第18話 渚の思惑

美咲達は次の日学校に着くとすぐに杏奈ちゃんに声をかけに行った。


俺も前世に友達だったうちの2人が話していたので声をかける。


「宿泊研修の班ってもう決めた?」


「まだ決まっとらんよ〜」


「俺も」


「じゃあ、俺らと班組まない?」


「よかよ、お前もいいやろ?」


「おう」


「よし、決まり!」


「俺らってことは他にもおると?」


「あー、あそこにいる3人」

そう言って美咲達を指さす。


「マジか、あの子達か!」

ちょうど美咲達も話し終わったようでこっちに来る。


「こうすけ、杏奈ちゃんと由依ちゃんだよ」


「よろしく!」

杏奈ちゃんの他にもう1人ゲットしてきたみたいだ。

紹介されたので、こちらも紹介する。

これでちょうど8人になる。

ちなみに男友達2人の方言が強いのは市内でも一番方言の強い地域出身だからだ。




昨日の流れで、自宅に帰る前に渚の家に寄ることになっていた。


「昨日はどうだったー?お楽しみでしたね?」


「いやお楽しみはしてない。楽しかったけど」


「えぇー残念、せっかく2人にしてあげたのにー」


「渚は3人で居たいから付き合ったんじゃなかったっけ?」


「それはそうだけどねー、流石に私も2人のなかに割り込んだ自覚はあるわけで。」


「私だってを利かせようと思ったんだよー?」


「そんな優しい心を持っていたとは」


「えーひどーい!なんでそういうこと言うのー?」

渚が泣くフリをする


「泣き真似ってわかってるぞ」


渚が顔を上げると、そこには本当に涙を流しているのが見えた。


「あ、いや、ごめん、ほんとに泣いてると思わなくて」

失敗した。いつもの泣き真似かと思っていた。


「へっへっへ、こんなんで私が泣くわけないじゃん」

演技力も上がっていた。女の子は怖い。


「まあそんなことはさておき、プレゼントあるんだー、これ!あげる!」


「そんなことはって・・・まあ、ありがとう」

美咲と示し合わせてたのかな?


「・・・受け取ったね?お願い事聞いてね!」


「・・・」


こいつ・・・


「美咲のこと大事にしてね?無理やりとかしたら許さないから」


「その代わり私がなんでもしてあげるから」


「ん?なんでもって?」


「そう、なんでも」


「ふーん、わかってるよ、言われなくても大事にするよ、渚もね」


「ふふっ、まあ昨日何もしてないみたいだから信用してるけどねー!」


「え、私がなんでもするって言ったのに何もしないのー??」

そろそろ日も暮れてきたので帰り支度を始めると渚が言ってきた。

・・・こいつ何をして欲しかったんだ?


「いや、こう言うことはゆっくりな」


「えー!ヘタレー!」

ヘタレではない最初は美咲がいいだけだ。

それにここで手を出そうとしても、勘でしかないが多分拒否される気がする。

この子の言うことを素直に信じるのはあぶない。


「じゃあ、ちゅーは?」

いや可愛いな!?心が揺れそうになるのを抑えながらキスだけする。


「・・・美咲が1番でこうすけが2番なだけで私は2人とも好きだからね?」


「わかってるよ、俺も好きだよ」




宿泊研修当日


学校でバスに乗り、宿泊施設へ向かう。

初日は山の中にある宿泊施設に向かい、レクリエーションと、班で協力して夕食作りをする。


「やっとついた・・・!」

一番後ろの席で俺、美咲、渚、聖奈ちゃんの並びで座っている。

俺は普通の車は大丈夫なんだが、バスは半分くらいの確率で酔う。

少し気分が悪かったので、ずっと隣の席の美咲ちゃんに肩を借りて寝ていた。


「こうすけ大丈夫?」


「うん、美咲のおかげでもう大丈夫だよ!肩ありがとう!」


「良かった〜!どういたしまして!頼ってもらえるのもちょっと嬉しかったし!」


「そういえば、こうすけ!なんで聖奈はちゃんづけで美咲ちゃんと渚ちゃんは呼び捨てなのー?ずるいー!」

2人の場合はきっかけがあったから呼び捨てだったが、聖奈ちゃんにはその機会がなかった。

中身年齢的に15歳ほど年下の女の子だ。自然とちゃん付で呼んでしまう。


「じゃあ聖奈ちゃんも聖奈って呼ぶね!」

そろそろ聖奈とも距離を近づけていかないとな。


「やったー!なんか、大人になった感じがしていいね!」


レクリエーションは施設の体育館を借りて班対抗のドッチボール大会だ。

自慢じゃないが前世でもボールを避けるのだけは得意だった。


「きゃー、当たっちゃったー」

美咲ちゃんにボールを当てるとは許せん男だ。

全力で投げ返す。

1年鍛えたおかげか、しっかり仇を取るかとができた。



夕食は班ごとにカレーライスを作る。

美咲ちゃんの母さんは料理教室の先生をしているので、美咲ちゃんは料理がうまい。


「美味しいね!」


「こうすけが切ったにんじん変な形してるー!」


「そんなことないよ!」

渚め、俺が全身全霊をかけて切ったんだぞ


「でも美味しいよー!」

美咲ちゃんは優しい。

夜は大浴場に入り、男子3人の部屋にみんなで集まってトランプをして1日目は終了。




2日目


今日は朝起きて全員で体操をした後、朝食を取り、トレッキングに行くことになる。

1時間ほどかけて歩き、湖のあるレジャー施設に向かう。


「疲れた」

杏奈ちゃんは歩くのが苦手なようで遅れ気味だった。


「荷物持ってあげるよ」


「悪いよ、大丈夫」


「そんなことないから、ほら」

と言って杏奈ちゃんの荷物を受け取る。

いや自分の荷物でも結構精一杯なんだけどな、ここは仲良くなるチャンスだ。

痩せ我慢をする。

オタク友達2人も遅れ気味だったが、無視することにする。


レジャー施設は、乗馬体験や、アスレチックで遊ぶことができる結構本格的な場所だ。

2人分の荷物を持ってバテ気味だった俺は、荷物もないのにバテていた杏奈ちゃんと休憩する。


「疲れたねー」


「ねー、荷物持ってくれてありがとう」


「大丈夫だよー」


「浩介くんは優しいね」


「でしょー、誰にでも優しいわけじゃないけどね」


「美咲ちゃん達とはずっと仲良いの?」


「そうそう小学校から一緒なんだよ」


「へー、そうなんだ」


「美咲達とは仲良くなった?」


「うん、班決めてからよく話すようになったよ」


「そっかー、いい子達でしょ?」


「うん、話しててすっごい楽しい」


「もう大丈夫だから、そろそろみんなのとこ行こっか!」

そう言って体力はもう回復したようで、立ち上がる。


「そうだね!」

焦らない、少しづつ仲良くなれればいい。


施設に戻り夜はキャンプファイヤーをして寝た。

次の日の朝にはもうバスに乗って学校に戻る。

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