第22話 - 人間に戻る日2 -
「よーし、あと1時間くらいかー、最後にこのタワーツリーに行こうよー」
「おー!」
相変わらず怜が先導し、美瑠がノリよく続く。
「地上を満喫したいのに結局上にいくの? まあいいけど」
「TVで見た所だ、初めてだなあ」
「じゃあ自由行動かな? 12時の10分前に入り口に集合しよう」
「てか天使ちゃんさー、1日とか言ってて数時間しかないじゃんー」
これでしばらく人間とはお別れだ。各自ラストを堪能しようという流れになる。翼も久々に自分の足で動けた人間を満喫していた。鳥魂を集めて、試練を達成すれば、この病気を克服した体をモノにできるだろう。
「美瑠は階段で行こ!」
「あたしはいきなりてっぺん行ってー、そこから降りてこよー」
「うーん、黒依ちゃん、順番に一緒にいこうよ」
「そうね」
約一名、ありえないことを言っているが、もはや定番なのでスルーされる。元の友人たちよりお互いの仲に深い繋がりを感じていた。
美瑠はダッシュで延々続く階段を駆け上がっていく。あっという間に見えなくなった。怜はいきなり最上階へ行くようだ。翼と黒依は途中の展望台へ立ち寄り、施設を見て回る。
タワーをそれぞれの形で堪能し、やがて帰りの集合時間が近づいてきた。
「よっすー、ん? あとは美瑠っちだけかー」
12時の15分前、すでに3人が集合し、一階の階段付近で美瑠の到着を待っていた。
「いきなり鳥に変化しちゃうと周りもびっくり……、するかどうかは分からないけど、全員揃ったら、無難に人の気の無いところに移動かな?」
ブーン ブーン バタンッ
「ん? なんか外が騒がしいね」
「おお、黒塗りの車軍団にスーツ男達。撮影でもやってんのかー?」
辺りの客も一方向を振り返っている。黒服スーツマン達が数人、入口から一斉に内部に入って来た。
!!
「あれは……! みんな! 逃げて!」
「おー?」
「早く! 私の追っ手よ!」
「えぇ!?」
血相を変えて黒依が叫ぶ。エレベーターのタイミングが悪いので、まだ来ていない美瑠以外の3人は、慌てて階段を上がり始めた。
ダダダッ……!
全力で階段を駆け上がる。
「……マジ存在したのかよ黒服ー。ていうか、上に逃げても意味なくねー?」
「……だ、だよね、でも入口に方向に行ったら捕まっちゃうし」
「抜け目ない連中よ、外に出てももうスキはない!」
▼
「スミマセン! スミマセン! 通して!」
複数の黒服が客を分けながらぞろぞろ侵入してくる。階段、エレベーターあらゆる移動モノを潰しながら、一斉に上がってくる。
ピーンポーン
『ご来場のお客様のお呼び出しを申し上げます。烏越黒依様、いらっしゃいましたら――』
「おおっ黒依! 呼んでるぞ! 悪い事したのか!?」
かなり上から美瑠が降りてきていた美瑠が声を掛けてくる。
「お呼びでないわ! 美瑠、上に行って! 先行してエレベーターを確保して!」
「え、なに急いでるの!?」
わけわからないが3人とも焦りの表情で上がってきているので、美瑠もUターンして言われた通りにする。
「お嬢様ー!」
だいぶ下のほうから声が聞こえてきた。
ダダダダダダダダ!
