Ⅱ:day

 そのdayは、驚く程目覚めが良い朝だった。

 いや、そもそも自分は眠れていたのだろうか?

 若干気だるさののこる身体を起こし、測定器home nurseの前に立つ。

『おはよう』

 と文字が表示され、画面を操作tapして返事を返す。健康確認のため音声認識を推奨されるが、気がすすまないので無効にしている。その後、検温、血圧、脈拍、血中酸素濃度が計られた。

 寝不足が指摘され、本日の推奨睡眠時間と推奨摂取食物recommendationが表示された。返信okを押すと、今度は推奨朝食と推奨登校時間recommendationが表示された。いつもと変わらずの時間帯なので、早々に切り上げるskipする。リビングに行くと、母さんが推奨通りの朝食recommendを準備していた。父親は今日も既に出ているらしい。近頃は朝に挨拶を交わせた記憶がない。

 母親とは二三、会話をしながら手早く食事を済ませ、登校の準備をする。測定器home nurseからは、最寄り駅の混雑状況cautionが伝えられ、感染症予防のためマスクrecommendationを推奨された。僕は、部屋にあったものを適当に制服にネジ込み家を出た。


 ∧


 初夏ということもあり、朝から程よい暑さと日射しを感じる。もっとも、疑似ドームに包まれたここsafeland暑すぎる夏猛暑寒すぎる冬極寒も存在したことはないけれど。

 推奨通りの時間で4区第四駅最寄り駅へと到着する。

 指摘通りの混雑状況cautionで、改札エリアでは簡易マスクの支給recommendationが行われていた。

 推奨案内recommendationに従い、余裕のあるホームにて電車を待つ。今朝の診断もあり、携帯portable nurseからは座席車両seat onlyを推奨されたが、大丈夫thankと返し、立位車両stand onlyに並ぶ。

 程なくして、電車がホームに入ってきた。消毒膜fogを浴びながら車内に入り、立位席distance areaに入る。

 車両ごとの乗車制限limitationは徹底されている。前時代に、他人同士が密着しながら車両に押し込まれていた時代があったと聞くが、とても信じられないことだ。

 制限数到達full間隔遵守fitが確認され、電車は出発した。いつもは支え柱supporterに片手でつかまっているが、今朝のこともあり両手で今日は身体を支えた。


 ∧


 第四学校前に到着し、他のホームからも同じ制服の学生が出てきていた。はいなかった。

 第四学校schoolに着くと、正門前にいくつもの列ができている。少し待つと自分の番が訪れ、学生証idをかざし、顔認証match再度のバイタルチェックschool nurse所持品確認possessが行われた。

 無事クリアWelcomeすると、測定器school nerseから『今日も頑張ってください』と校長の声が流れ、それを聞き流しながら校内へと入った。

「おはよう」

 教室に、がいた。


 ∧


「…おはよう」

 自然に返すことを努めるも、やはりぎこちないのが自分でも分かった。先に来ていた友人が、その様子を見て冷やかし半分な絡みをしてくる。なるべく平静を装ったが、顔が赤くなってないか心配だった。

 始業時間となった。

 欠席者は無し。

 授業は全て支給ディスプレイstudyingを用いて行われ、生徒の体調の急変なども備付カメラdeputyによってチェックされるが、大抵は居眠りサボりをばらされる事に繋がる。

 幸い、睡魔に襲われずに午前の授業は乗り切る。


 ∧


 昼休みは、やはりというかについての話が蒸し返された。

 肝心のはやはりこの時間は姿が見えない。

 それをいい事に友人たちに遠慮なく詰め寄られるも、話せるのはただ挨拶するようになったから気になりだしただけと言い切る他無い。そのきっかけとなる出来事episodeは、そのまま問う者ask秘密正体に繋がってしまうからだ。しばらくして彼らは引き下がるも、このはしばらく続きそうだ。まさか、問う者ask問われるものAskedになるとは。彼らに明かしたことを少し後悔してもいた。


 ∧


 午後の授業は、決まって運動の時間だ。

 これはclassごとでなく、生徒ごとの身体能力reflexes本人の希望zealを踏まえたグループ分けsortingがなされ、最適な鍛練Optimal優劣付けの防止no casteに繋がっている。僕は、平均値normalさしたる希望なしno objection。運動に興味のない僕でも程よい疲労と達成感を味わい、午後の授業も終了した。

 終業後は、部活動の時間activityであるが、参加の義務はないfreeので、帰宅部not performの僕はそのまま帰るか、問いかけgraffitiかのどちらかを行う。

 それが、僕の1日dayだった。

 と知り合う前は、そこからに関する事柄を抜いただけの1日day

 しかし、今日はそれまでとは違う1日dayになるかもしれない。

 帰路には立たず、正門の影に留まる僕。

 少ししてー

「お待たせ」

「別に待ってはないよ」

 が-

 野ノ波芭乃ののははのが来た。

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