第37話腰痛持ちなのです

やっとラケルと話せて、婚約まで出来た。


しかし、あの元婚約者はおかしすぎる!


ラケルの婚約破棄の書類も、何かあった時の為に俺が預かることにした。




大事なラケルに何かあると困るのだ。




そして、そろそろ寝ようと思った時にラケルがやって来た。




「ラケル、どうしたんだ?」


「お茶をお持ちしました」




何故夜にラケルが?


しかも、ラケルも既に寝支度を整えた姿じゃないか。




「…マーカスはいないのか?」


「それが、私にお茶を持って来て下さって、そのタイミングで腰が痛くなりまして…クロード様のお茶は私が持って来ました」


「…マーカスの腰が…?」


「演技臭かったですけど」




マーカス…一体何を考えているんだ…。




「ありがとう。頂くよ」


「良ければお茶も淹れますよ」


「…それは大丈夫だ。もう夜遅い。部屋には入らない方がいい。危険だ」


「危険ですか?」




俺は男なんだ。


そんなナイトドレス姿で来られたら…色々我慢があるんだ。




「まぁ、では早く結婚して夫婦にならないといけませんね。そしたら、寝る前にお茶を淹れてあげますね」




雷が体を走るのを我慢している気分だった。


可愛い過ぎる。何故そんな可愛いことを言うんだ!




「…ラケル…」




せめてキスをしたい衝動が湧き立ち、ラケルを抱き寄せた時、マーカスが走ってやって来た。


どこからどうみても、腰痛はない。


やっぱり演技か!


何を考えているんだ!




「クロード様!同僚の騎士が来られました!」


「…マーカス、腰はどうなんだ?」


「私は腰痛持ちなのです。もう年ですから」




シレッと言うな!


腰痛持ちなんて初めて聞いたぞ!


二人っきりにしたいならこのタイミングで来ないでくれ!




しかも、同僚の騎士が来たということは…。


もう言わなくてもわかった。


ハロルドが、ラケルの平屋に来たんだ。


やはりラケルを俺の邸に連れて来て良かった。




帰りに騎士団に警備を要請しておいて良かった。




「ラケル…」


「は、はい、何でしょう?」




赤い顔のラケルを抱き寄せたまま、体が密着しており、ラケルは俺の腕の中にいた。


マーカスは、やりましたね!というような顔になっていた。


そのガッツポーズみたいな握り拳はやめてくれ。




「…ハロルドを捕まえたんだと思う。少し、ハーヴィ伯爵の邸に行って来る」


「では、私も…」


「君は邸にいてくれ」


「いけません。私の問題です。私は行くべきです」


「ラケルの問題は俺の問題でもある」


「それでも、私も一緒に行きます」




ラケルは譲らないという強い眼だった。




「わかった…一緒に行こう」




そして深夜だが、ハーヴィ伯爵邸へと向かった。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る