第3話 異世界へ
「第三に、なぜ異空間に君たちが招待されたか。ここからが本題。」
「…」
「…」
俺たちはアトラさんの言葉を待った。
「君たち数十人にはこれから別の星に行ってもらいたいんだ。」
「え…?」
「別の星に…?」
「うん、地球から遠く、遠〜〜く離れた星。その名はエーテリア。」
「始まりの星と呼ばれた所。」
「ここにはね、神樹が存在してるんだ。」
「神樹、ですか…?」
「うん、神樹。」
「この神樹にはね、特別な力があるんだ。」
「大気中にある魔素を吸い取いとるっていう。」
「魔素…?魔素ってなんですか…?」
白雪さんが聞いた。
「魔素っていうのはね、本当なら大気中にあった元素の1つ。」
「今はもう、どこにもないね。ひとつの星を除いて。」
「魔素は、生き物には有毒な物だったんだ。少量なら全く問題はない、でも大量に摂取してしまうとたちまち痙攣を起こしそして、死ぬ。」
「大昔、その魔素が宇宙全体、惑星問わずとにかく大量に存在していた。適応できる生き物も、自然も生まれることはなかった。」
「それほどまでに危険な魔素が溢れかえっていたんだ。」
「しかしあるとき大地に1つの木の芽が出た。小さな、小さな芽が。僕達神は目を疑ったね。」
「まさかこんな世界に芽吹くことのできる物があるなんてって。」
「それからその木はすくすくと育ちそして、魔素を吸い始めた。」
「範囲なんて関係ないと言うが如く宇宙全体に溢れかえる魔素を、吸った。」
「吸って吸って。大きくなって。また吸って。」
「それを繰り返し、宇宙全体の魔素は無くなり、木は大樹へ、そして神樹へとなった。」
「今神樹は貯めに貯めた魔素を少しだけエーテリアに放っている。少しなら害はないからね。」
「そして毒でしかないと思っていた魔素にも、特別な力があった。」
「あるものは手から火を、あるものは素手で大地が砕けるほどの強化を。今エーテリアでは、様々な種族達が魔素の力によって色んな能力、魔法を行使することが出来るんだ。」
「魔法として使った魔素はまた神樹へと還る。」
「エーテリアで生まれた生物達は魔素を生活の1部として、使っているんだ。」
魔法、それは誰もが憧れたことのある力。
「魔法…」
「本当にそんなことが…」
その話を聞いて俺はわくわくした。
白雪さんも心なしか頬が赤い。
「使えるよ。あの星だけでね。神樹は魔素をもうエーテリアだけに留めておこうとしてるみたいだからね。」
「さて、前置きが長くなったね。君たちにはそのエーテリアに行ってもらいたいと思ってる。」
「前に説明した人たちにも言ったけど、いわゆる異世界転移ってやつかな?」
「あれ…?でも異世界って訳では無いのかな…?細かいことはいいや。」
「君たちにやってもらいたいことは1つ、神樹を守ってほしい。」
「え…神樹を守る?」
「どういう事ですか…?」
「今あの世界には、神樹を狙っている勢力がいるっぽいんだよね。」
「神樹を壊すのが目的か…はたまた神樹の持っている魔素が目的か…」
「なんにしろアホみたいな事を企んでる奴がいることはわかってるんだ。」
「だからね、そいつをぶっ殺してここに連れてきて欲しいんだよ。」
「もう話してわかったと思うけど、僕達神は下の世界に行けないんだ。神託くらいはできるけど。」
「だから君たちにかかってるんだ。」
「…えっと。」
(俺たちに人殺しをしろってこと…?これ。)
「…」
(白雪さんもすっごい嫌そうな顔してるじゃん。)
「一応言っておくけど、もし神樹が破壊されたりしたら、宇宙全体が死の世界になるからね?」
「神樹を守って人1人殺るか、神樹壊されて宇宙全体を見捨てるか。」
「どっちがいい?」
ニコニコしながら問いかけてくるアトラさん。
(この神様、結構いい性格してると思う。)
(うん、私もそう思います。)
何故か今、白雪と意見が一致したような気がした。
「でもアトラさん、俺人殺しなんてした事ないんですけど。」
「それに別に強くないですよ?行って死ぬ可能性高くないですか?」
「私もです。格闘技とかもやったことないですよ?あっちにも勿論悪い人もいるんですよね?」
「いるいる。むしろ魔法がある分地球より悪い人の割合結構高いよ。」
「それに、生態系もかなり地球とは違う所があるからね。君たちが魔物と呼ぶもの達ももちろん居る。」
もしかしたらと思っていたけどやっぱりいるんだ……魔物。
「…私いや、ですよ……?あっちに行って、その…強姦とかされるの。」
「地球でさえ触ってきそうになる人も居たのに。その比じゃないですよね…?多分。」
(やっぱりそういう目にあいそうになったことあるんだな…)
「そこは否定できない。犯罪の数もまた地球とは比べ物にならない。」
「…」
「…」
「でも大丈夫、君たちは特別だからね。そんな事にならないように、エーテリアに行く前に僕が自ら力を与える。」
「前の人にもそうしたよ。」
「…力っていうのはどういうものを?」
「それはわからない。君たち2人の素質によるからね。」
「素質ですか…?」
俺はアトラさんに疑問を投げかけた。
「うん、君たち人間にはもともと可能性が備わっている。いわゆる才能だね。」
「才能と行われることが必ずしも一致することはない。」
「バスケの才能があるひとがサッカーに打ち込んでいて、中々才能が開花しない、とかね。」
「その多岐にわたる才能を、僕が引き出してあげるんだ。」
「…え、それ最悪ゴルフの才能があったとかになりません……?」
「そんなんじゃ絶対私たち死んじゃうんですけど……」
「才能にも多岐にわたるっていったでしょ。」
「僕が引き出すのは戦う才能。人間誰しも必ずひとつは持ってるものだよ。」
「持ってないなんて人間は絶対いない。才能なんてものは人間が居ればいるほど星の数あるよ。」
「さて、そろそろ時間も迫ってる事だし、才能を引き出して早速あちらの世界に送ろうか。」
「ちょっ、ちょっとまってください…!私まだ行くなんて言ってないです…!」
「…最悪、別に神樹のことは忘れてもらっても構わないよ。」
「…え?」
「いいんですか?」
「うん、何か気になったことかあったら教えてもらえればいいよ。」
「君たちとなら何時でも連絡できるようになってるから。」
「何かあったら逆に連絡してきていいよ。下界には行けないけど相談には乗ってあげる。」
「相談って…」
「無茶ぶりだと分かってはいるけどお願いね。こうやって数十人の魂に干渉できたのも奇跡に近いんだ。」
「じゃあ、送るね。」
そういうと辺りが急に眩しく光り出した。
「ちょっ、まっ………!」
「ぅぁっ……」
「どうか………この宇宙を……救って………」
---そして俺の意識はそこで途絶えた---
---そして私の意識はそこで途絶えた---
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