第19話 報酬は30万ドル

 ヒーロー協会の男は、サングラスをクイッと人差し指で上にあげた。


「その少年を引き渡して貰えますか?」


 するとセロが言う。


「どうしようかな」


 するとヒーロー協会の男がため息をつく。


「そんな意地悪なこと言わないでくださいよ」


「で、この人を引き渡すにはおいくら万円もらえるのですか??」


 オトネが、そう言うとヒーロー協会の男が小さく笑う。


「まぁ、10万ドルってところでしょうか?」


 するとオトネの目の色が変わる。


「10万ドル!えっと1ドル100円として……」


 オトネがそう言うとセロが言う。


「それって最低賃金だよね?」


「そうですね。

 でも、もらえるだけありがたいと思ってください。

 貴方は非公認のヒーローなのですから」


 ヒーロー協会の男がそう言うとセロが言葉を返す。


「僕は、ヒーローじゃないよ」


「そうですね。

 だったらなおさら、お金がもらえるだけありがたく思ってください。

 彼には聞きたいことが沢山ありますから……」


 ヒーロー協会の男が、そう言って再びため息をつく。


「うるさいなぁ」


 するとゆっくりと優が立ち上がろうとする。


「ん?まだ動けるだ?」


 セロが、優に向けて人差し指を向けるがそれよりも早くヒーロー協会の男が優を銃で撃った。


「あ……」


 優は、その言葉と同時に胸を押さえる。


「おやすみなさい」


 ヒーロー協会の男はそう言って銃を再び収めた。


「殺したのかい?」


 セロが尋ねるとヒーロー協会の男が首を横に振る。


「いえ、彼には聞きたいことがたくさんありますので殺しません。

 ただ能力は封じさせてもらいました」


 ヒーロー協会の男がそう言うとセロの方を見る。


「そっか。

 それが君の能力なのかい?」


「さぁ?私は自分の能力についてはあまり語りません」


「そっか。

 じゃ、30万ドルでどう?」


「3倍ですか?」


「うん。

 プラス10万ドルは口止め料と思ってよ」


「10万ドル?

 プラス20万ドルの間違いではなくてですか?」


「僕とオトネの分だよ」


「貴方に10万ドル、オトネさんに10万ドルですか?」


「そう、ヒーローが負けて悪が勝つだなんて格好悪いだろう?」


「そうですか……

 そうですね」


「あと怪我人の応急処置は完了しているけど、その分はサービスしておくからさ」


「応急処置?

 ああ、そうですか、止血してくれたのですね」


 ヒーロー協会の男は、そう言って近くに倒れているヒーローの腹部を見てそう言った。


「見ただけでわかりますですの?」


 オトネがそう言うとヒーロー協会の男が言った。


「はい。

 そういうのは日頃の鍛錬で鍛えていますから……」


「む?ちょっと待って、私の分はないのか?

 私に10万ドルは貰えないのか?」


 清空がそう言うとセロが笑う。


「それはそうでしょう。

 清空さんはミストロにいますがヒーローの資格持っているじゃないですか」


「うむ……

 そうだな」


「30万ドル……

 まぁ、上に相談してみます」


 ヒーロー協会の男がそう言ってうなずくとセロは小さく笑う。


「うん、よろしくね」


「セロさんも、言うようになりましたね」


「うん、僕はヒーローじゃないからね。

 言いたい放題やりたい放題さ……」


「では、彼は回収しますね」


 ヒーロー協会の男がそう言うと部下を優の体に手を触れた。


「じゃ、またね田中さん」


「はい、またですセロさん」


 ヒーロー協会の男、田中が小さくうなずくとそのまま姿を消した。

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