散々利用され追放されたスキルトレーダーはスキルショップを開き成り上がる。用済みと言われたスキルは固有スキルや魔物のスキルも取引できるチートスキルでした。S級冒険者や王族の御用達になったのでもう戻らない
第1話 技能取引<スキルトレーダー>は追放される。
散々利用され追放されたスキルトレーダーはスキルショップを開き成り上がる。用済みと言われたスキルは固有スキルや魔物のスキルも取引できるチートスキルでした。S級冒険者や王族の御用達になったのでもう戻らない
高野 ケイ
第1話 技能取引<スキルトレーダー>は追放される。
「何をちんたらとやっているんだ、セイン」
「ああ、次のダンジョンは俺達『白く輝く
冒険者ギルドの酒場のテーブルで俺が冒険者たちが保有しているスキルを一覧にした紙とにらめっこしていると、同じパーティーのザインがエールの入ったジョッキを片手に酒臭い息を吹きかけてきやがる。俺が思わず睨むと、それが気に喰わなかったのか、胸倉をつかんできやがった。
「何をするんだ!?」
「お前こそなんだその態度は!! 戦闘中は無能なくせによぉ!! お情けでパーティーにいれてもらっている癖に、生意気だぞ!!」
「くっ……それはリーダーの指示もあるだろ……」
戦闘中は無能なくせに。その言葉に俺は一瞬黙ってしまう。確かに俺のユニークスキル『技能取引』<スキルトレーダー>には戦闘力はない。だが、冒険者として役に立たないわけではないのだ。
「そんな言い方は無いんじゃないか? 俺らのパーティーが最速でBランクになったのだって俺が買ったスキルをみんなに売ったり、貸したりしているからだろ?」
そう、確かに俺に戦闘能力は無い。だが、俺のユニークスキル『技能取引』<スキルトレーダー>がパーティーの全体的な成長度や能力が底上げされているのは事実のはずだ。現にこのパーティーが最速でBランクに昇格したのも、目の前のこいつが強くなったのだって俺のスキルの力が大きいと自負している。
俺が仕入れたスキルが、彼らの足りない部分をサポートしたり、スキル習得の時間を短縮しているのだから。なのにこんな舐めた態度をされるのは理不尽ではないだろうか?
「はっ、お前が俺らに貸してるの何て基礎スキルばっかりじゃねえか。上級スキルを持っている俺達にはもういらないんだ。お前は知らないだろうが、いつも宿ではお前をいつ追放するかって話をしてるんだぜ」
「なん……だと……」
俺の抗議をザインは鼻で笑った。だが、そんなことよりも、聞き逃せない言葉があった。俺を追放するだと……前線に出ないのだってお前はサポートに徹してくれという指示に従っているからだし、何よりもリーダーのモードレットには大きな貸しがある。俺がザインに再度言葉の意味を確認しようとした瞬間だった。背後からもう一人の男の声が割り込んできた。
「ザイン、酔いすぎだ。その件は俺から話すと言っていたはずだが?」
振り向いた先には金髪の鋭い目つきの男が立っていた。彼が俺達のパーティーのリーダーであるモードレットだ。彼とは冒険者研修で同期だったことと特殊なスキル同士だったことがきっかけで話が合いパーティーを組むことになったのだ。そして、俺に後方支援に徹してくれと指示をした本人である。
「モードレット、俺を追放するって言うのは本気なのか? このパーティーは俺とお前が力をあわせて強くしたじゃないか」
「ああ、本気だ。確かにお前が貸してくれたスキルのおかげで俺達は強くなった。だが、お前が貸せるスキルは基礎的なものばかりじゃないか。『上級剣術』を手に入れた俺に『初級剣術』が何の役に立つって言うんだ? もう、お前のスキルはいらないんだよ。悪いな、それに代わりの冒険者ももう手配はついているんだ」
「お前……俺を散々こき使って用がなくなったら追放しようって言うのかよ、モードレット!? 大体基礎スキルがあるから上位スキルだって……」
俺の必死の絶叫にもモードレットは表情を動かさない。俺が食い下がろうとすると腹部に激痛が走る。痛みに耐えきれず膝をつくと、にやにやと笑っていながら拳を突き出しているザインが立っていた。
