50 弟君のお友達事情


 きーこ。きーこ。


 ブランコに乗って俺は一人で漕いでいた。準備は万全。ピクニック用のレジャーシートを敷き、ピンで固定しているので風で飛ぶこともない。簡易テーブルやキャンピングチェアも用意した。


 ブランコのやや錆びついた音も何とも心地良い。チビの時に広いと感じていた公園が、今や少し窮屈に感じる。昔は姉ちゃんの後を追いかけていた。海崎先輩が姉ちゃんの手をつなぐのを見ながら。


 ただ、あの時は姉ちゃんの方が、ヤンチャな海崎先輩の手綱を握っていた。


 クソガキ団のなかで【雪ん子】は、少しオマセな、みんなのお姉さんだった。海崎先輩は男の子の意地で、姉ちゃんを守ろうと背伸びをしていたけれど。口もケンカも誰にも負けなかったのが姉ちゃんだ。怒らせたら誰も手をつけられない。ついたあだ名が、雪女。でも日頃は、物静かで優しいから自然と雪ん子と呼ばれるようになったわけなんだけど――。


(想像もしてなかったなぁ……)


 みんなにとっての姉ちゃん、それが下河雪姫だった。時に理性的にたしなめてくれて。危ないことは戒めて。でもイタズラをする時は、誰よりも大胆で。イタズラの度合いでいけば、断然、長谷川瑛真先輩が酷かったけれど。冒険、探検、時々イタズラ。大人達からつけられたあだ名が【クソガキ団】


 だから、その数々の戦績はお察しである。


 だからこそ、一番最初に姉ちゃんの発作を見つけたあの日――。


 俺の何かが崩れたのを今でも憶えている。姉ちゃんは、みんなの姉ちゃん。みんなを守ってくれて、みんなのためなら手間を厭わず、行動ができるそんな姉ちゃん。そう思っていたのに――。


「知らずに姉ちゃんを傷つけていたんだな、俺」


 口に出しても、答えるのは軋むブランコの音のみで。それでも声に出す。この気持ちを飲み込むことなんか、できなかったから。


 冬希兄ちゃんの前でだけ見せた姉ちゃんの素顔。あんなに甘える姿、誰も想像ができなかったと思う。


「そんなつもり、なかったんだけどな……」

「それはもう手遅れな話なの?」


「手遅れ、ではないと思う。姉ちゃん、優しいし。むしろ許さないって選択、姉ちゃんには無いから。ただ自分が許せない、それだけ。姉ちゃんの呼吸を俺が苦しめたのかもしれない、それが――」

「だったら。『ごめんね』って言ったらそれでいいんじゃない?」


 柔らかく微笑まれて、肩の重荷が下りるのを感じて――。

(……え?)


 どこかで聞いたことがある声に、俺は当たり前のように返事をしていたけれど。横を見れば、ブランコに乗る少女がこちらに視線を送りながら、ふんわり微笑みを浮かべていた。


 亜麻色の髪がブランコの動きに合わせて揺れていた。甘い香りが、鼻腔をくすぐる。


「……天音あまねさ、ん?」


 接点がそんなにない、中学校のアイドルが俺の隣にいる――その俺の心中を察して欲しい。

 ものの見事にバランスを崩して、俺はブランコから転げ落ちた。


「下河君?!」


 頭の痛みと目の前がチカチカしたかと思えば、今度は視界が真っ暗になって――反転した。





■■■





「え?」


 目を開けると、視線の上にはブランコがある。どうやら落ちた拍子に、少しの間、意識を失っていたらしい。見ると、頭部には柔らかい感触が――。見れば、天音が俺を心配そうに見ていた。

 思考が追いつかない。


「よかったぁ」


 半分、目に涙をためて。ずっと心配してくれていたのは嬉しいが、冷静になって天音が膝枕をしてくれていたことに気付く。慌てて、起き上がろうとした俺を、天音がぐっと押さえた。


