第77話 逃亡者、Sランク冒険者と戦う
「俺を待たせるとはどうゆうつもりだ!」
冒険者らしき男がギルドの入り口で受付の女性に怒鳴っている
「すいませんでした。」
怒鳴られている女性は涙目になりながらペコペコと何度も頭を下げている
「俺が誰だか分かってて待たせてたのか?あっ!?」
「そのようなつもりではありません」
女性は謝りながら答える
僕はコソッとお姉さんに確認する
「あの人がさっき言ってたSランク冒険者ですか?」
「はい、そうです」
あれがSランクか……チンピラと同じじゃないか
「お兄ちゃん…」
ミアが心配そうに見えくるが……
「わかってるけど、みんなが堪えてるのに僕が勝手に引っ掻き回すわけにはいかないよ」
普通の冒険者であればギルドマスターが出てきて収束するのだろうけど、出るに出られないのだろう。
ギルドマスターが出て来てしまったら、辞めされることになってしまうだろう
「言い訳してんじゃねーぞ!」
ガシャン!
男が女性を突き飛ばし、女性はカウンターまで飛ばされて気を失ってしまった。
くっ!僕はなんとか堪える。
「寝たふりしてんじゃねーぞ!」
男は気絶した女性に近づいていき、さらに手を出そうとする。
「ゔぁ、なんだてめぇ?」
僕は堪えきれずに男の腕を掴んでいた。
やってしまった……。
「チンピラに名乗る名はありません」
やってしまったものはしょうがない。
僕は念話でミアに謝り、女性の介抱を頼む。
「てめぇ、俺が誰かわかってないのか?」
男は睨みを効かせてくる
「わかってますよ。Sランクの……いや、知らない」
名前聞いてなかった……
「おちょくってんのか?知らねえって言うなら教えてやる。俺がSランク冒険者でドラゴンスレイヤーのドラキンだ」
「ドラキンさんっていうんですね。本当にドラゴン倒したんですか?」
この人、僕が持ってる称号「龍殺し]持ってないんだよなぁ。獲得したタイミングからして、龍族倒したら獲得するんだと思ってたけど……
「なにも知らねえようだな。俺はレッドドラゴンを倒した功績でSランクになったんだ。わかったら、そこをどけ!殺されたくなかったらな」
レッドドラゴンは見たことないけど、ブルードラゴンと同格くらいだろうか?確か元々のダンジョンの90階層くらいにいたな。
「レッドドラゴンですか?ファイアドラゴンとかエンシェントドラゴンじゃなくて?」
「あんな天災に人間が勝てるわけねぇだろ!」
ファイアドラゴン倒した時に龍殺しの称号獲得したんだよなぁ。違いがあるのかなぁ?龍と竜とか?
そんなこと今は関係ないか
「そうですか。ドラゴンスレイヤーだからといって、女性に暴力を振るうのはどうかと思いますよ?」
「お前、俺にそんな態度でいいのか?お前が原因で帝国を離れて王国に行くって言ったら、どうなるかわかってるのか?これから王国と戦になるかもしれないってのによ」
王国に行かれるのは困るな。こんなのでも実力は高い。
「どうなるんですか?」
「お前は処刑されるな。帝国が俺を引き止めるために。それが嫌なら今すぐそこで土下座しろ」
「嫌です」
「わかってないようだな。俺が今ここでお前を殺したところで、俺は罪に問われない。それだけSランクってのは偉いんだよ」
それはミハイル様から聞いたから知ってる。
実際にその権力を使って僕も商業ギルドのマスターを脅したのだから。
「チンピラに殺されるほど僕は弱くないけどね」
「いいだろう。殺されたいみたいだから、願いを叶えてやるよ」
うーん、なんでこんなに血の気が多いのだろうか
「ここでやると後片付けが大変なので、場所を移しましょう」
ドラキンは僕の言うことを無視して殴りかかってきた。
僕は軽く避けて、ドラキンの首根っこを掴む。
「訓練場借りますね。どこにありますか?」
