第122話

 縦横無尽に駆け回り


「はあぁっ!」

「ぐおっ」


 一瞬の隙を突いて切り裂く。


「(燕翔寺家……あそこも中々の食わせ者達みたいね)」


 メディアで知られてるように自分の娘を大事大事と甘やかして来たと思いきや、こんな戦闘マシーンに仕立て上げてるなんて。


「(私の時もそう。確実に相手を仕留めるべく全て急所を狙っている)」


 そこが素直過ぎて避け易くもあるけれど。


「っ……」


 いくら緑鬼でも勘づいたらしく、防御の姿勢に切り替え、ついに燕翔寺の猛攻が途切れる。


「まあ、させないけれど」


 タァンッ


 無防備に晒された脳天を撃ち抜く。高速で放たれたエレミュートのビームに緑鬼の頭が後ろに仰反る。


 頭部を破損してもフォリンクリにはあまりダメージは見込めないが、十分気は逸れる。すかさず燕翔寺は独楽のように緑鬼の懐に潜り込むと両足の筋を切り裂く。


「ぐおおおっ!」


 両足をやられ、体勢を崩し、倒れかかる。それすら燕翔寺は見逃さず倒れ込む前に地面につこうとした右腕を斬り落とす。


「(そろそろかしら)」


 脚部と右腕部、そして私の狙撃で目。機動力、破壊力、視力を奪った今なら。


「そろそろフィニッシュよ、燕翔寺。今こそアレを試してみなさい」

「……っ!はいっ!」


 私が急遽考案した作戦。それは


『当たらない?』

『はい……その、一体どうすれば……』

『良い考えがあるわ』

『考え、で、ございますか?』

『そ』


『当たらないなら』



『「絶対に当たる、必中ゼロ距離で放てば良い」』


「はぁぁぁっ!」


 急いで残った左腕を振り上げる緑鬼。しかし


「(この燕の羽ばたきはそんなにトロくないわ)」


 レッセンに纏わされた蒼炎が弧を描く様に放たれ、緑鬼の全身を飲み込む。


「グオッ………」


 何もかもを燃やし尽くす蒼き獄炎。その威力は絶大。


 断末魔を上げることすら許さず一瞬で消滅させ、余波だけで周りの草木をも燃やし尽くす。


「はぁっ、はぁっ……」

「良くやったわ、燕翔寺」

「はぁっ………はいっ……!」


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