天音あまねさ、ん?」

「痛いところはない? 下河君、ごめんなさい。私、どうして良いか分からなくて……。私が話しかけなかったら、こんなことになっていなかったのに――」

「落ちたのは俺がドジだから。むしろ、ずっと心配をかけさせてゴメンね」


 俺は心配をかけまいと、ゆっくり起き上がって、笑ってみせた。







 天音翼あまねつばさを一言で表すのなら、学校のアイドルという表現が一番的確だと思う。


 去年の秋に、親の都合でうちの学校に転校してきた。不思議な縁で去年、今年と一緒のクラス。でも特に接点はなかった。

 週末――金曜日に、また席が隣同士になった以外では。


 時々、彼女が俺に声をかけてくれたが、それは天音の優しさからだと思う。彼女を取り巻く、学校内の人気者たちと自分を見比べれば、分不相応なのは自分でもよく分かる。スクールカースト最下位と言わないけれど――明らかに、あんなキラキラした人達と俺じゃ釣り合わない、そう思う。


 そんな天音翼が、俺の隣でブランコを漕いでいたら、そりゃビックリもするでしょ。


 今まで遠くから眺めて、何となく憧れて。時々、天音と他愛もない話をして。それだけで満足をしていたのに。まさかこんな醜態を晒すなんて、思いもしなかった。


 レジャーシートに座って、ぼーっと空を見上げる。天音は、俺の隣でずっと俺に視線を送ってくるので、正直、気まずい。


「天音さ――」

「下河く――」


 二人の言葉が重なって、俺は思わず苦笑を浮かべる。と、今度はひるまず天音が言葉を紡ぐ。


「やっと、下河君と話せた」

「へ?」


 俺は目をパチクリさせる。クラスメートという共通点以外、彼女とは特に何もなかった気がするけれど――。


「私ね、ずっとお礼を言いたかったの。転校初日、緊張していた私を励ましてくれたでしょ?」

「あぁ。隣の席だったしね」


 かけた言葉は、月並の挨拶。それからまだ確保できていなかった教科書を見せる程度。その後、席替えになり、天音とはそれきっりだった。


「それに、学校を案内してくれた」

「先生にお願いされたからね」


 あの当時、もうバスケ部を退部していたので、クラスで一番暇人と思われていたのが、俺だったというだけの話だ。部活内でトラブルがあたっとか、ケガをしたとか、ラノベ主人公のような設定は一切無い。ただ姉ちゃんが、学校に行けなくなった。誰かが家にいなければ、姉ちゃんが消えてしまいそと感じた。理由はただそれだけで。


 天音はクラスのなかで――学校のなかでも憧れの女子として注目され、友達もたくさんできた。だから、転校当初のお節介を、あえて俺がやる必要がない。そこからは、外野から憧れの人として眺めているだけだった。


「私は嬉しかったんだけどな」

「へ?」


 天音の思いも寄らない言葉に、俺は思わず目を丸くする。


「転校して、はじめて友達ができたと思ったのに。それから……下河君はよそよそしくて。私のこと、嫌いになったんじゃないかって思って――」

「い、いや。だって、天音さんの友達に比べたら、俺なんか地味だし。そのちょっとアイツらが苦手というか……」


「私、頑張ったんだよ? 頑張って下河君に話しかけたのに。下河君、その時は笑って話してくれたのに、その後はすぐ距離を置くでしょ? 私、嫌われたのかなって、ずっと思ってた」

「だって、天音さんと話すと男子も女子も視線が厳しいんだよ」


 男子は主に、学内のアイドルと気安く話すことへの嫉妬から。女子からは身の程を弁えろという評価ジャッジで。正直、そういうのは面倒くさいと思う。こういう人の何気ない言葉が、姉ちゃんを傷つけたと思うと、なおさら距離を置きたいと思ってしまうのだ。


「下河君って、お姉さん想いだよね」

「え?」


 また予想外のことを言われて、目を丸くする。


「海崎さんと黄島君が教えてくれたの」

「あいつら……」


 海崎湊かいざきみなと黄島彩翔きしまあやとは、保育園からの腐れ縁だった。あえて説明する必要もないが、光兄ちゃんの妹が湊。黄島先輩の弟が彩翔。三人まとめて3バカと言われて久しい。まぁ長谷川先輩率いる姉ちゃん達【クソガキ団】に比べたらよっぽどマシだと思う。


