20210422-1

俺は授業中にぼんやりと外を眺めるような生徒になりたかった。窓際の席になったことが少なかったということもあるけれども。平日の昼というのをもっとおおらかに捉えてみたかったのだ。不定休か平日休みの仕事に転職すればよいではないか、という話でもない。


猫が昼寝していそうな昼の陽の中に

車は走り

鳥は鳴く

よく見たら木々は小さく揺れている

向こうの天窓は反射で忙しいようで……


「おい、お前、あたっているぞ」などと指名に気づかないことを注意されたあと、さらっと答えてまた外を眺めるような生徒になりたかった。机の木目も見飽きた上で、外を眺めていたかった。靴を脱ぎたかった。青空とその手前にある松の木を見たかった。薄青い空を見てから目を閉じたかった。昼寝ではなくて。その色を思い出せるようにするために。


犬が飼い主の帰宅を待つのに飽きた頃に

車は走り

鳥は鳴く

よく見たら一枚だけ葉が落ちた

ガラスってどうやって作るんだっけ……


チャイムが鳴る。起立する。礼をする。ありがとうございましたと言う。いやー眠かったよなぁなどという声が聞こえる。ロッカーがバタバタなる音も。次は数学かぁという嘆息も。(俺は好きだけれどな、数学。)


「かなしみ」が常に横たわっている

「かなしみ」は走り

「かなしみ」は鳴く

よく見たら「かなしみ」が増えていた

誰もこの「かなしみ」が見えずに幸福に暮らしている……


何もかも用意されている世界だから楽だったのだよな、やっぱり。俺はもっと楽な世界をもっと楽に生きて、ずっと外を眺めていたかった。別に今の境遇が嫌だというわけでもないけれども。退屈が俺を呼んでいる。いや、俺が退屈を呼んでいる。疲れているのだろうな、きっと。でも、まあ、俺は窓の外に出たい、せめて窓の外を眺め続けたいと思うのであった。


おも

ので

った








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