「ほら、聞いただろ。お前はもう、用済みなんだよ。昔っからおれはお前が気に入らなかったんだよ。スキルを貸すときも金、金うるせえったらありゃしねえ。パーティーなんだからそこらへんは融通をきかせろってんだよ」
「く……あれは、スキルの縛りが……」
バカにしたようにこちらを見下しているザインに、何とか起き上がり反論しようとする俺にモードレットが耳打ちをする。
「退職金はくれてやる。だからあの事は黙っておけ。さもなければ……わかっているな」
「お前……どこまで……俺がお前らパーティーに貸したスキルは返してもらうぞ」
「好きにしろ。もうパーティーの総意は取ってある。もう俺達にお前もお前から借りたスキルもいらないからな」
「そうかよ……なら取引は成立だな……」
吐き捨てるようにそういうとうずくまっている俺を、あざ笑いながらモードレットとザインは俺の前を去っていく。
『スキルトレーダー発動、『白く輝く
脳内に声が響くと同時に俺のスキルトレーダーにスキルが戻ってくるのを感じる。俺があいつらの事を考えて貸していたスキルが戻ってくる。ああ、くそ……なんでこんなことになってしまったんだ。
確かに俺のスキルは戦闘向けではなかった。だからこそサポートに回ってくれというのも納得したし、俺はがあいつらの力になるために必死に不足しているスキルを探して買ったり、アドバイスなどをし続けてきたのだ。他のメンバーに比べて取り分が少ないのだって、サポートだからと無理やり自分に言い聞かせて耐えてきたのだ。なのに……その結果がこれかよ……
「大丈夫かい? さっきのはひどいな……」
顔を上げるとそこには水色の髪をした綺麗な顔の大人びた雰囲気の美少女がいた。俺は美しい女性に恥ずかしいところをみられたことに気づき羞恥に顔が赤くなるのを自覚した。半泣きの俺はなんとも情けなく彼女の目に映っているだろう。
「いえ、大丈夫です。お見苦しいところをお見せしました」
俺はいてもたってもいられず、お礼を言って冒険者ギルドを出て行くことにした。それにしてもあの女性、どこかでみたことがある気がするな。まあ、いいそんなことよりもこれからどうするかを決めなくては。
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「いえ、大丈夫です。お見苦しいところをお見せしました」
私はそう言って気まずそうに去っていく少年の後姿を見送って失敗したなと反省をする。彼のプライドを傷つけてしまったようだ。冒険者同士でのもめごとというのはよくあるものだ。報酬の取り分で揉めたり、先ほどの彼の様に追放されたりも日常茶飯事である。だから基本はスルーするべきなのだったのだろう。だけど、彼の話している内容と、あまりに理不尽な追放劇に思わず声をかけてしまったのだ。
「マスター、ミルクを頼む。あと、さっきの少年に関して詳しくききたいんだが……?」
「ああ、あいつはセインって言って……って、あなたはエレイン様!? お久しぶりです。しかし、Sランク冒険者がなんでこんなところに……」
私は驚いた顔でこちらの素性を語るマスターにジェスチャーで静かにして欲しいと伝える。元々目立つのは好きではないし、特に今は、極秘の依頼の最中なのだ。
「ああ、彼の事でしたね。Bランクの冒険者でサポートメインですが、ちょっと金にうるさいところもありますが、真面目でいい奴ですよ。ダンジョンの下調べとかもあいつはほとんどやってますし……ユニークスキルのスキルトレーダーが結構面白くて他人のスキルを買ったり、売ったりできるんです。」
「へぇー、スキルを売ったり買ったりか……」
マスターの言葉を聞いて私は思う。彼こそが私の求めていた人間かもしれないと……私はマスターに情報量代わりの金貨を渡して再度質問をする。
「彼はどこに住んでいるかな?」
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