第51話 輝かしき王アーサー6

 走っていくモードレットを止めようとした騎士もいただろう、だけど、まるで意図的であるかのように入口付近の騎士たちは、動かなかった。おそらく、モードレットの協力者の息がかかった連中なのだろう。俺達はいつでもとびだせるようにして待機をしていた。



「久方ぶりですね……モードレット、あなたは覚えていないかもしれませんが、一度だけ私はあなたとお会いしたことがあるのですよ」

「ふん、覚えているさ、俺を見下して、くそ親父の横にいたな。だが、それも終わりだ。王には俺がなる」



 そういうとモードレットは憎しみと嫉妬が混ざり合ったどす黒い感情を目に宿しながらアーサー様の肩に乱暴につかみかかる。アーサー様は抵抗する様子もなく、不敵な笑みを浮かべてそれを受け止めた。



「我は叛逆する。『聖剣の担い手』はアーサーではなく、我がもとにあれ」



 モードレットの右腕が輝いてアーサー様を襲う。これが彼のユニークスキル、叛逆者だ。かつてパーティーを組んだ時に彼から見せてもらったスキルを俺は思い出す。




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叛逆者


 運命に抗うためのスキル。生涯で一度だけ、他者や、物などの理に逆らう事ができる。発動条件としては対象に触れて、何に叛逆をするかを具体的に言わなければいけない。


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 これで、彼はスキルの所有者をアーサー様から自分へと変えようとしたのだろう。条件はあるものの運命に逆らう事のできる強力なスキルだ。相手がちゃんとモードレットの言ったスキルを持っていればいまごろ今更彼の元に『聖剣の担い手』はわたっていただろう。




「はは、これでお前は聖剣を使えなく……なぜだ……なぜ俺の元に『聖剣の担い手』がこない!?」

「決まっているでしょう。私はスキルに関係なく、カリバーンに本当に選ばれたのですよ。真の王ですからね。エレイン、セイン!!」

「バカな、そんなはずは……」



 驚愕と共に絶望しているモードレットをよそに距離をとったアーサー様の言葉を合図に、俺とエレインさんがバルコニーから飛び降りる。その途中でエレインさんは壁を蹴ると、轟音と共に壁が砕け散りその反動でアーサー様の方へと向かっていった。あの人は本当に同じ人間なのだろうか?

 しかし、エレインさんのその進路をふさぐように騎士たちがアーサー様の元へと向かう。わざとだろうか、偶然だろうか、進路をふさがれてエレインさんの動きが一瞬おくれる。



「モードレット!!」

「わかっている!! 俺は『クラレント』を使えないという真実に叛逆をする」

「その剣は……宝物庫から奪われた……」



 ルフェイらしき女性の言葉が聞こえモードレットがスキルを発動させた。彼が持っていた剣が禍々しい黒い光を放つ。何がおきているのだろうか? あれは確か、モードレットが持っていた母の形見の剣だったと思う。詳しい事はわからないけれど、とても大事にしていたもののはずだ。




「失せろ!!」



 嫌な予感がしたのか、エレインさんが猛ダッシュで騎士たちを蹴散らしてアーサー様の元へと向かっている。本来の予定だったら、ここで俺とエレインさんがアーサー様の元へと向かい、彼女に『聖剣の担い手』を売って、モードレットの目の間で『カリバーン』を抜いて三人で倒すという作戦だったのだが、あの剣から放たれる光が、そんなことをしている場合ではないと思わせる。だけど騎士達のせいで一瞬だけエレインさんの動きが遅れた。そしてその一瞬が致命的だったのだ。



「スキルを奪えないならば、せめてあの男の忘れ形見を殺してやるよ。クラレントよ、俺の憎しみを喰らうがいい。」


 モードレットが剣を振りかざすとともに禍々しい黒い光が剣から放たれて、光線のようにアーサー様を襲った。

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