尚も急いで階段を駆け上がる。上方ではエレベータの位置を見ては階段へ戻り、素早く駆け上がる美瑠が先行しているが、確認動作の度に上がる3人との差が詰まる。
「黒依っちの命令なら聞くんじゃないのー?」
「お爺様の命令を100%しか聞かないわ」
「なんでバレたんだろ?」
――――おそらくさっきまでいた街の防犯カメラね。そのくらいはやってのける連中だ。
「あたしたちだけ逃げて、あとでこっそり迎えにいくってのはー?」
「馬鹿いわないで、あと数分で鳥になるのよ?」
「――!」
「おーい、エレベーター確保ー!」
「よし!」
美瑠が確保していたエレベーターへ後の3人も乗り込む。
「えっと、最初の黒服がやってくるエレベーターは……」
「けっこう時間かかると思う、確認の度に、狙ってないエレベーターのボタン押しまくってきた!」
「すごい迷惑だけどナイス!」
「で、どうするの?」
「どこかに身を隠してやり過ごす。4人が入れるスペースを探しましょう」
「そんなのあるかー?」
キンコン。一斉にエレベーターから飛び出る。
「スペースったってさー」
「最低でも、黒依1人隠して、他3人は女子トイレに籠城しよう!」
「無理よ! 手が無くなったらドアが開けられないかもしれない!」
「じゃあどうすんだよー」
「――みんな、聞いて!」
他3人が立ち止まり、翼を見る。
――――!
▼
4人は展望台まで逃げていた。
「お嬢様ー!」
「来たよ!」
「よし、行こう!」
!?
「君たち! 何をやっている!?」
警備員が叫んで走ってくる。
4人は防護柵を乗り越えデッキの先端へ向かう。
「戻りなさい!」
「お嬢様!」
警備員と黒服が寸でのところまで迫る。
そして――――
4人は手をつなぎ――――
――――飛び降りた。
「うわああああ、飛び降りだあああああ!」
来場客が絶叫する。
「なんてことだ!」
黒服や警備員も柵を乗り越え、身を乗り出して下を見る。
「え?」
しかしそこには――
何も無かった。
そして、遥か遠くの前方には、
飛び去る、4羽の鳥がいた。
▼
-数分前-
「――――みんな、聞いて!」
他の3人が立ち止まり、翼を見る。
「……屋外の展望台から飛び降りよう」
「はあ!? 何言ってんのー、鳥じゃないんだよー?」
黒依がハッっとして時計を見る。11:58――
「天使さんは、12時ぴったりに鳥に戻るから気を付けろって言ってた。ギリギリまで引きつけて、飛び降りよう」
「待ってよ! でもジャスト00秒でピッタリ戻るって保障はないよ!? ズレて落ちたら即死だよ!」
「……」
「――私は、翼の提案に乗るわ。あの家に戻ることなんて、どのみち死んでいるも同然だもの」
「黒依!?」
「よし、あたしも行くー。そのほうが、捕まるよりも楽しそー」
「レ、レイ……」
「美瑠ちゃん、どうする?」
「……。仲間を、信じるって言った……! ここで曲げたら、もう自分を許せない!」
「よし、行こう!」
▼
屋外へ出る。
「怜、端末でカウントダウンしてちょうだい!」
「もうやってるー、あと15秒ー」
「警備員がいるね、柵を乗り越えるのはギリギリまで待とう」
「残り5秒で柵を乗り越えるわよ」
「黒服来てる、かなりギリギリかも!」
「お嬢様ーー!」
「来たよ!」
「よし、行こう!」
「皆、バラけないように、手をつなごう!」
翼、怜、黒依、美瑠で並び、手をつなぐ。
そして、飛び降りた。
空中、ゆっくり足がお互いから離れていき、
そして、翼と美瑠の手が繋がり、輪になった。
落下してゆく。
鳥の速度に慣れたせいだろう。その落下速度はあまりにゆっくりに感じ、お互い顔を見合わせ苦笑した。この程度なら、落ちたところで鳥ならどうということもない。しかし人間なら確実に死ぬ。それほど人はもろいのだろう。
11:59:59――
12:00:00――
突如4人が光に包まれる
!
「おお!?」
そして、それぞれの鳥の姿に戻った。
「戻った!」
「よし! 飛翔!」
一斉にぐんっ! と上昇し、タワーから離れていった。
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