Scene08 イツワリのカガクシャ

第69話 アインとツヴァイン

 チクタク。

 チクタク。

 時計の音がなる。

 ゴーンと鐘が鳴る。


「『あ……』ですか。

 我ながら死んだふりはつらいものがありますね」


 白銀がそういって笑う。


「それにしても薄々気づいてはいましたが……

 僕はクローンなんですね」


 白銀はため息を吐く。


「このアトラク=ナクアの力も紛い物」


 白銀は目を赤くさせる。


「気づいたか。

 愚かな蜘蛛よ」


 そういって一匹の犬が現れる。


「犬……ですか?」


「はじめまして、こんにちは。

 あるものはこう呼ぶ。

 アースベルガー」


「アースベルガーさんですか?

 今は貴方と戯れている余裕はありません」


「愚かな蜘蛛よ。

 汝は資格を得た。

 テオスに入らぬか?」


「テオス?」


「ベルゼブブさまとモトフミさまが新たに作る組織だ。

 アインとツヴァイン。

 それらが手を組み……

 この世の全てを手に入れるのだ」


「そうですか、それもいいかも知れませんね」


 白銀はそういって小さくうなずく。


「では、參ろうか。

 我が国へ……」


 アースベルガーがそういって白銀とともに姿を消した。


 世界が変わる。

 世界が終わる。


 その音色を奏でるのは誰か……

 その音色を育てるのは誰か……


 世界の滅亡にカウントダウンは存在しない。

 突然0になる。


 それが死。

 それが生。


 ぐるりとぐるととぐるりと変わる。


「……ふぅ。見ちゃった」


 パンツをかぶった少年がそういった。

 少年の名前はハニー・キラー。

 歳は3歳。

 少年の能力は女の子殺し。

 女という存在では絶対に勝てない能力を持っている。

 ヒーローではない。

 ミストフォロスに所属する傭兵だ。


「見ちゃった見ちゃった見ちゃった。

 白銀死んでないよ白銀。

 きゃは!楽しい楽しい戦争が始まるよ!」


 ハニー・キラーがそういって姿を消した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る