第15話 - チームワーク -
「先に、ミルの話を聞いて」
ミルは人間のころの話から、死に至るまでを語り始める。
「ミルは、高校の部活で、競技のチアリーディングをやっててね――」
競技チアリーディング。単に振り付けで応援動作をするだけでなく、空中でいろいろアクロバティックな技を披露する。高いバランス性と力を要し、アスリート並みのトレーニングが必要とされる。
その中で、トップというポジションを任されていたという。
ある練習の日、事前の指示をしっかり聞いておらず、ミルは空中の大技を間違えて展開してしまった。スポットという受けとめてくれるポジションの人達と、全く見当違いの位置へ落下してしまったという。
かなり高い所から、そのまま床に頸椎、頭部から叩きつけられてしまった。完全に事故だったが、指示を聞き逃していた自分が全て悪かったと総括した。
意識不明だったが、そのまま病院に運ばれたころには死亡してしまったようだ。トンビとして転生してから思い返し、ショックだった。それは自分に対してではなく、他のメンバーに対する申し訳なさかただった。
チームメイトは何も悪くないのに、死者を出してしまった。その心中を察するといたたまれなかった。ミル自身のミスなのに、泣いたり悔やんでしまっている人も絶対いる。人間に戻って謝ってやり直したい。そう語った。
――――それであの身体能力……。どうやら人間の時からの本人の基礎能力は鳥になっても引き継ぐようね。ツバサは飛翔精度の割には妙に体力がない。レイはその感性、センスが飛翔にもにじみ出ている。
3人とも聞き入っていたがクロエは早くも考えをめぐらせているようだ。
「そこで!」
バシッとミルはしんみりした話から切り替えてきた。
「チームプレーはチームワーク! これからミルはみんなと鳥の体力アップ、飛翔練習を一緒にやってみて、皆とチームが組めるか判断します!」
ナ、ナンダッテー! と声には出ないが3人とも顔に出ていた。
「チームワークを発揮するのは試合のときだけじゃだめ! 練習や普段の生活から一体感がなきゃだめなのだ! 仲間を信頼して、信頼される。それがチームワーク! まずは一緒に練習して、ミルや皆が一緒に信頼し合える仲間かどうか、判定します!
「どう!?」
「体育会系かよー」
「はぁ……」
「そ、それで一緒に来てくれるならよくない? みんな、ここはミルちゃんが納得できるようにやってみよう」
仕方がない、という流れになったので、練習への参加意思をミルに伝える。さっそく今日から始めるようだ。すでにメニューまで考えてあるという。
▼
各自準備運動するよう言われ、数分後に集まる。
「よーし、はじめるぞー! まずリーダーはだれ!?」
コーチのように振る舞うミル、リーダーを問われたので、レイとクロエがツバサのほうを同時に見た。ツバサは一瞬たじろいだが、すぐに気を持ち直し――、
「私がリーダーをやるよ。私が始めた旅だしね」
うんうん。とミルはうなずいている。
「よし、じゃあランニングから10本やるぞー! みんな笑顔でー、ゴー!」
「おー!」
「は、はい」
「……」
「お、レイ、いいねー!」
比較的芝の多い、広間の上に移動した4種が、一斉に走り出す。奇妙な光景だった。ミルも指導をするだけでなく、自らも参加するようだ。
シュタタタタタタタタタタタタッ
説明不可能のありえない速度でレイが走っていく。
「レイ、早すぎ! あと変なアレンジ入れない! みんなに合わせてー!」
「あ、ごみーん」
「ぜぇっ ぜぇっ」
「……」
「いちっにっ いちっにっ」
最初のランニング10本終わって、ツバサはフラフラになっていた。レイは走りにこそ問題はないが、単調な同じことの繰り返しに飽きてしまってきたようだ。
「今日は時間が途中からだったので、おしまい! また明日は朝から来るように! 解散!」
ミルは言うなり帰っていってしまった。まだ行動自体を共にするわけではないようだ。
▼
夕方はあまり食事をする気にもなれず、皆疲れていて、口数も少なかった。ツバサは体力的に、レイは単調さに、クロエは不毛なものに付き合わされ、疲れているといったイメージだ。
-翌日-
昨日と同じ広間に、4人は集合していた。
「おはようみんな! 準備体操は済ませたかな? まだなら3分待ってあげよう!」
ミルは朝から会心の元気だった。前日、皆と同じメニューをやった上に、個人のトレーニングもさらにこなしたようだ。
「よーし、みんな、今日も元気に笑顔だぞー! ランニング5本から!」
「……! ……! ……!」
「休憩ー! 水飲んできてー! 5分後から始めるぞー!」
ランニングが昨日の半分だと思ったら、だたのアップだった。
「はい! 今日はそこの木と、あの木の、8の字飛翔をしまーす! みんな、間隔を一定にしてー! ゴー! ピィィ!」
ホイッスルのような鳴き声を出す。
ヒュンッ ヒュンッ ヒュンッ ヒュンッ!
………………
…………
……
「はいー! じゃああと5分! 苦しい時こそ笑顔だー!」
「はへへー」
「んほぉ」
「レイ! その顔ダメ!」
「……っ」
▼
「集合! 今度は上昇、下降のインターバル3セットを10回だぞー!」
………………
…………
……
-夕方前-
「ぜぇっ ぜぇっ ぜぇっ」
3人ともぐったりしていた。
「みんなお疲れ! おしまーい!」
10分ほど休んで、呼吸が整うのを待つ。しばらくして、皆聞いてとミルから声がかかる。
「みんなの気持ち、よくわかったぞー! では結果発表します!」
「レイ! 合格!」
「いえーい」
「でももうちょっと周りとペースを合わせて欲しいかな!」
「うほーい」
「ツバサ! ギリギリ合格」
「よ、よかった」
「速度はあるけど体力なさすぎだから、もうちょっと基礎鍛錬しよう」
「普段からやっとけばよかった……」
「クロエ! 失格」
「?」
他の2人は え、なんで? と言った表情だ。ミルを除き、参加した3人の中では内容的にクロエが一番まともだった。
「……。失格? 個人の好き嫌いでジャッジしてるだけなの?」
「そんなことないよ?」
「じゃあ、私以外も、全員が納得できる明確な理由を説明していただけるかしら?」
「笑顔じゃないから」
――――!
「ミルは、何度も言ったよね? 笑顔でって。クロエは一度もしてなかった」
うまくできる、できないに個人差があるのはあたりまえ。でもメンバーの誰でも出来ることをしていないのはダメ。例えば返事をしなきゃ、指示が理解できてるか、いないかも分からない。
「ミルはそれで命を落としたんだよ?」
そうミルは説いた。
「……」
しばしの沈黙が続く。
「……。ミル、あなたの言う通りだわ。反論の余地はない」
クロエはそのままゆっくり浮上すると、ターンして帰路につく。
「ごめんね。でももう、誰かが命を落とす結末とか、見たくない」
ミルも言うと昨日と同じ方向へ帰路につく。残ったツバサとレイの2人は、困った、しかし自分達にはできることがないという感じで、立往生してしまった。
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