第8回 冒険者とは何をするものなのだ?

「ではまず冒険者登録からじゃな。このカウンターから頼むぞ。」

「はい、ハヤトさんミサキさんどうぞ〜。」


カウンターにいたのはサラの母親リリムさんだった、そう言えば職員をやっていると言ってたような。


「ではこちらのキューブに触れて下さい。」

「これは?」

「水晶玉のようなものですね、これによってハヤトさんのもつ魔力量を測ることが出来ます、そこから付随してスキルや健康状態を調べたりも出来ますね。」


成程、この世界のスキャニングということだな。

そして水晶玉に触れた瞬間変色していき・・・黒くなったところで水晶玉にヒビが入り始めたので咄嗟に手を離す。


「えっ、なんですこの反応???里長さまー!」

「女王じゃと言うておろうに・・・これはワシと同量の魔力持ちということじゃな。」


よく見れば水晶玉の土台から伸びた線の先にタブレット端末のようなガラス板があり、そこにスキルなどが表示されているようだ。


「まあ砕けんかっただけ良しとしよう。ちゃんと魔力を注いだんじゃろう?」

「あの・・・そもそもそのやり方がわたし達わからないんですが。」

「そんなものこう力を手のひらに集めるイメージでな・・・ん?つまりハヤトはただ触っただけでヒビを入れたのか!?」


その後ミサキも同様に計測して見事キューブを粉々に破壊したのだった。

要は容量が足りなかったのだろうな、その後取り換えられた水晶玉で俺のスキルは見ることが出来たのだが・・・。


「ふむ【生活魔法】に・・・【拘束呪法】との事じゃ。」

「魔法か、興味はあるが普通はどう覚えるんだ?」

「そうじゃのう、基本は魔法を使うところを見るか影響を受けることで素養があれば覚えられるのじゃ。拘束呪法があるのはワシのを見たからじゃな。」


ふむ、覚えるには問題ないようだ。


「あ、ハヤト見てみて!わたしのこれ【攻撃魔法Lv1】と【補助魔法】って書いてあった!」

「・・・生活魔法はなかったかの??」

「無いよ!」

「それこそ魔力を使える人間なら全員が持っている筈なのじゃが・・・。」


そもそもミサキには家事スキルというものが無い。

敵対していたころは幹部ということもあってか部下に全て任せていたらしいからな・・・一緒に住むようになってからもこいつはコレクションをかき集める才能はあっても掃除洗濯といったものは俺がしていたのだ。


「生活魔法とは何ができるんだ?」

「主に水を出す、着火する、風を送るなどじゃな。」


「なるほど・・・『着火』。」


ボウッ


軽い音と共に俺の手のひらから数センチ浮くように人の頭ほどある火球が現れたのだ。


「ハヤト、それファイヤーボールとかってモノじゃないの?」

「やはり何をやらせても規格外のようじゃな・・・まずは制御と抑制からお主らには覚えてもらうぞ。」


とりあえず普通はこうならないことは理解した。



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「待たせたの!これがお主らのギルド証じゃ、これで晴れて冒険者としての身分証明にもなるから無くさぬように!」


受け取ったのは二つ折りのロケットペンダントのようなもの、開いてみると小型のスマホ画面のようなガラス面が展開しそこに俺の名前やスキルなどが映し出された・・・冒険者ランクAと書いてあるな、ミサキはBだ。


「なんでわたし達最初からこんな高いんです?」

「初陣でフレイムベアー、ワシ同伴とはいえ一人であんなに大きいワイバーンを討伐する者がFランクか始める道理はないじゃろうて・・・ミサキも戦いこそ見てはおらんが同等に戦えるなら順当な扱いじゃて。」

「そうですね・・・。」


あとは所持金か、既に12万ゴルドと記載がある。


「この所持金とやらは?」

「それは二匹の魔物を討伐した報酬じゃ!そのギルド証さえあれば重い硬貨を持ち運ばずとも収納しておけるのじゃ。それもまた収納魔法の応用された魔道具であるぞ。」

「便利なものだねぇ・・・(キャッシュレス決済に比べたらワンクッションあるようなもんだけど)」

「では、お主の素材を売っていただこうかの。」

「ああ、そうだったな。」


場所を移動した先は買取カウンターと書かれた板のぶらさがったところで、そこにはサラのオヤジさんがいた。


「どうも、エドワードだ!さ、フレイムベアーとワイバーンの素材はどちらも貴重だ、娘を助けて貰った感謝こそあるが残念ながらギルドは万人に公平というのが里長の理念でな・・・色をつけたりは出来ないのが残念だ!」と豪快に笑っている。


カウンターは冒険者登録やクエストの受注する所とはまた違い、彼のいるカウンターから見て左側に大きなテーブルが横付けしてある。おそらくはここに素材を出し鑑定してもらうのだろう。


「で、どこに魔物の亡骸を置いてあるんだ?」

「死体はないぞ?これが素材だ。」と、次元収納からそれぞれの素材をどんどん出してみせる。


クマの方はそこまででもなかったが飛竜は流石にデカかっただけあってテーブルには収まりきらないな・・・魔石と牙は置けたが肉を半分ほど置いたところで置ききれなくなってしまった。


「ま、待ってくれ!確かに収納魔法の使い手とは聞いていたがそんなに入ってるとは思わんだろ!?ちょっと待っててくれ、解体場に直接置いてもらわんと運ぶのも手間だ!!」


・・・冒険者ギルドとは本当に不便な場所だな。



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先程の個室へ腰を落ち着かせると俺も紅茶をいただくことにする。


あの後テーブルの素材を回収し、解体場に全て放出するとまた大騒ぎとなってしまった。

皮はフレイムベアーとワイバーン丸ごと一匹分で、クマの方は外傷なし、飛竜は俺が斬った以外に外傷がなかったため美品扱いとのこと。解体なぞしていないがとても綺麗に仕分けされて解体班も仕事が無いくらいとの事だった。


「へぇ、全部売って150万ゴルドかぁ・・・お金持ちになったんだかよくわからないね。」


ちなみに貨幣価値としては千ゴルドも出せば上等な昼メシが食べられ、宿の一泊が朝食付きで一万ゴルド。少なくとも衛生的な寝床と風呂に入れると思えば安いものだ。


「やっとお腹も落ち着いてきたし、次はわたしが戦いたいな!流石にハヤトより食べたのは失敗だったー!」

「・・・お前の技はそれこそ魔法みたいに周囲を巻き込むから気をつけて戦えよ?」

「わかってるってば!」


こいつはおそらく何かやらかすだろうなと思いつつ残りの紅茶を胃に流し込んだ。

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