神様に異世界に行って神樹を守れと言われた。

カジキ

第1話 真っ白な空間

ここは……どこだろう。


俺は気がついたらどこかわからない、真っ白な空間にいた。






「お?気がついたみたいだね。」


「……?」


後ろから声が聞こえた、振り返るとそこには凄まじく顔立ちの整った中性顔の人がいた。


金髪の肩くらいまで伸びた髪、一言喋っただけで包み込まれそうな声。


甘いような、それでいて心地の良い匂いがこちらまで漂ってくる。


(うわっ…なにこの人。すっごい顔整ってる……)


(男…?いやでも女の人…?どっちだろう…)


(年はどれくらいだろう……二十代前半…俺より上か同じくらいか…?)


なんて初対面の人に少し失礼なことを考えていると、再び話しかけられた。


「こんにちは。」


「あ、えっと……こんにちは…?」


「はい、こんにちは。受け答えは問題なさそうだね…」


「身体はどうかな?痛いところとかある?」


「痛いところ、ですか…?いえ特にないですけど…」


「身体の問題もなし、きちんと初対面でも敬語が使える……うん、いいね。」


「…?」


目の前の中性顔の人は一人でぶつぶつとなにやら独り言をいった。


「あ、ごめんね。ちょっと考え事。」


「はぁ…?」


要領得ない俺はすこし首をかしげた。


「君も大丈夫かな?どこか痛かったりとかしない?」


「いえ、私も特に…」


「……ん?」


(他の人もいたんだ。)


声のしたほうをみると、そこには女の子が立っていた。


姿格好は制服、コスプレではないのなら学生ということになる。


容姿はこちらもとても整っていた。


腰まで伸びていそうな髪を後ろで結んでポニーテールにしており、かなり珍しい白銀の髪。


おそらくスッピンであろう顔は。ナチュラルメイクをしているような、そんな美しさのある顔。


一生では一度、二度出会えるかわからないほど、整っている女の子だった。


(え、なにこの美人。びっくりなんですけど。)


(…目の色もすっごい綺麗。翡翠色って言うのかな?)


(シミの一つもない…鼻も高めだし……)


(背丈はどうだろう、俺が175くらいだからこの子は170ありそう。)


(俺って自分の容姿に自身がないから美人な人とかイケメンとか見ると羨ましく思っちゃうんだよなぁ…)


(なりたいわ…美人に。もう去勢してこようか。うん、そうしたほうがいいかもしれんわ。)


「…あの。」


まじまじと見ていると、女の子から声がかかった。


「あっ…すみません。まじまじと見てしまい…失礼でしたよね…」


「いえ、なれているので。」


そういうと女の子は目をそむけた。


(なれてるか。そりゃそうだわなぁ。こんだけ可愛けりゃ見たり話しかけてくる男なんてごまんといるよなぁ。)


(いかん、まじで失礼なことしたわこれ。)


「はい、じゃあ。二人共身体のほうは特に問題はないってことだから、説明に入るね。」


なんてことを考えていたら、中性顔の人が発した。


「あ、はい。」


「…」


「まず第一に。君たちは死んだ。死んだことは覚えてる?」


「…え?」


「…?」


俺たちは二人して首を傾げた。


(しんだ…?俺が…?どゆこと…?)


(今現にこうして立って喋ってるよな…?)


女の子の方もちらっと見た。こちらもわからない様子。


(…いやちょっとまて、なんか中性顔の人とこの女の子の可愛さに見とれていて忘れてたけど、そもそもここってどこなんだ…?)


(真っ白な場所だし、人もいない…女の子のほうは学生で間違いない、じゃあこの人…)


「あ~まってまって、あれこれ考えるのは後にして?」


「ごめんごめん、聞き方がわるかったね。じゃあ、死ぬような出来事があったってことは覚えてる…?」


「死ぬような出来事……」


俺は考える仕草をした。




(…正直なに言ってるんだこの人、頭の病気か?死んだとか死ぬ出来事があったとか馬鹿じゃないの?と言いたいけど…)


(……なんだろう、その言葉を何故か…何故か否定ができない。まるで本当に死んだかのように………)


「……」


「……」


(死ぬような…出来事……)








その時、女の子がつぶやいた。


「……電車。」


「…え?」


「私朝電車に乗って学校に向かって…それで…」


「……そうだ。俺も、電車に乗って会社に……」


「うん、そのあとは?」


「…いきなり電車がすごい勢いで揺れて……そのあとは…覚えていません。」


(そうだよ…俺たちは…)










「…脱線。したんじゃないか…あのとき。」


「電車が脱線して俺たちは…死んだ。」


「脱線……」


「うん、正解。君たちは朝の登校、通勤の途中で電車の脱線事故にあい、死んだ。」


俺と女の子は言葉がでなかった。


悲しくないと言ったら嘘になる。叫びたい気持ちもある。しかし、それ以上に納得したっていうのがデカかった。






(あぁ……そうか…俺は、死んだのか。)


そしてもう、母さんや父さん、妹と弟に会えないと思うと寂しさは増すが同時に申し訳無さでいっぱいになった。










母さん、父さん。先に死んじゃってごめん。親不孝な俺を許してほしい。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る