「そういうところ含めて、私は下河君とお友達になりたいって、思ったの」

「え?」


 ますます意味が分からない。


「みんなが可愛いって言ってくれるのは嬉しいけど、私より可愛い子なんてたくさんいるし。海崎さんもそうでしょ?」


「いや、あいつは外見はそうかもだけど、真実は最強の裏ボスで、兄さん大好きブラコンだからね」


 ゲンナリして言うと、天音はクスクス笑う。


「女の子にそれ酷いから。それに、それを言うなら下河君はシスコンだって、二人とも言ってたよ?」

「あいつら……」


 憶えておけと思ったが、湊に逆に反撃されそうな未来しか見えない。よりゲンナリした表情を浮かべると、ますます弾けるように、天音は笑う。


 そういえば、と思う。天音が微笑む姿は良く見ていたが、こういう心からの笑いって学校では見るたことがない。なんだか、この笑顔が新鮮だった。


「お姉さん想いなのも、友達想いなのも良いと思うけどね。私も3バカに入りたいなぁってずっと思ってたの。あ、私が入ったら4バカか」

「天音さんにバカって言える人、いないからね」

「えー? わたしもバカなことして笑いたいのに」


 むーっと今度は頬を膨らませる。半ば笑みも溢しながら。清楚で可憐な学校のアイドルとしては、絶対見せない表情だった。


「アイドルがバカやって呆れられても知らないよ?」

「私、別にアイドルになりたいわけじゃないし。そういう風に言われるの、むしろ嫌いなんだよね」


「へ?」

「私、別にアイドルなんかじゃないから。勝手に決めつけないで欲しいって、ずっと思ってた。ただ下河君と友達になりたいだけだし。ねぇ下河君、私が友達じゃダメ? 私に話かけられるのは迷惑?」


「いや、ダメというか……クラスメートだし。拒む理由もないけど――」

「やった!」


 ニパッと子どものように笑う天音さんを見て、俺も笑みがつい溢れた。


「ところで、下河君。この後って、もしかしてピクニックでもするの?」


 と天音はレジャーシートを見やりながら聞く。


「子ども会の打ち上げこみで、ね。姉ちゃんが久々に外に出られて、みんなと会えたから」

「いいなぁ……」


 まるで物欲しそうな子どものような目で、俺のことを見る。俺は思わず狼狽えてしまった。完成されたお人形――誰もが思う天音翼とはかけ離れたその表情。コロコロと変わるその様に、俺がついていけない。


 子どもっぽくて、取り繕わないその表情は、まるで小悪魔だと思ってしまう。これが本来の天音翼なのかもしれない。

 俺はダメ元で、スマートフォンを取り出し、LINKでメッセージを送信した。





■■■





sora:姉ちゃん、あのさ。俺の友達がピクニックに参加したいって言っているんだけど。ダメかな?


yuki:私は問題ないよ? 冬君がいてくれるから大丈夫だと思うし。しんどくなったら、ちゃんと言うから。


fuyu:雪姫が大丈夫なら俺も問題ないかな。ただ無理はさせたくないから、雪姫がしんどそうなら、ちょっと抜けさせてもらうね。


yuki:冬君、心配しすぎ。今日は大丈夫だよ。


fuyu:雪姫は無理しすぎる傾向があるって、最近気付いたから。


yuki:その言葉は、冬君にそのままお返しするよ?


sora:あのさ……グループLINKでイチャつくの止めてもらえる?





■■■





「仲良しだよな、基本的に」


 呆れつつ、つい苦笑が浮かぶのは――結局、姉ちゃんと冬希兄ちゃんのそんなやり取りが、俺は好きなんだと思う。


 姉ちゃんを当たり前のように、笑顔を引き出す冬希兄ちゃん。兄ちゃんはきっと分かっていない。誰もが――それは俺自身も――どんなに頑張っても引き出せなかった、姉ちゃんの笑顔。それを冬希兄ちゃんは引き出していることを。


 だから、と思う。姉ちゃんが兄ちゃんを独占したいと思う気持ちもが分からなくもない。

 姉ちゃんが呼吸するためには、冬希兄ちゃんが今は不可欠なんだ。


「え?」


 俺のつぶやきを聞いた天音はきょとんと聞き返す。俺は小さく笑むことしかできなかった。言葉で説明するよりも実際に体験してもらって、被害者を増やしてやろう。我ながら、そんな黒い考えが渦巻く。あの甘い時間は、俺一人じゃ耐えられない。


