第54話紅蓮の盾の誤算だらけの顛末5

「あんな状態で、マナにあんなことをするべきじゃなかった。気分に流されてしまえば傷付けると分かっていたのに箍が外れて…………だが俺はマナだからしたかった。それは分かって欲しい」




「神聖力のせいだね、気にしてないよ」と彼女に言われて自分を殴りたい気分だった。弁解がましく、そう言い募るが真に受けてくれたか怪しい。


 口付けをして本当に気にしてないのか?マナは平気なように言うが、良くも悪くもそれはそれで落ち込む。




 だから試した。神聖力の流されていない状態で、俺は抵抗されたら直ぐに離せる加減で彼女を抱き締めてみた。ビクリと身を強張らせるのが触れた部分を通じて分かった。やはり嫌なのだろうと体を離そうとした直前、安心したように深く息を吐き、ゆっくりと力を抜いて俺に凭れかかってきた。




 気を許してくれている。そう思っていたら、するするとマナの指が俺の胸を這う。教え込まれたように俺の体はそれだけでゾクゾクと期待に疼く。




「あ!お、怒ってるのか?」




 苛めるつもりかとそんな言葉が口から滑った。




「ううん、怒ってないよ」




 キョトンとしてマナが答える。彼女はただ治療するつもりで触れたのに、俺は何を考えているんだ。




「強引にしてしまって……………悪かった。嫌だったよな?」


「ううん、びっくりしたけど、い…………嫌じゃなか………った、よ」




 頬を染めたマナの口から転がり落ちた言葉。頭の中で反芻したら確信に変わった。


 マナも俺を好きでいてくれる。


 そう思うと嬉しくて彼女の肩に顔を埋めた。




「治療の間、俺がまた何かしでかさないようにこうしていてもいいか?」




 身動ぎをして戸惑っていたが、結局マナは観念したらしい。




「………………ノアがそれでいいなら」




 そう言うと、じわりと彼女の手から温かさが生まれる。




「っあ」




 また抗いようのない力に引き込まれる。




「今度は、っ、噛んでもいいか?」


「え、あ」




 襟の無い服は少しずらせば間から肩が見えるが、正確には首に近い部分にそっと歯を立てた。




「は……………んっんんん、ふ、は」


「あ!」




 快楽に任せて、むしゃぶりついた。マナが小さく悲鳴を上げる。


 この気持ちが快楽のせいでも、そうじゃなくてもいい。好きだという気持ちに変わりはないんだから。


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