家系に伝わる呪い
西島 隼人(にしじま はやと:仮名)さんという男性から聞いた話。
西島さんの家系には、とある言い伝えがあるそうだ。
ーーーーーーーーーー
『33歳までに3人兄妹(姉弟、姉妹)の恋人と結婚しないと不幸になる』
これが西島さんの母方の家系にある言い伝えだ。
男子にのみこの言い伝えが適用されるそうで、不思議なことに、西島さんの祖父、伯父、同世代の従兄弟(この従兄弟も3人兄弟なのだが)の長男、次男は結婚相手が全員3人兄妹、姉妹なのである。
皆、20代〜32歳までに結婚しており、どの家庭も夫婦生活が長続きしている。一般的に見れば幸せな生活を送っているというわけだ。
その一方、結婚相手が3人兄妹ではなかったり、33歳まで独身だったりした身内ももちろんいる。その全員が、33歳以降に不幸な目に遭っているのだ。
例えば、西島さんの祖父の兄(大叔父)は、結婚相手が2人姉妹の妹だった。大叔父は34歳の時に交通事故に遭い、数日間、意識が戻らなかったことがあるという。
また、祖父の弟は36歳まで独身だったが、33歳になった年に内臓系の疾患にかかり、命の危機に陥ったことがある。1ヶ月の入院の後、無事復帰したが体重が10キロ近く落ちて別人のようになっていたそうだ。原因は過度な飲酒とのこと。
さらに、祖母の弟は35歳の時に風呂場で転倒し、頭を打って亡くなっている。当時、結婚はしていなかった。
幸福になるか不幸になるかの境界線は「33歳」。そんな「呪い」のような状況が実際に起きているという。
「呪い」を信じない身内は多い。西島さん自身もその一人だった。同世代の従兄弟たちも全く信じていないそうだが、偶然にも長男、次男の結婚相手は3人兄妹、姉妹。
意識したわけでも、口裏を合わせたわけでもないという。
一方で、「呪い」を心の底から信じている身内もいる。その一人が西島さんの母だ。『自分の息子が33歳になる前に3人兄妹の婚約者を見つけなければ』といつも考えている。
たまに実家に帰ると、『いい人は見つかったの?いつ結婚するの?たまには昔の同級生と連絡でも取ったら?』と病的なまでにしつこく聞いてくるそうだ。
ーーーーーーーーーー
そんな西島さんは現在31歳。未婚であり、タイムリミットまであと2年となったが、最近彼女ができた。マッチングアプリで知り合い、交際に発展した。
しかも意図したわけではないが、相手は3人兄妹の末っ子。もしこのまま結婚まで行きつけば「呪い」を受けずに済む。
しかし問題があった。西島さんはこれまで女性との交際経験がほとんどなく、どうすれば長く付き合えるのかわからなかったのだ。
相談できる友人もおらず、「呪い」云々の前に単純にフラれないか心配していた。
母に相談したところ、母は目を輝かせ、西島さんにアドバイスをし始めた。最初は、
『女の子はこういうことをすると相手に好意を抱く』
『服装や髪型はこんな感じにすると女子ウケがいい』
といった程度のものだったが、次第にエスカレートしていった。
『デートコースはこうしろ』
『ディナーはこの店を予約しておいた』
『プレゼントはこれを渡せ』
今では彼女への振る舞い全てを母から指示してもらっている西島さん。西島さんと彼女ではなく、西島さんのお母さんと彼女が付き合っているような状態だ。
このことは彼女には伝えていない。もしバレたらそれこそ幻滅され、別れるきっかけになりかねない。
母以外にも「呪い」を信じる親戚はおり、一度彼女を親戚の集まりに連れて行った時、まるでこの世を破滅から救った救世主かのように丁重に接していた。別れさせないように、というより、西島さんに不幸が訪れないようにと必死なのだろう。
親戚たちの態度を見ると、西島さんは「呪いは本当にあるのかもしれない…」と不安になるという。
もし33歳までに今の彼女と結婚できなかったら、自分がどうなるかはわからない。半信半疑ではあるが、万が一に備え、今は母の指示に従って彼女と付き合っていくつもりだ、と語ってくれた。
※ご本人や関係者に配慮し、一部内容を変更しています。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます