第30話 女子高生を好きにしていい券

「痛そうだね」


 少年がそういうと老人が笑う。


「そうじゃな。

 かわいそうだから殺してしまおうか」


 老人の言葉など無視して少年は女子高生に近づき足に触れる。


「いや!!!殺さないで」


 女子高生が、大きな声を出す。

 周りもそれに気づき少しパニックになる。


「大丈夫だよ」


 少年が笑う。


「え?」


 少年の声に少女は少し安らぐ。

 怖いはずだった、だけどなぜか安心感が湧いてきた。


「痛いの痛いの飛んでけ」


 少年はそう言って少女の足を撫でる。

 痛みが消えた。

 それと同時に足が治った。


 女子高生は、驚いていた。

 足だけじゃない、靴下や靴まできれいに治っている。


「何度見てもその能力は凄いのう」


「うん」


 少年はうなずく。


 少年の名前は、木村 裕也。

 17歳、現在無職である。


「ってか、フィサフィーさんもしつこいよ」


 そして、老人の名前はフィサフィー。

 アインの中の組織。テオスの幹部である。


「主の力があれば、世界を我が物にできるからなぁ……

 その女子高生を好きにしていいから我が物にならぬか?」


 フィサフィーが笑う。

 笑っているはずなのに怖い。

 女子高生は、恐怖した。

 ただただ恐怖した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る