第26回 ダンジョンは嫌そうにしている!

そんなこんなでしっかり休みを取って次の日。

ジオはやはり忙殺されているようで着いてきたいようだったがオズさんにしっかり連れ戻されていた、合掌。


「不憫な。」

「なんかジオちゃんホントはバイトシャークの件終わったらすぐ帰ってこなきゃいけなかったみたいだねぇ・・・。」

「ならば仕方ないな、自業自得だ。」

「まあ、ここがかのアトラスの世界樹ですのね・・・わたくし実際に訪れたのは初めてでございます。」


いざダンジョンに挑むとなるとまずその威容に圧倒されるのがこの世界樹である。

中はそこまで入り組んでいる訳では無いが広い上に五階層登るごとに門番となるボス級モンスターのいる専用の階層がある。

そしてボス部屋の出口付近には入口までワープする魔法が封じられた取り外しのできない【魔法盤】と呼ばれる特殊な魔道具が置いてあり、同様に入口に置いてある魔法盤を操作すると次回同じ場所からスタート出来るのだという。ちなみに10階まで到達していれば前の5階にも行くことができる。

便利なものだが全てのダンジョンに置いてあるわけではないらしい。


「じゃあ何階から挑戦する?オレはここの迷宮来たことあるから50階まで指定して飛べるぞ。」

「そうだったのか?!」「聞かれなかったからな。」

「いや、普通にそのままスタートでいいぞ?」

「じゃあ目的は?」

「あー、チャレンジしてみたかっただけだしな。」

「無計画だったのか!多分ハヤトにミサキ、リリィなら30階超えても魔物なんて一発だと思うぞ。」

「確かにそんな弱い魔物を相手にしてもしょうがないな。」


なら変身せずに戦うという手もあるが普段は武器なんて使わないからな、結局剣だけ召喚しても手に余るかもしれん。


「ご主人様の強さに合わせて40階から開始という形でもよろしいのではありませんか?ここはルリコ様のご厚意に甘えさせていただいても良いかもしれません。」

「そうしてみるか、じゃあ頼んだぞルリコ!」

「よし来た、みんなオレの体のどっかに触っててくれ。・・・ハヤト、なんで頭?」

「どこでもいいんだろ?」


全員がルリコに触れると魔法盤が起動し、俺たちは魔法陣から光となって上階へ飛ばされたのだった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



気づいた先は以前訪れたような壁一面に蔦植物が這う大きな部屋だった。

すぐ横にはさらに広大な部屋があり、そこが恐らくボス級モンスターがいるのだろう。


「そっちには行くなよハヤト、せっかくボスをスキップ出来たんだから上の層に行くぞー。」

「なるほどそういうことか。」


ルリコが指さした先にあるのが昇降用魔法陣とのこと、これに乗ることで階段がわりに上階へ進めるようだ。


「よし、行こう。」「お気をつけくださいご主人様。」


そして魔法陣に乗ることで即座に次の階へ移動した、今回は先程とは違い一瞬のようだ。

そして移動した先はまた雰囲気が変わり、石畳の続く道が続いていた。


「へえ、中はこうなってたんだね。」

「普通はこうだぞ。」「わたくしどもは迷宮のビギナーですからね?」

「じゃあ直ぐに魔物が襲ってくるのもか?」


俺は生活魔法の着火魔法ファイア・スターターの火球を複数放つとその先にいた小さな魔物がまとめて炎に包まれ絶叫、炭と化した。

・・・変身前に倒すとこうして爆発しないんだ、不思議である。


「そんな最下級魔法でこの階層の魔物が倒せるのもハヤトくらいだよ・・・。」

「さすがはご主人様でございます。」「さて進むか。」


ズドドドドドドドド・・・!!


「・・・ご主人様、魔力は尽きないのでしょうか?」


襲いかかってくる頻度の増えた小鬼のような魔物を一掃しようと考え、回転連射砲ガトリングガンのように先程より小粒の着火魔法を乱射している。


「全く減っている気はしないな。」

「着火魔法とはいえ何でだ?そんなに魔力量が多いのか・・・。」

「(奴隷呪法を使ったあとも疲弊している様子がありませんでしたね・・・あの魔法ほど魔力を食うものも無いハズですのに)無尽蔵なんて人間はいないはずですのに・・・。」

「わたしもできるよー?」


ミサキも同様に風刃魔法エアスラッシュをどんどん放ち始めたがやはり疲弊の色はないように見える。


「二人ともストップだぞ!無駄撃ちすぎる!」

「了解。」

「さすが稀人という存在は規格外ですわね。」


そのままルリコを先頭に進んでいく。


「そういやなんでルリコが先頭?」

「オレはレンジャーだからな、先を歩いて罠の有無を確認するんだぞ、こんな風に。」


素早く前脚で投げナイフを放ったルリコ、それが分かれ道の先の地面に刺さった瞬間に


バクゥンッ!!


その瞬間地面と天井が上下から凄まじい勢いでナイフを押し潰してしまった・・・こんな即死トラップ俺じゃなきゃ対応できないぞ。


「えええ、こんな初見殺しの罠があるの!?」

「そうだぞ?魔物さえ対処すればいいってわけじゃないからパーティ各々に役目があって対応するジョブが変わってくる、それがダンジョン攻略なんだぞ。」

「ただの床だったよな、なぜわかった?」

「んーと、長年の感?ほら、今オレが投げたナイフから石畳三枚右。ファイアーしてみ?」


かなり先の方だが・・・指定された場所へ火球を撃つと爆発しこちらの足元まで破片が飛んできた。


「よくよく観察するとほかと色が違ったりするんだ!迷宮は生き物だからなー罠が発動したりするとそこを新しく作り直すから古さとかでもわかるんだ、オレ目がいいからな!」


確かにアラクネの彼女は通常の目の他に六つ複眼があるからな・・・気にしなければ目の周りにホクロが多いな程度にしか感じないが。


そうしてルリコの先導の元俺たちは順調に上へ上へと進んで行ったのだ。

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