第130話 振り分ける
まずは残った人を善人か悪人か分けることにする。
「それではいくつかあなた達に質問をさせてもらいます。僕に嘘をついた場合、ご存知の方がほとんどでしょうが誓約書の力により痛みが走ります。本当の事を言うか僕が許すまで続きますので気をつけて下さい。ではそこのあなたからやりますので順番に並んでください」
嘘をついた場合、質問によっては苦しみながら本当の事を言い切るのは難しいだろう。撤回すると言うだけでは苦しみからは逃れられないので、場合によっては僕が許すまで苦しみ続けることになるかもしれない。
僕は先頭にいた男性に目の前に来るように言い、残りの人は並んで待つようにさせる。
「ではまず、家名と以前の爵位を教えて下さい」
「ギルバート家当主、アングラムです。伯爵でした」
「誰か王国の地図を持ってきてくれますか?領地の配分がわかる物がいいです」
僕は誰でもいいので地図を持ってきてくれるように頼む。
誰も動こうとはしなかったけど、空気を察したのか下級貴族っぽい人が取ってきてくれる。
「ありがとう」
地図を渡して男性は下がる
「ギルバート家の領地はここで間違いない?与えられていた領地ではなく、実際に治めていた範囲を教えて」
僕は地図に書き込んでもらう
「森のところは無視するとして、この辺りに人は住んでいないの?」
地図上ではギルバート家の領地となっているけど、治めていないとした平地について確認する。
「その辺りに関しては私の領地ではありましたが、実質的には治めておりませんでした。そこには村が2つあります。両村長に税を他の村まで持ってくるか、私の庇護下から外れるかどちらが良いか確認したところ、庇護下から外れる選択をしましたので、放置していました」
「何故そのような選択をさせたんですか?」
「村のある位置は他の村からかなり離れています。その為、税を徴収するにも運搬費の方が高くついてしまいますので、税を徴収しに行くメリットがありません。運搬に必要な費用も村から徴収すると村民は生活出来なくなるでしょう。なので、税の徴収に周っている村まで自分達で持ってくるかどうかの選択をさせました。結果として庇護下から外れる選択をしましたので税を徴収しない代わりに魔物の被害や天災などがあっても当家の資産を使って助けることはしません」
「わかりました。その村に住んでいる方が村を捨てて、他の村の近くに住むと言った場合、当初援助する気はありましたか?」
「これは先代が決めたことですので、私には分かりかねます」
「それでは質問を変えます。今後、村の方がそのように言ってきたら援助する気はありますか?」
「……あります、ぅぅぅ」
アングラムさんが苦しむ。ただ、そこまでは苦しんでいない。
完全な嘘ではなく、嘘が含まれているということだ。
「許します。援助する気がないというわけではなさそうですが、手放しで援助する気はないようですね?」
「……すみませんでした。村に人が住めなくなったりして困ってから言ってくる場合には援助する気はありませんでした。当初の約束と異なりますし、都合が良い時だけ助けを求められても助ける気にはなりません。しかし、そういうわけではなく、今後は税を納めるということであれば援助は致します」
アングラムさんは青ざめた顔で言った。苦しむこともないので、これが本心なのだろう。
「わかりました。責めるつもりはありませんので気を落とさないで下さい。質問はまだ続けますが、次が1番大事なことになります。私利私欲の為に領民に危害を加えたことはありますか?」
「ありません。国の為、領地の為に領民を苦しめたことはあるかもしれませんが、私腹を肥す為に危害を加えたことはありません」
アングラムさんはセーフのようだ。
基本的に僕はこの質問でこれからも貴族として領地の運営を任せるかどうかを決めようと思っている。
罪を犯していたとしても、私利私欲の為でなければ今は問題ないと判断することにした。
「罪を犯したことはありますか?」
それでも確認はするけど……
「……あります」
「大きいものだけで構いませんので教えて下さい」
「…………暗殺と密輸です。他にも色々と犯してます」
「密輸というのは?違法な薬物だったり、人身売買だったりしますか?」
「そのようなことには手を出していません。関税を通していないだけです」
脱税していたということか。
「わかりました。奴隷についてはどう思いますか?人として扱うつもりはありますか?それとも物ですか?」
「奴隷に人権はないと思っております。しかしぞんざいに扱うつもりはありません」
「犯罪奴隷には刑期がありますよね?それを全うした者はどうですか?また、どこかから誘拐されてきて奴隷のような扱いをされている人もいます。その人達は今後どうするべきと思われますか?」
「罪を償いきれたのであればその人は奴隷ではありません。人権はあると思います。ただ、犯罪奴隷だった者を周りの人達が受け入れるかは別です。それから誘拐されてきた人は奴隷ではありません。解放するべきです。しかしお金を出して購入した側が素直に応じるとは思いませんので難しい問題だと思います」
「なるほど。――――――」
その後もこの人にいくつか質問をして答えてもらう。
基本的に聞く内容は変わらないけど、答えによって追加で質問をする。
「篠塚くん、この人はBで」
「わかった。ギルバート家はBだな」
この人の評価はBとした。
僕の中でこの人の評価は普通よりも高いと判断した結果だ。
A〜Eまでランク付けをしており、Aが最高、Cが普通、Eは牢屋送りである。
「では、次の方どうぞ」
次の小太りな人も同じように質問をしていく。
「私利私欲の為に領民に危害を与えたことがありますか?」
「ありませんんうがぁぁぁぁ」
この人は頭を押さえて、呻きながらうずくまる。
明らかな嘘をついたようだ。
「許します。もう一度聞きます。私利私欲の為に危害を与えたことがありますか?」
「あ、あああります」
「何をしましたか?後悔していますか?もちろん今この状況になっている事ではなく、やってしまった事象に対して後悔しているのか聞いています」
この人は違いそうだけど、危害にも色々とある。
私腹を満たす為に領民を殺したり誘拐しても危害だし、お腹が減って店から権力を使って食べ物を盗んでも危害ではある。
なので内容はちゃんと確認するし、悪いことをしてしまったと思っているかどうかも重要である。
「必要以上の税を課して私服を肥やしました」
度合いにもよるけど、これで牢屋行きにするとほとんどの人を牢屋に入れないといけなくなりそうなので、これだけで牢屋には入れないことにする。
ただ、この人はこれだけでは無いと思われる。
「他には?それよりも悪いことはしていませんか?ないなら無いと言ってください」
「……ない。ぐうぅぅああ」
苦しみ出す。
「…………。」
2度目なのですぐには許さないことにする。
「許します。本当の事を言ってください。言わないなら、言えないような酷い事をしたとして1番キツイ罰に処します」
「……目についた女性を拐いました」
拐って何をしたのかは想像がつく。聞きたくもない。
「人が拐われれば騒ぎになるでしょう?家族が探しにきたかもしれません。あなたはどうしたのですか?」
「…………殺しました」
「わかりました。篠塚君、この人はEだよ。連れてって」
「わかった」
後ほどどのような罰を与えるかを決めるけど、普通の生活をさせたのでは殺された人達が報われない。
僕は同じようなやりとりをここにいる人全員とおこなった。
半分以上の人がこの場に残っていない事が残念でならない。
それだけこの国は腐っていたということか……
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