水遊び

 私の友人3人が体験した話。この3人は大学時代から付き合いがあり、社会人になってからもしばしば飲み会をしている。


 友人をそれぞれA、B、Cとして話を進めたい。


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 社会人になって2年目。

 金曜日の夜に、私たち4人は集まった。いつも通り、安い居酒屋で酒を飲む。そしていつも通り、終電を逃した。


 タクシーに乗り、私の家に行くことになったのが、A、B、Cの3人が銭湯に行きたいと駄々をこね始めた。私は真っ直ぐ帰りたかったのだが、3人は言うことを聞かない。


 そこで私だけがタクシーで先に帰り、A、B、Cは道中の繁華街で降りて、銭湯に入ってから私の家に向かうことになった。全員そこそこ酔っ払っていたこともあり、とても非合理的な選択肢に落ち着いた。


 ここから先は、私の家に全員がそろった後、Aから聞いた話である。


 深夜の銭湯には、ほとんど客がいなかった。貸切に近い浴室に入り、AとBはシャワーで体を洗っていた。しばらくして、Cがどこにもいないことに気づいた。


 Cは一番酔っていたので、事故に遭うリスクが高い。もしかしたら湯船で沈んでいるかもしれない。そう思い、Cを探すAとB。しかし一向に見つからない。


 そんな折、背後から


「やめてよ!やめてよー!」


 という男性の声が聞こえてきた。


 AとBが振り返ると、Cが見ず知らずの人に水風呂の水をかけて遊んでいたのだ。Cは酔っていた上に、普段かけているメガネを外していたため、水をかけている相手をAかBと勘違いしていたようだ。


 これだけでも充分問題なのだが、さらに厄介なことがあった。


 Cに水をかけられている人の背中全面に龍の和彫りが入っていた。ほぼ確実に裏社会の人だ。Cは全く気づいていない。


 相手も酔っていたのか、妙にノリが良く、「やめてよー!やめてよー!」と言いながら一方的に水をかけられているだけ。


 今のうちに逃げないとマズイことになると感じたAとBは、Cを連れて大急ぎで銭湯を後にした。


 追いかけられたり、仲間がやって来たりということはなかったそうだが、銭湯に入ったはずなのに背筋が凍った、とAは語った。


※本人や関係者に配慮し、一部内容を変更しています。

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