プロローグ
どうにも、納得がいかなかった。
筋肉の強靭さが違う。
頭脳の処理能力が違う。
体の大きさが違う。
数の多さが違う。
生命力が違う。
寿命が違う。
まあ、それは仕方ない。納得はいかないが理解はできる。
生命というものは多様であるが故に価値があるとも言える。それぞれ別々の進化をした種族が数多いるおかげで、環境が大きく変化しても生命が滅びるリスクは大きく軽減させる。
その理論で言えば、今生きているだけでも自分を卑下する必要は無いだろう。
だが。そうだとしても。
やはりどうにも、納得がいかない。
魔力だとか呪力だとか霊力だとか異能だとか法力だとか権能だとか。
どうしてそんなわけのわからないものが跋扈しているのか理解に苦しむ。
そんなものが無くたって理不尽、不条理だらけの世界でわざわざ更によく分からない要素を足す必要は無いだろう。
神様とやらは、いくらなんでも欲張りすぎだ。
純粋な肉体強度だけでも勝てないのに、魔力のおかげで特殊能力を持っているとか
頭脳で既に劣っているのに、呪力で思考力を奪うとか
簡単にこちらを潰せそうなほど体が大きいのに、霊力で体を強化できるとか
何も考え無くてもこちらを圧殺できそうなほど数が多いのに、一人一人がそれぞれ異能を持ってるとか
こちらにとっては致命傷になるような傷でも平気で動き回れるのに、法力で傷を癒せるとか
こちらが何世代もかけて紡いだ歴史を1人で過ごせるくらいに長生きなのに、ありとあらゆる事象を知ることができる権能を持ってるとか
いくらなんでもふざけてるだろう。
子供の考えた生き物か?
いや、むしろ逆なのかもしれない。
あんなわけのわからない存在がひしめいているということは、この世界の基準ではあの強さが基準なのかもしれない。彼らが強すぎるのではなく、こちらが弱すぎるだけなのかもしれない。
異質なのは、自分の方なのか?
気に食わない。
ああ、気に食わないのだ。納得がどうとか、理解がどうとかそういうの全部ひっくるめて簡単に言うと気に食わないとしか言えないのだ。
筋肉ならある。考える頭脳もある。
道具をふるえるだけの手足もある。
言葉が通じる同族も多少なりいる。
少しは自己治癒する回復力もある。
意志を紡げるだけの、寿命もある。
そう、それだけで十分だ。強者に抗い、自らの尊厳を守るために必要な力は既にあるのだ。
あとはそれを最大限に…
否、限界以上に活かすだけだ。
柱はできた。道は見えた。
誰かが築いた常識も、凝り固まった定石も、歩みを止める理由にはならない。
自らを最弱などと嘯く気は無い。
この胸にあるのは、ただ己を証明せんとする渇望だけなのだ。
故に力を示そう。他の誰かにではなく、己自身に。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます