今日は死ぬのに丁度よい日

モリアミ

月ならば、最初で最後

「先輩」


「……」


返事がない、まるで屍の様だ。

「重病で生きる気力がないって人が窓の外を見て、あの葉が全て枯れ落ちたら自分も死ぬって有りますよね?」


「実際に有るかは知らないけど?」


返事はした、以前として動きはない。

「まぁ実際の話は置いといて、私としては何か分かる気がするんですよ、その話。」


「冬が来ても死にそうには見えないけど?」


先輩も気付いてる、私の生命力に葉っぱごときでは力不足だと!

「なんか年末急に死ぬ人とかニュースで見ますよね?だから、葉っぱに無理でも時代の移り変わりレベルなら、結構死ねるんじゃないかと思うんです。」


「因果関係分からないし、一年の終わりと落葉だとスケールは大差無いと思うけど?」


その指摘は、想定問答集に載ってました。

「年末の感じって、もっとこう一時代の終わりを感じませんか?絶対葉っぱが散るのより喪失感強いですよ。」


「他人の感覚は埒外だから否定は出来ないけどね。」


それが先輩の優しさ!……或いは冷淡さ!

「つまりですね、もっと強烈に喪失感を味わえれば、地球上の入院患者は皆殺しに出来ると思うんです。」


「なんで皆殺しにしたいの?」


先輩の真っ直ぐな瞳は、冗談なの?本気なの?

「嫌ですね、そういう意思がある訳じゃなくて、可能性の問題を提示してるというか。」


「そうなんだ。」


そうなんです。私は決して大量虐殺を望んではいないのです。

「それでですね、私は周く全ての人が喪失感を味わって、衰弱死することって何かなぁって考えてたんですよね。」


「対象範囲が広くなったね。」


先輩、冷静ですね!

「万国共通で膨大な喪失、月を落とそうと思うんです。」


「思うだけなら大分楽だね。」


「さすがに月が落ちれば、どんなに健康な病人も、人生に絶望しますよね?」


「月が落ちてくれば心の問題ではないと思うけどね。」

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