第42話夜の帳
白い薄い生地の寝衣を着せられた私は、透けて見えそうな胸元を隠すために腕を組んでいた。正に明け透けな意図のチョイスをした侍女達には悪いが、私にその気はない。
すぐにせがまれるかと思ったのに、夜までよく堪えていたものだ。通された彼の寝室では、既にベッドに座りもじもじしている男が一人。
「遅いではないか」
「はあ」
皆雰囲気出しすぎではないだろうか。
「あの…………ジベルさん」
「ジベル様と…………いやベルでも良いぞ」
「……………ジベルさ・ん・、一つ取引したいのですが」
「ハアハア、早く言え」
相当我慢していたようだ。体は細かく震えている。
「ジベルさんは、私の神聖力を気に入ってくれていますね?」
「何を今さら」
「ずっと気持ち良くなっていたいですか?」
「ずっと?」
「そうです、しばらくの間。あなたが満足するぐらいずっと」
ことさらゆっくりと近寄ると、ジベルはこちらを見ながらズルズルと自らベッドの中央に移動した。
「気持ちいいの好きでしょう?」
「あっ」
トン、と肩を押すと抵抗なく横たわる男。
「わ、分かった。気持ちいいのがイイ」
誰も聴いたことのないような甘い声でそう言うと、ジベルは自分の前開きの紐を解いた。そして寝衣から腕を抜き鍛え上げた上半身を晒した。
「ダメとか、もうやめては無しですよ?もし言っちゃったら、私の言うこと何でも聞いてもらいます」
「何?」
傍に座る私を潤む瞳で見上げていたジベルだったが、さすが『鷹』なだけに私の言葉を受け流しはしなかった。鋭い目になり鼻で嗤う。
「ハ!取引とは、そういうことか。私がそんなことでアアアアアア」
彼の胸を爪で引っ掻くと同時に神聖力を流すと、たちまち仰け反り声を上げた。
「そうですか。取引もしてくれないなら、もうやめましょうか?ダメとかやめてと言わなければいいだけなんですけどねえ」
「あ、ま、マナ」
手を離すと、泣きそうな顔をするジベル。
「私はいいんですよ?どうせ私を兵器のように思っているなら治療なんてやめて兵器でいますよ」
昼間、彼とのやり取りの中で出さなかった『快楽』のカードをここで切る。
「そなたに選択権など、そ、それは」
握っていた片手を開いてロイドからもらった小刀を見せる。鞘を抜いてもジベルは止めなかった。ただごくりと喉を鳴らした。
彼の横腹に刃先を当てても、なまくらなので赤くなって擦り傷のようになるだけだった。怖々してみたが、血は見なくて済みそうで安心した。
「あ、はん、あ、あっ」
「こんなに気持ちいいの好きなんですから、嫌なんて言うわけないですよね?」
「あ、もっと!」
「ね?取引しましょう……………やめます?」
物足りないのだろう。ジベルは嗚咽混じりに呻き出した。
「あ、ひ……………分かった…………分かった、だから、は、早く」
「あとで前言撤回とかは無しですよ?もし反故にしたら……………分かりますね?」
「あ、も、どうでもいい、から、たのむ」
プルプルと腕を伸ばしたジベルが枕の下から何かを取り出した。
「これも、使ってくれ」
渡された物は、乗馬用の鞭だった。
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