第29話雪の日に・・・

29,雪の日に・・・


一月二十六日のことだった。


夜になって雪が降り始めた。


私が仕事から戻るころには一面の雪景色になっていた。


家に着くと例の黒っぽい猫が縁の下から出てきた。


私の帰りを待っていたのであろう。


寒さで震えているように見えた。


可愛そうに単に庭へ来た順番が逆だというだけで片方は家の中で寝ていられ


片方は縁の下で震えている。


雪の中、モモ子の散歩を終えて家の中に入ると縁側でニャオニャオと鳴いている。


去年のニャンコちゃんの時と同じであった。


寒いから家の中へ入れてよと訴えている。


風呂から上がってもニャオニャオ鳴いているのが聞こえる。


母性本能がうずく。


耳についてしまった猫の声を消すことが出来なくて


私は自分の心に負けてしまった。


助けてあげよう。


せめて今夜だけでもと決心してしまった。


ニャンコちゃんに去年してあげたようにダンボールに


いらなくなったセーターを入れ、外の犬小屋の中にいれた。


そこへ黒っぽい猫をいれた。


おとなしく入っている。


余程寒かったのだろう。


これで温かくして寝られるだろうと私は自己満足して家の中へ入った。


ところが翌朝見てみるともぬけの殻だった。


後ろからニャオーと猫の声がする。


犬小屋の桟の隙間から脱け出たのか猫は外にいた。


猫を犬小屋へ入れてみるとあっという間にすり抜けてくる。


見る限りでは家の中にいるニャンコちゃんよりも大きなおなかをしていて


身体も大きいのにいとも簡単にすり抜けて外へ出てきたのである。


猫は顔が入ると出られるというが本当にそうであった。


その点から考えるとニャンコちゃんはやはりお嬢様であったのだろう。


出られるのに出なかったのだから・・・


それはともあれ黒っぽい猫をここへ閉じ込められないとしたら


早急に考えなければならないことがあった。


第一は妊娠しているかどうかを調べる事、


していなかったなら避妊手術をすること。


第二にニャンコちゃんの方も避妊手術をすることである。


ニャンコちゃんは特別に外へ出たいと思わないらしいが


いつまでも閉じ込めておくのも可哀想である。


猫は自由に出入りすることが好きな動物である。


保護することと閉じ込める事は別である。


だが、この出費は痛い。二匹で数万円。


考えるだけで頭が痛くなる。


この時たまたま近所の猫を飼っている奥さんとおしゃべりをしていて


費用が安い病院を聞くことができた。



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