第19話 - 猛禽類、最速2 -
「どうなのハヤト!?」
ツバサへ会心の蹴り技を浴びせ、落としたハヤトに対し、シマコが手ごたえを聞くと、ハヤトはニヤっと軽く笑みを浮かべた。クロエに聞こえないように耳打ちする。
蹴りの手ごたえは十分だった。だがツメは入っていない。致命傷は与えられてはいない。止まったセキレイが下に救援へ向かえば、カラスを2対1で仕留める。セキレイがこちらに加勢に来たら、どちらかが囮をやって一気に急降下して、まずツバメにトドメを差す。
ハヤブサコンビ、ハヤトとシマコは現状を把握し、端的に作戦をまとめ上げる。それはまさにクロエが一瞬で想定した展開だった。
――――まずい! 今日の作戦はツバサが常に安全圏から攻撃できるのが前提、そのツバサが攻撃できないどころか、落とされてしまうとは。スクリーンプレーを見抜けなかった、私のミスだ。
ツバサが致命傷でなければレイを呼び戻して、2対2でなんとか降下させないよう食らいつく。ツバサが重症ならレイを救援に向かわせねばならない。このオスは獰猛さもありながら知性派だ。必ず弱点を突いてくるはずだ。
「クロエっち、ど、どうすれば……!」
うろたえたレイが指示を仰ぐが判断できる要素がない。間違えば全滅は必至だ。ハヤトのツメを確認する。血は、ついていない。
「~~~~~」
「シマコ、確認するぞ。俺たちも連戦で体力はギリギリだ。お前の方はダメージも少なくない。ここが正念場だ。このカラスが司令塔だ。メンバーが揃えばまたデザインプレーもありえる。絶対ここで潰す。ツバメが場外のうちに決める」
「わかったわ、気合を入れる!」
ハヤブサのツガイが意を決する。そして同時にクロエへ襲いかかった。
「――レイ! ツバサを追って!」
!?
「く~~~、わかった!」
レイはクロエの秘策を信じで下降する。
「「やっちまえーハヤブサ! よそ者に負けんなー!!」」
「「いけー! 鳥類代表! がんばってー!」」
周囲で観戦するギャラリーの鳥類、猛禽類達の喚声も最高潮になってくる。
「セキレイが下に行った! じき無事を確認して戻ってくる。それまでに!」
ハヤブサコンビの猛攻が始まる。万一のカウンターに備え、体力を残しているハヤトをメインアタッカー、シマコを援護に配置し、怒涛の連続攻撃がクロエを襲う。
▼
「はぁ、はぁ、ツバサっち大丈夫!?」
地上からフラフラ飛翔しようとしていたところへレイが到着する。
「わ、私は、ギリギリ飛べる。クロエちゃんの、援護を……」
「くっ!」
大打撃であったが、出血はないとレイに報告する。となれば今度はクロエの援護だが、レイはすぐに飛翔するも一度下りた手前、上空の戦場は遠い。
▼
「押し切る!」
「ぐあっ!」
やがて、1枚……、2枚……、クロエの漆黒の羽が散り始める。
そして――――
「――――クロエの仲間への思い、よくわかったよ!」
ガブンッ!
「キャアアアアー!」
「シマコ!」
ミルの強烈な嘴が、シマコの脇腹に入る。
!!
膂力を失い、シマコが墜落していく。シマコの戦闘不能で、決着はついた。
▼
戦後、6羽で木に止まっていた。こちらはツバサ、クロエ、相手のハヤブサはシマコが重症、激闘だった。近くにハチクマが佇んでいた。漁夫の利を狙って攻撃を狙って来る相手が現れないように、見張りをしてくれているようだ。
「負けだ。弱肉強食と言ったことに二言はねえ。好きにしてくれ。って、普通ならこんな状況にもなってねえがな。食われて終わってる」
ハヤトは潔く負けを認めた。
「ミルっちの犯人捜し、手伝ってほしいしー。そのくらい、いいっしょ?」
ダメージで目の閉じかけているツバサ、満身創痍のクロエがまともに口を聞けないのでレイが代弁する。
「本当にそんなことするのか……変わった連中だな、あんたら」
「ま、引き受けたよ」
答えを聞いて、帰路につこうとする。
「負け惜しみじゃねえが……あんたら、ほんとに鳥か……?」
未だに敗因が分からないといった様子で、ハヤトが率直な疑問を背中越しに投げかけてきた。4人は声を出さず、軽く笑って、飛び去った。
▼
夕方、こちらに来てからの普段の寝床に、ミルも初めて加わった。ミルは大きさを使って、ツバサとクロエの暖を取ることを優先した。
「レイは食事を探してきて」
「おっけー、まかせたぞー」
ミルもかなり消耗しているはずだが、何よりも2人の保温に専念した。鳥類の回復と言えば、何よりも食事と保温だ。致命傷さえなければ、大抵の場合はそれで復帰できる。外敵を警戒しつつも、おとなしく2日間療養した。
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