「えっと、天音さん。もし良ければなんだけど、ピクニック一緒に参加しない?」

「……良いの?」


 ぱぁっと笑顔が咲く。今日、何度目だろう。そんな天音の表情につい見惚れてしまう。


「姉ちゃんも、冬希兄ちゃんも良いって言ってくれたからね。それに人数が多い方がこういうのは楽しめるでしょ」

「ありがとう、下河君!」


 衝動的だと思うのだが、天音が俺の手を握る。ブンブン手を振って。そんなに喜んでもらえると思っていなかったので、つい頬が緩んでしまう。


「ただ、これから買い出しに行くから、ちょっと付き合ってもらえたら助かるかな」

「付き合う?」


 いや、なんでソコで顔を赤くするの? 今日の天音は、テンションが高いから一人でオーバーヒートしているんだ、と。そう思うことにした。


「お弁当は姉ちゃんと黄島先輩が作ってくれているから、ソレ以外の飲み物とか、デザートを調達をしようと思うんだ」

「行くとしたら、コンビニ?」

「まぁ、そうだね」


 コクンと頷くと、天音はニシシとイタズラっ子を彷彿させる笑みを浮かべる。何かを思いついたらしい。アイドルと言うにはちょっと腹黒さを感じるが、俺はこっちの天音のほうが気軽に話ができて、断然好きだった。


「なに? 良いお店があるの?」

「うん。任せて。すごく良いトコ知っているから。下河君に紹介をするね!」


 満面の笑顔を咲かせて、天音は言う。そこまで言うなら天音にお任せして――そう思ったことを、10分後に後悔する俺だった。









「空君、いらっしゃい。あれ、今日は彼女さんと一緒なの?」


 天音に連れて行かれたお店は【cafe Hasegawa】だった。


 美樹さんが、俺と天音を見比べて、ニヤニヤしている。あの、そういう視線を送るのヤメてもらえますか? それから天音も、俺が知っている店だからって、あからさまにショックを受けなくて良いからね? ――あぁ、もう面倒くさいな!


「彼女じゃないです。クラスメート……友達ですからね!」


 俺がそう言うと、また不機嫌になるので、天音のことが本当によく分からない。


「あと天音さんは、俺がこの店を知っていたって落ち込まなくて良いからね。同じ町内会なんだから知っていて当たり前。ただ、デザートのチョイス、ココにするという発想がなかったから、むしろグッジョブだよ」


 主に経済的理由で除外していたんだけどね。美味しいけど、お値段はそれなりだから。

 天音は、そんな俺の言葉を聞いて、また嬉しそうに笑う。それが妙にこそばゆく感じた。


「今日は二人でゆっくりしていく感じ?」


 とマスターが顔を覗かせる。奥の席が空いてると視線を送りながら。


「あ、いや。今日は持ち帰りで。姉ちゃんが、久々に町内清掃に出られたので。子ども会有志メンバーでピクニックしよう、って話になったんですよ」

「へぇ」


 美樹さんは目を細めて、それからニッコリ笑った。


「やっぱり上川君のおかげ?」

「そう思います。冬希兄ちゃんの存在って、本当に大きいなって実感してます」

「かみかわ君?」


 話題についていけない天音は、首を傾げた。


「さっきから話に出てくる冬希兄ちゃん。不登校の姉ちゃんが外に出られるように、リハビリを一緒に頑張ってくれた人なんだけどね。昨日から姉ちゃんの彼氏になったの」

「あぁ、それが下河君が言っていた冬希さんなんだね。あ、でもよく考えたら、お姉さんとも会うんだよね? どうしよう、な、なんか緊張してきた……」

「なんで?」


 俺は目をパチクリさせる。天音はお構いなしに、髪や今日着てきた服をチェックしては、俺に不服そうな視線を向ける。


「なんで……って。お姉さんと会うんだよ? 弟の友達がこんなヤツってガッカリされたらイヤじゃん」


 おいアイドル……。普段の天音ならそこは「イヤです」とモジモジ、音量フェードアウトだろ? いつもの清楚さのカケラが微塵も無いんだけど?


