第31話杖はもういらない
「ハロルド!よくもここまで醜態をさらしてくれたな!」
ハーヴィ伯爵の怒りにハロルド様は怯えていた。
アーヴィン様は、やってしまいましたね、と言わんばかりにため息をついていた。
「ち、父上っ!これは何かの間違いです!」
「間違いだと!?お前が、ラケルに嘘の不貞を押し付けようとしたことか!?あまつさえ、慰謝料を要求しようとしたことか!?」
「何かの行き違いがっ!」
「黙れ!この馬鹿モンが!!」
ハーヴィ伯爵は勢いのまま、杖をハロルド様に投げつけた。
ハロルド様は、ヒィッ!とハーヴィ伯爵の剣幕に怯えていた。
ハロルド様は真面目なハーヴィ伯爵に昔から頭が上がらないから、この怒りはハロルド様にとってかなりのダメージだろう。
ハーヴィ伯爵は怒りを飲み込むように、お茶を飲んだ。
「ラケル、クロード殿。ハロルドが申し訳ないことをした。後日お詫びに伺おう」
ハーヴィ伯爵は立ち上がると、次はメイベルと両親を見た。
「ジェレマイア伯爵。ハロルドと婚約の書面を交わしたとはいえ、メイベルとの婚約は考えさせて頂きたい」
「…はい」
両親はメイベルとハロルド様との結婚はもうないと確信しているようだった。
「行くぞ!アーヴィン!」
「はい。父上、杖を…」
「そんな汚らわしい杖は捨てろ!」
どうやら、ハロルド様に投げつけた杖はもう汚らわしいものらしい。
アーヴィン様は拾った杖をお父様に差し出した。
「ということで、もういらないそうですので、薪にでもしてください」
淡々と金具のついた杖をお父様に渡し、アーヴィン様はハーヴィ伯爵の後について行った。
私達に、失礼しました。と礼をとり。
ハロルド様は、おぼつかない足で無言で、出ていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます