何でも検索できるパソコンを手に入れました。ーBPCー
木岡(もくおか)
word1 「このパソコン 何」
ある日の夜、就寝の為に自室に入った僕は見慣れない光を見た。暗闇をぼんやりと照らす淡い光だ。
半分閉じていた目に力を入れ、手だけを部屋の中に伸ばし、蛍光灯のスイッチを入れてみる。
すると、机の上に現れたのはパソコンだった。
黒い色をしているノートパソコン。ディスプレイがあってキーボードがある。近づいてみたが、見間違いではない。
黒いマウスもセットだ。一見したところ何の変哲もない、ごく普通の代物。
謎なのは何故そんなものが自室の机に置いてあるか、ということである。
僕は自分用のパソコンを持っていない。まだ高校2年生なので親からスマホは与えられていても、パソコンは与えられていない。だから、昨日まで無かったパソコンがここに置いてあるのはおかしいのだ。
もう一度顔を近づけてよく見て見る……。そうしてみても、やはり特におかしなところはない普通のノートパソコンだった。画面は起動したばかりのパスワード入力画面のようで、黒い背景に白色のワードボックスが中央にぽつりといるだけ。
親のパソコンはこんな色だったか。いや違う。僕の家には黒色のパソコンはないはずだ。友達の家でも親戚の家でもこのパソコンは見たことが無い。誰かがここに間違えて置いていったという線は薄いだろう。
じゃあもしかして僕へのプレゼントか。大きくなってきた僕へ親からのサプライズプレゼントだろうか。
少し嬉しい気持ちが顔を見せる。しかし、誕生日もクリスマスも今日からはまだずっと先だ。だとしたら……。
「このパソコン 何だ」
僕は独り言でぼそりとつぶやく。
するとその時パソコン側からコンタクトが取られた。
「コノパソコン ナニ ケンサクワードハコレデヨロシイデショウカ」
「え」
車のカーナビみたいなイントネーションで女性の声がする。僕はまた画面に顔を近づけて何が起こったのかを確認した。
見ると、中央のワードボックスに「このパソコン 何」と入力されている。
あ、何かAIのヘルプ機能みたいな感じのやつか――。パソコンの知識が乏しい僕はそう思った。そして機械音声の言う通り軽く操作させてもらえば謎のパソコンの正体に辿りつける気がしたのでパソコンの前に座る。
この場合そのままEnterキーを押せばいいよな。それしかない。ほいっと。
弾むようにキーを叩く。そのほうが気分が良いので2回。これでユーザーネームとかが見れたら話は早い。
ワードボックスが消えて代わりに画面中央にグルグルが表示される。スマホでも動画を見る時なんかによく見るロード中のグルグルだ。
最近のパソコンは進化したんだな音声認識とは――。腕を組んで数秒間グルグルが消えるのを待った。
そして、次に画面に表示されたものを見て僕は眉をひそめる。
予想外にそこそこの長文がそれだけで画面に表示されたのだ。
「このパソコンにはありとあらゆる全ての疑問の答えが入っています。あなたは気になる言葉を入力することでその答えを知ることができるでしょう。しかし、それにはルールがあります。答えを検索することができるのは1日に1度だけです。1日に1度であればどんな質問にも答えることができます。宇宙のことでも、未来のことでも。そう、このパソコンならね。」
英語を翻訳したかのような文で構成された文章。内容を読み解くと最初に抱いた疑問はより深いものとなった。
「いや……何だよこのパソコン」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます