第87話


 放課後。実技の授業が終わった途端、僕はそそくさと帰宅の準備を始める。


「桐堂、一緒帰ろうぜ」

「すまん、今日は用事があってな」


 安良川からの誘いを断り、荷物をまとめ終える。心苦しいが、もう少し区切りがつくまでこっちを優先したい。


「ちぇー、まぁ良いか。じゃまた今度な!」

「ああ」


 安良川と分かれ、足早に学園を跡にする。


 向かった先は勿論、あの場所だ。


「待たせたな」

「いいえ、私も今来たところよ」


 案の定、烏川は先に来ていた。


「早速始めましょうか」

「ああ」


 まずは準備運動。しっかりと体の関節や筋肉を解す。


「よし、終わったぞ」

「じゃあ、これ持って」


 投げ渡されたのは今朝使ったものと同じダミーソード。


「素振りか?」

「ノン。朝に基礎練習、夕方は実践形式でやりましょ」


 そう言って烏川はもう一本のダミーソードを軽く振って見せる。


「大丈夫なのか?その怪我で」

「問題ないわよ。まだ貴方よりは強いから」

「それはそうだ」


 お互い少し笑う。


「本来ならまずは対人戦で鍛えるんでしょう?ならこの自主練習で補おうと思ってね」

「助かる」


 おそらく僕は戦闘経験でも大江山より劣っている。スタートが遅れているのなら烏川のような格上に鍛えてもらうしかない。


「準備は良い?」

「ああ。いつでも」


 ダミーソードを構え、しっかりと目の前の少女を見据える。


 勝つ負けるは今は考えない。


 握り方や振り方を教えてもらっただけで、以前烏川と鍛錬していた時とあまり変わっていないだろう。



 ただし



 変わっていくのはこれからだ。


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