいから、絶対にひとつはアウトを取ってやると意気込んでいた。
「今日も、こないだと同じオーダーでいくから」
高松の声にみんな応じた。
試合開始。先攻は愛球会。1番の山本が打席に入る。左投げのエースがぽんぽんとストライクを取って、ツーナッシング。
「おいおい、どうしたぁ」池田
「打っていけよ」高松
野次に促された山本は、高めのくそボールに手を出してキャッチャーフライ。
「おい、どうした?打てない球じゃないだろ」高松
「ちょっと腕の出が遅いんだよ。タイミングが取りにくいんだ」山本
山本は悔しそうにそう言った。
2番の中沢が打席に入った。1球目を見逃して、おかしいな、という仕草を見せた。2球目、打ちにいったボールはサードゴロ。あっけなく2アウトとなった。
「打ちにくいだろ」山本
「ちょっと、ボールが見えにくいっていう感じなんだよな」中沢
「おい、小林、よく見ていけ」高松
打席に入った小林は、高松のアドバイスに頷いてボールを待った。それでも、1エンド2と追い込まれてしまった。ゆっくりとしたフォームから投げてきたカーブは、好打者の小林のバットに空を切らせた。ため息まじりに意気消沈したベンチの中で、亮は、よし、と呟くと勢いよくポジション目掛けて駆けて行った。それに触発されて、サンディも走り出し、
「さぁ、行こうぜ」と高松が気合を入れた。
ボール回しも終わって、プレイの声が掛かった。亮は自分でも驚くほどリラックスしていた。サンディのピッチングのタイミングに合わせて、リズムを取った。ストライク、のコールも自分のリズムに合っていた。それに、まわりがよく見えていた。前を見ているはずなのに、山本が少し腐っている様子が感じられた。ちょっと振り返ると、やっぱりグローブを見ていて、バッターに集中していない。ダメだな、あれじゃあ。と思い声を掛けようと思ったとき、サンディが2球目を投げた。高い金属音とともに、ボールが飛んできた。1、2塁間抜けるか、という打球は、気づいた時には亮の目の前にあった。走りながら差し出したグローブにボールは収まり、打球の勢いに一瞬生きの良さを感じたが、ぐっと抑え込み、1塁に投げた。
アウト!
「やったぁあ!」
亮は自分がいま一塁線上まで駆けて来ていたことに気づいた。
「ナイスプレー!」高松
「リョウ、ファイン!」サンディ
「やるじゃんか、チビ!」山本
声援と野次の中で亮は照れ臭くなって、グローブを振って否定するような仕草をした。
「さぁ、次、行こうぜ!」池田
池田の掛け声に促されてサンディが投げ込んだ。次々とストライクを投げ込むと、バッターはきりきり舞いだった。あっけなく2者三振でチェンジ。いつものようにガッツポーズをサンディは見せた。
「あんまり、飛ばすなよ。今日は7イニングなんだから」池田
「大丈夫デス。まだ、ジュンクンもいます」サンディ
「宮磯は、結構、強いな。本気を出すか」山本
「へえぇ、山本、今まで、嘘っ気だったのか?」中沢
「決まってんだろ。じゃなかったら、打てないわけないだろ、この俺が」山本
「まぁ、いいじゃない。さぁ、サンディ頼む」高松
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