Victoire de Samothrace
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本当に焦がれてしまったら、
手を伸ばしたいとは思えないし、
触れたいという概念を持たなくなる。
愛しいモノはルーヴル美術館に保管したいし、
スマホのガラス画面の中に閉じ込めたいし、
慈愛を込めて置いておきたい。
欲しがれば欲しがるほど、
欲しいのか分からなくなる。
閾値を超えるほどに焦がれると、
欲しくなくなる。
手が届かないものが愛しいと思う。
掴めない星が流れるのが嫌になる。
温度、湿度、感触、そういった感覚論が通ずるのは、それが幻だからである。幻であるから、刹那的現象をエイエンという概念に結びつけ、錯覚を試みるのである。
例えば切れない水を眺めて唖然とすること。溶けゆく氷を見つめるしかないやるせなさ。そういったものが恋である。
止まることを知っている涙や、止むことを知っている雨は、それに当たらぬことに気づく時がくる。
幻だと気付かぬうちに、手に入れようとする。
だから、人は本当に焦がるる恋を知らない。
恋は不確実で、象れない不良品。
私も、アナタも、初期不良。
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