word49 「宇宙戦争 止め方」①
僕は何事もなく、お隣さんの家から解放されると、自室に直行した。
いつもより遅い帰宅の理由を問い、ラップがかけられた夕食を勧めてくる母親は、目を合わせずに振り切った。何も話しかけてくるなオーラを放出した。理由を話せないくらい悲しかったり、腹立たしかったりする出来事があるんだとなりふりで主張した。
実際その通りだし――。
わざと大きな音を立ててドアを閉めると、黒いパソコンを取り出す。
その黒いボディを折りたたんだまま机に置いて、それを覆うように突っ伏してイスに座った……。
その状態で僕はまず、ぐっと目を絞った。あくびをしてもいないのに目尻が潤うほど強く。そのまま十秒ほど制止すると…………今度は全身の力を一気に抜いた…………。
それから1つずつ頭の中を整理していった。カードを順番に並べるようにゆっくりと。なるべく先のことは考えたくなかったから。
元々用意していたカードは全て破り捨てた。お隣さんとの接触からは予想外の連続だったのでまるで意味がなかった。
まずは今一度……黒いパソコンとお隣さんに関係がないことを確認する。先ほどお隣さんの家の地下室でも確認したことだが今一度、今日1日を振り返りながら……それが確実に確かである、確定中の確定であることを確信させた。
今日最も得たい情報だったから、やれるだけやるに越したことは無い作業だった。
もう十分だろというところまでそれが終わると僕は本題に入る。また目をぐっと閉じて、体勢を変えながら頭も切り替えた。
端的に言えば、これから僕がどう動くのが正解かという考え事である。
たぶん……そうなのだろう。まだちょっと信じられないし、向き合えないけれど……黒いパソコンとお隣さんに関係が無いのに、あの日深海魚を検索した時に黒いパソコンがお隣さんを登場させた理由は――
――僕に宇宙戦争が起こりかけていることを知らせ、それを止めさせるため。
これは僕の考えすぎで、勝手な決めつけだろうか。しかし今のところそれ以外に候補もない。今日一番のイレギュラー、あれを聞いた時に、一体なぜと考えながらあの場にいた僕は、驚くと同時に「これか」という思いも抱いた。
もしも違っていたとしても、だったら本当にただの気まぐれだったというだけ、間違っていたとしてもこれについては考えなければならないことだ。
だから、そうなのだとしたら……僕はこれから、今この瞬間からどう動けばいい……。
結局この黒いパソコンが何なのかについては、僕の中で有力な候補が1つ生まれた。きっと真相に近づける検索が1つ浮かんでいる。けれど今は近いうちに地球が無くなるなんていう冗談みたいな話に向き合わなければ。
まず考えるべきは……。
「このまま僕がこのパソコンを持っていていいのか……」
自問自答、僕は心の中にもう1人の僕を作って、話し合うように検討を始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます