第88話 逃亡者、子守をする

ミアは付いてきてくれると言ったけど、少しでも早い方がいいだろうとミアには帝都で待っててもらうことにした。


僕はミハイル様の屋敷に転移する


「ミハイル様、お久しぶりです。面倒事を頼まれまして、エルフの子を預かりにきましたよ」

僕はミハイル様に挨拶して、要件を伝える


「!!いつの間に来たんだ。門兵から連絡も来ていないぞ」


「スキルを使ってますので、門兵の人がサボってたとかではないですよ」


「それで、何のようだ?」

さっき言ったのに、驚いて聞いていなかったようだ。


「頼まれてエルフの子供を預かりに来ました」


「……それは助かるがいいのか?」


「帝都の冒険者ギルドで脅しかと思うくらいの勢いで頼まれましたよ」


「……今回の場合はしょうがないのだろう。怒って帝都を滅ぼしたりしないでくれよ」


「そんな事するわけないじゃないですか!」

この人は僕のことをなんだと思っているんだ?


「それで、何か考えはあるのか?」


「ちゃんと説明するしかないと思ってますよ。帝国はエルフの子供を助けたんです。それをわかってもらうまで説明するしかありません」


「そうか……。無茶はするなよ」


「それで、エルフの子はどこにいるんですか?」


「こっちにいる」

僕はミハイル様についていく。


「……4歳くらいって聞いてたんですが?」


「エルフは成長が遅いんだ。これでも4歳くらいだ」

そこには赤ん坊がいた。話が違う


「大人までは人と同じペースで成長して、そこから老けないのだと思ってました」


「それは少し違うな。聞いた話になるが、150歳くらいまでは成長が人に比べて10倍くらい遅い。その後はハイトの言う通りほとんど老けないそうだ」


「そうなんですね……」

僕はそんなことよりも赤ん坊をどうしようかと悩んでいた。

あのマスターめ!なにが心が病んでしまっただ。病むとかの問題じゃない。赤ん坊じゃないか!


「だれでしゅか?」


赤ん坊がしゃべった!


「ミハイル様!この赤ん坊喋ったんですけど?」


「そりゃ喋るよ。まだつたないけどね」

ミハイル様は当然のように言った。


そうだっけ?子育てはしたことがないので自信がなくなってくる

早い子だと赤ん坊でもしゃべることもあるのかな?


「ハイトくん、何か勘違いしてないか?エルフは身体の成長がゆっくりなだけだよ。人の4歳児くらいはしゃべるよ」

僕はホッとした。そうだよね、普通の赤ん坊はしゃべらないよね。


「ぼくはハイトだよ。きみのなまえをおしえてね」

僕は赤ん坊と会話しようとする。

シュールな光景だ


「エミリュフリュ・ルリァ・リュージュベリュ」

え、なんて?


「もういっかいおしえてくれる?」


「エミリュフリュ・ルリァ・リュージュベリュ」


「エミリュってよぶね」

2回聞いても覚えられなかった。


「エミリュじゃやい。エミリュ」


「……エミリュ?」


「エミリュちがゆ、エミリュ!」

エミリュが違ってエミリュだと言っている


「ハイトくん、その子はエミルフル・ルラ・ルージュベルだよ。……多分ね」

ミハイル様が教えてくれたけど、多分なんだ


「エミルだね」


「うん!エミリュ」

エミルのようだ


「エミルをいえまでおくってあげるからね」


「いえ?」

エミルは首をかしげる


「パパとママのところにぼくといこうか」


「ママのとこエミリュいく」


「それじゃあ、帝都経由で行ってきます」

僕はエミルを抱っこしながら、ミハイル様に言う


「……ああ、頼んだよ。今のハイトくんはパパみたいだね」


「そういえばエミルは何を食べるんですか?」


「もちろん、ミルクだよ」


「わかりました。店で買ってから帝都に向かいます」


僕は街で買い物をする。ミルクの他に、赤ん坊を背負う用の服も売っていたので買うことにする。


オムツも買っておいた。

起きてる時は、トイレ行きたい時にしゃべるので必要はないかな?

寝ている時はおねしょする時もあるだろうし必要だろう。


僕は馬車に乗って帝都を目指す。

……自分の足で走った方が速いかな?

でも、エミルがその速さに耐えられるかわからないからダメか。


育児の大変さを実感しながら進み、帝都にやっと戻ってきた。


僕は宿屋の部屋に帰る


「ただいま」


「あ、お兄ちゃんおかえり。その子がエミルくんね」


ミアには念話で大体のことを説明しておいた


「エミルくん、はじめまして。わたしはミアだよ」


「エミリュ!」


「なんだか不思議な気持ちになるね」


「そうだよね」


「すぐに出るの?」


「一応皇帝に話だけしておくよ。何か帝国として詫びの品とかあるかもしれないし」


「うん、わかった」


僕はエミルを連れて皇帝に会いに行く


「皇帝はエルフの件知ってたんですね?」

僕は挨拶とかをふっ飛ばして、皇帝に聞く


「当然だ、その赤子がエルフの子だな」


「そうですよ。僕に行かせるつもりだったのなら、なんで前の時に言わなかったんですか?」


「言ったとして、快く受けてくれたのか?」


「……断ろうとはしたでしょうね」


「やはりな。ギルドに任せた方がお主が受ける可能性が高いと思っただけだ。実際に受けてくれたみたいだしな」


僕は皇帝の手のひらの上にいたようだ。


「はぁ、まあいいです。これからエルフがいる森に入りますけど、何かあります?友好の証みたいな?」


「この書状を持っていってくれ」

皇帝は手紙を渡す

準備済みですか……


「内容を聞いても良いですか?」


「帝国は今回の件に関しては保護した立場であり、恨まれる由縁はないって事を難しく書いているだけだ」


「そうですか。渡しておきます」


手紙を渡す以外は特にないようなので、僕は宿屋に戻りミアと合流してからエルフの住む北の森へと向かった

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