普通の人
「目覚めている」陰謀論者はそうでない一般人のことを<羊>と呼ぶことがある。
彼らはごくごく普通の人間だ。職業も年代も様々だが、どこにでもいる。金儲けのために怪しいセミナーを開いたり、SNSで暴れたりなんかしない。現実世界とインターネットにそれぞれ居場所を持ち、平穏に暮らしている。しかし、陰謀論を信じてしまっている。エセ医学や世界緊急放送、ネサラゲサラ(世界スケールの徳政令のようなもの)にこの手の陰謀論者が多い。
信頼できるリアルの知り合いとだけ繋がっていても、SNSでは何かの拍子にデマを目にすることがある。
出所の知れないショッキングな写真と、それを説明する短くも悲しいストーリーに心を揺さぶられたり、憤りを感じたことはあるだろうか。「知り合いの看護師がコロナワクチンを打った後に亡くなった。彼女はまだ20代だった」という投稿が自分の知り合いを通して流れてきたことはあるだろうか。そんな投稿を拡散したことは?
インターネットサービスには、ユーザーが興味関心を持っているコンテンツを優先的に表示する機能がある。YouTubeの閲覧履歴をもとにしたおすすめ機能が有名だ。つまり、インターネットの利用を続けていると、一度興味を持った情報と同じものを延々と見続けることになる。それが陰謀論だったら最悪だ。
端末に閲覧履歴を残さないように設定をいじったり、シークレットモードを利用することである程度対策できるが、そこまで気を配る人間は多くないだろう。
そして、陰謀論者は総じてインターネットの使い方が下手だ。
陰謀論界隈を観察していると、平気で本人や我が子の顔、本名、声をアップしたり、大通りや施設で撮影した写真を人の顔をそのまま映した状態で投稿していたりする。はっきり言えば、情報リテラシーが著しく低い。
「各パスワードを自動生成にしているとグーグルアカウントが破られたときにすべてのパスワードが突破される」というブログを引用して「怖いからグーグルは使うべきじゃない」と言っている陰謀論者を見たときはさすがに驚いた。
陰謀論者は自分のことを陰謀論者だと思っていない。陰謀論者にとっての陰謀論は陰謀論でなく疑いようのない真実だからだ。だから、筆者を含め、誰もがどこかで陰謀論を信じてしまっている可能性がある。
さんざん陰謀論を取り上げてきたこのエッセイでこんなことを言うのもおかしい気がするが、陰謀論者を馬鹿にするとよくない。万が一陰謀論にはまってしまったとき、これまで嘲笑ってきたものに自分が成り下がったと認めるのは辛い。
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