「素の私はこんなだからね」


 俺の視線に気付いたのか、天音はさらに不満そうな表情を見せる。


「アイドルなんて、学校のみんなが勝手に決めつけただけだもん。下河君、素の私は引いちゃう?」


 いきなりそんなことを言われて、目を点にすることしかできず――自然と、俺は笑みが溢れていた。


「引くと言うか、全部、それが天音さんなんでしょ? 俺は……むしろ話しやすくて好きだけどね……」

「そ、そっか。好きか……」


 ふわりと天音が笑う。今日は何回、彼女に見惚れてしまうのだろう。


「えっと、何を持ち帰るのかなぁ、空君? 今日はいちご大福なんか作ってみたんだけど。それとも天音さんを空君が持ち帰っちゃうのかな?」


 ニヤニヤして美樹さんが言う。何てことを中学生に言うんだ! その発言がすでに指導対象だからね。見なよ、天音が顔を真赤にしているじゃないか。多分、俺も同じように顔が赤くなっていると思う。体が火照ってしかたない。


「それ未成年へのセクハラですからね」


 せめての反論も、無駄な抵抗でしかないと俺は知っている。

 美樹さんの満面の笑顔を見ながら、冬希兄ちゃんがカフェオレを淹れた後、さぞ大変だったんだじゃないかと想像する。姉ちゃん、恥ずかしがって、なかなか教えてくれなかったけれど。


 ――あのね、空。私ね、冬君と付き合うことになったの。


 姉ちゃん、本当に嬉しそうに笑うから。つられてこっちまで笑顔になってしまう。今日のピクニックで、どんな風に告白されたのか、しっかり問い詰めてやりたいところだ。


「お取り込み中、失礼」


 聞き覚えのある声に俺のゲンナリが止まらない。あえて視界に入れないようにしていたのに、その努力は徒労に終わってしまった。

 天音はわけが分からず、またしても目をパチクリさせる。


「上川君が、下河さんの彼氏? これからピクニック? そこのところもっと詳しく教えてほしいんだけど、空君!」


 キランキランさせた目で聞いてくるのは、【cafe Hasegawa】の常連客。兄ちゃんと姉ちゃんのクラス担任。文芸部顧問――夏目弥生、その人だった。弥生先生はブンブンと俺の手を握って催促をする。


 あの、天音さん?

 なんで、君はそんなに険しい顔で俺を睨んでいるんでしょうか?





________________

天音翼さん、心の声ダイジェスト


「下河君だ! 今度こそ、しっかりお話したい!」

「ブランコ、隣に乗っちゃった!」

「下川君、大丈夫? どうしよう、ケガしてたら? どうしたらいいの、どうするべき? どうしたら――」

「何ともなくて、本当によかった。でも膝枕スルーは、ちょっとひどくない? 下河君のバーカバーカ」

「下河君のお姉さんがちょっと羨ましいなぁ」

「やった! 下河君が友達って認めてくれた! ずっと友達になりたかったの。どうしよう、もう嬉しすぎるよ!」

「ピクニックするのかな? 良いなぁ、私も下河君と一緒にピクニックに行きたいなぁ」

「一緒に参加できるの? 嘘? これ夢じゃないよね?」

「とっておきのお店を下河君に教えてあげるんだ! 翼、女子は気合だよ!」

「友達をそんなに強調しなくても……。下河君は私と恋人に見られるの、そんなにイヤなのかな」

「このお店、知ってたんだ……。そうだよね、そうよね。同じ町内だもんね……」

「あぁ、もう。そうやって優しい言葉をかけてくれるから。下河君のバーカバーカ。優しすぎだよ、そういうトコロ大好きだから!」

「そうか、お姉さんに会うことになるんだ……。もっとオシャレしれくれば良かった……」

「下河君に好きって言ってもらった……恋愛の好きじゃないって分かってるけど、ちょっとコレ嬉し過ぎるよ!」

「下河君。年上のお姉さんと、ちょっと距離が近すぎるんじゃないかな? デレデレしてさ! 私にはよそよそしかったくせに、何だかズルい! ズルい! ズルすぎる! 下河君のバーカバーカ!」

 

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