第3話 赤い髪の美少年
ガツガツ、次々に男共は四つ五つとハンバーガーを胃に収めてゆく。
凄い食欲、まるでカバみたい。
アイが深い溜息をついてストローをくわえた。
チューチュー、これだけは安心して飲める。
ただただ苦いだけのウーロン茶。
「ウーちゃん、あたしの友達はお前だけよ。」
「あれ?やっぱそれも飲み過ぎれば太るンと違う?きっとブクブク浮腫むんだぜ。
ぶよぶよーってさ!」
「ホーッホッホ!これは中国四千年がちゃんと痩せるって保証してんのよ。いいの!」
吉井はまことに一言多い。
などと、四人が和気あいあい?と盛り上がっている頃、その姿を見つけて優しく微笑み、やや足早に近づいてくる姿があった。
河原が、ン?と気が付いて、思わずじっと観察。
何だ、ありゃあ・・
周りの男女、老いも若きも思わず目を取られている。
みんなあんぐりと口を開け、ただただ見とれて時間を忘れてしまっていた。
何故かというとその人物は、映画から抜け出てきたような美少年だったのだ。
年はアイ達と同じ頃?
中学にしては小柄だが、大人びた雰囲気は小学生ではおかしい。
白い肌は彫りが深く、まるで芸術のように端正な顔だ。
ウエーブのかかった燃えるような赤い髪を肩まで伸ばし、それが金ボタンが並ぶ純白のロングコートに血のように映える。
コートは前のボタンをウエストまで留めて、その合わせがヒラリと別れ、中には白い短パンからすらりと伸びた白い足がちらちらと見えて、やけに色っぽい。
「見ろよ、あれってビジュアル系パンクのボーカルあたり?」
「え?なに?なに?きゃあーっ!美少年じゃん!スマホ出しなさいよ!スマホ!」
「ねえよ、学校禁止じゃん、誰も持ってねえよ。」
「きゃーん!ステキじゃん!
あれって王子様系?あんな人が彼氏だったら、あたしもう好きなだけ貢いじゃう!」
「何貢ぐ?親に食わせて貰ってるクセによ。」
「どうせ貢ぐなら俺に貢いでよ。」
何だか男二人は面白くない。
「あれこそほんとの美少年って奴?
こっち来るよアイ、ねえ声かけてみようか?」
「ね、見て!目が赤とグレー!色違いだよ!コンタクトかな?カッコイイーッ!
もしかして外人じゃん!
河原!あんた英語の点数いいでしょ!
こっち来ませんかってなんて言うの?!」
「えっ!俺わかんねえよ!
げ、マジこっち来るぞ!誰か知り合い?」
「知らないわよっ!でもお知り合いになりたーいっ!」
「ほんと!あんないい男とお近づきになりたーい!って、ねえ!マジこっち来る!あ、あ、」
ニヤニヤでもなく、にこにこでもない、上品な微笑みを浮かべて、その少年が優雅な足取りで四人の前に来ると立ち止まった。
あれ程おしゃべりの四人も、いざ面と向かうと口をあんぐり言葉を忘れてしまう。
え、英語だっ!英語!
何か英語の挨拶くらい・・何だったっけ?!
頭が真っ白、何も思い浮かばずアイ達はその場に凍り付いてしまった。
「失礼いたします、お嬢様方。」
一礼をして、美少年がアイに話しかけてくる。
「ハ、ハロー!グッモーニン!あははは!」
「バカ!アイってば日本語だよ!
こんにちは、アイの知り合いですか?」
ヨーコは少し冷静。
「知り合い・・かな?
実はお願いがございまして・・・あ!」
びくんと美少年が振り返る。
「申し訳ございません!こちらへ!」
「ええ?!」
ガッとアイの手を握るや、グイグイ引いて出口へとかけ出した。
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