戸惑いながらも、元々僕の対応をしてくれていたお姉さんが案内してくれる。
僕はドラキンを引きずりながら訓練場に入り、ドラキンを投げ捨てる
「あそこだと、周りの人に迷惑が掛かるのが分かりませんか?やりたいんでしょ?さっさと終わらせてください」
ドラキンは呆然としている
「来ないなら、僕の方からいきますけどいいですか?」
ドラキンはガクガクと足を震わせながら答える
「いいのか?俺と敵対するってことは帝国と敵対するってことだぞ」
「わかってますよ。あなたこそわかってますか?Sランク冒険者は強いからこそ、権力を使えると。僕に負けたあなたを帝国は守ってくれますかね」
「いいだろう、本気でやってやる」
ドラキンは詠唱を始める。
詠唱が終わる前に倒せるけど、なにをするかは鑑定でスキル見たからわかってるから、やりたいようにやらせてやるか
僕がボーと眺めていると、やっと詠唱が終わり目の前にレッドドラゴンが現れた。
やっぱりブルードラゴンの色違いだね。
「ビビって声も出ないようだな。俺は倒した魔物を召喚出来るんだよ。やれ!」
どうせなら面白いものを見せてあげることにする
「実は僕も召喚出来るんですよ」
実際には召喚なんてスキルは持ってないので、収納からコソッと杖を出して目の前を光らせ、演出をする。
「笑わせたいのか。スライムを召喚したところでレッドドラゴンが倒せるわけないだろう」
僕が光の中に素早く忍ばせたラジコンスライムを見てドラキンはバカにしたように笑う
「行け、スラきち」
僕はスライムに命令を出しているフリをして後ろ手でコントローラーで操作する
「お兄ちゃん、それ何?」
後ろにいたミアにはバレバレのようだ。
後でミアにも貸してあげよう
「ダンジョンで一番強かった敵かな」
これは嘘ではない。実際、勝ちを譲ってもらったようなものだった。
「ドラゴンが迫って来てるけどいいの?」
よそ見してミアと話している間に、レッドドラゴンがスラきちに襲いかかっていた。
僕はスラきちに体当たりをさせる。
スラきちは体当たりでレッドドラゴンを吹き飛ばす。
レッドドラゴンは倒れたままピクピクと痙攣している。
死んではいないようだ。
「トドメだ、スラきち!」
僕は再度、スラきちに体当たりをさせる。体当たりくらいしか動かし方がわからないんだけどね……
僕が戦った時は触手みたいに変形したりとかしてたのに、やり方がわからないんだよね。どうやってたんだろう?
あの時に動かしてた人に会うことがあったら聞いてみよう。
瀕死のレッドドラゴンにもう一度体当たりを耐える事は出来ずに、粒子となって消えた。
なるほど、召喚された魔物は倒されると消えるのか。
もしかしたら、一度倒した魔物を召喚しているからかも知れない。
「さて、次はあなたの番ですよ?」
「ば、化け物っ!」
「こんなかわいいスライムに化け物なんてヒドイなぁ」
「こ、降参する。許してくれ」
うーん、何か企んでいるように見えるんだけどなぁ
「心を入れ替えますか?もう横暴な態度は取りませんか?」
「あ、ああ。入れ替える。だから許しください」
とりあえず、マーキングしとくか。
「わかりました。次、おかしなことしているの見かけたら容赦しませんので、忘れないで下さいね」
ドラキンは走って逃げていった
「良かったの、お兄ちゃん?多分反省なんてしてないよ。王国に流れるかもしれないよ?」
ミアも同じように感じたようだ
「うーん、何か企んでるようだったけど、あのくらいならワルキューレがやられることはないし、大丈夫じゃないかな?マーキングもしておいたし、何かあったら今度こそ心を鬼にするよ」
ドラキンがすぐに行動を起こすとはこの時の僕は考えもしていなかった……
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